17:15 〜 18:45
[MGI28-P04] 3Dスキャナーを用いた岩石形状解析手法の確立
~北海道駒ヶ岳1929年噴火火砕流堆積物解析への応用~
キーワード:3Dスキャナー、体積、密度、主成分分析、火砕流
火砕流を構成する個々の粒子の密度はその流動堆積メカニズムの支配要因となるため,その測定は重要である.また,粒子の形状は流動メカニズムを反映すると考えられ(Taddeucci & Palladin, 2002),同様に重要である.このようなことから我々は軽石をはじめとする岩石の密度測定や形状解析を簡便に行う手法を開発している.
一般に,多孔質な岩石の密度を求めるに当たり,質量測定と比較して体積の測定手法は複雑であり,これまで様々な手法が提案されている(例えばGardner et al., 1996; Houghton & Wilson, 1989; 佐々木・勝井, 1981; Suzuki & Fujii, 2010).近年,レーザー技術を利用して立体物をスキャニングし,3D情報化する3Dスキャナーが普及しており,リバースエンジニアリング分野で広く活用されている.中でも非接触型のタイプは,測定対象物を非破壊かつ非接触で測定可能であり,さらに得られたモデルを解析することで体積や形状特徴を高精度かつ簡便に求めることができる.しかし機材が高価な為,自然科学分野での普及は進んでいなかったが,最近では数万円台の低価格な3Dスキャナーが市場に登場しており,導入の障壁が以前よりも低くなっている.
本研究では比較的安価な3Dスキャナーを用いた天然岩石の3D解析手順を構築し,その測定精度を検証した.
本研究で用いた3Dスキャナーは10万円以下で購入可能なREVOPOINT社のモデルPOP2である.岩石の解析手順は以下の通りである.まず試料を回転台に置き,3Dスキャナーを用いて点群データを取得する.得られた点群データからメッシュデータを生成し,3Dモデル表示ソフトを用いてモデルの異常(欠損,重なり等)の有無を確認する.その後,筆者らが開発した形状解析プログラムを用いてかさ体積や表面積,長軸や短軸を求める.ここで形状解析において重要となる長軸の算出において,境界ボックスの最小化を探索する手法(OBB)と教師なし機械学習アルゴリズムである主成分分析(PCA : Cruz-Matías et al., 2019)を試行した.また,これらのプログラムに対しCPUの並列処理による計算時間の短縮を図った.
測定精度は,北海道駒ヶ岳1929年噴火火砕流の軽石(-3Φから-8Φ)14個を用いて10回繰返し誤差を検証した.また,同サンプルのかさ体積を水置換法(竹内他, 2023,2024)で求め比較検証した.
かさ体積の繰り返し誤差は0.16%未満であった.小さな軽石では精度が低下したが,それでも0.55%未満であった.また,3Dスキャナーの仕様を下回る長径1㎝未満の岩石の測定は困難であった.水置換法との回帰式における決定係数は0.999であった.長軸探索において,OBBでは長軸の方向にバラつきがあり,長軸長の標準誤差率が~1.9%であったが,PCAを用いた場合は方向がほぼ一致し,標準誤差率の多くが0.1%前後,最大でも0.6%となった.
このように,3Dスキャナーによる計測は本研究で確立した手順で実施することにより,簡便で信頼性が高く,加えて現地での測定も可能である為,自然科学における様々なアプリケーションに対して多くの議論に耐えうる精度のデータを取得できると考えられる.今後は,北海道駒ヶ岳1929年火砕流堆積物の全粒度組成分析の試み(上澤他, 2024)で得られた軽石に対して本手法による解析を行い,火砕流内部のダイナミクスを検討する.
一般に,多孔質な岩石の密度を求めるに当たり,質量測定と比較して体積の測定手法は複雑であり,これまで様々な手法が提案されている(例えばGardner et al., 1996; Houghton & Wilson, 1989; 佐々木・勝井, 1981; Suzuki & Fujii, 2010).近年,レーザー技術を利用して立体物をスキャニングし,3D情報化する3Dスキャナーが普及しており,リバースエンジニアリング分野で広く活用されている.中でも非接触型のタイプは,測定対象物を非破壊かつ非接触で測定可能であり,さらに得られたモデルを解析することで体積や形状特徴を高精度かつ簡便に求めることができる.しかし機材が高価な為,自然科学分野での普及は進んでいなかったが,最近では数万円台の低価格な3Dスキャナーが市場に登場しており,導入の障壁が以前よりも低くなっている.
本研究では比較的安価な3Dスキャナーを用いた天然岩石の3D解析手順を構築し,その測定精度を検証した.
本研究で用いた3Dスキャナーは10万円以下で購入可能なREVOPOINT社のモデルPOP2である.岩石の解析手順は以下の通りである.まず試料を回転台に置き,3Dスキャナーを用いて点群データを取得する.得られた点群データからメッシュデータを生成し,3Dモデル表示ソフトを用いてモデルの異常(欠損,重なり等)の有無を確認する.その後,筆者らが開発した形状解析プログラムを用いてかさ体積や表面積,長軸や短軸を求める.ここで形状解析において重要となる長軸の算出において,境界ボックスの最小化を探索する手法(OBB)と教師なし機械学習アルゴリズムである主成分分析(PCA : Cruz-Matías et al., 2019)を試行した.また,これらのプログラムに対しCPUの並列処理による計算時間の短縮を図った.
測定精度は,北海道駒ヶ岳1929年噴火火砕流の軽石(-3Φから-8Φ)14個を用いて10回繰返し誤差を検証した.また,同サンプルのかさ体積を水置換法(竹内他, 2023,2024)で求め比較検証した.
かさ体積の繰り返し誤差は0.16%未満であった.小さな軽石では精度が低下したが,それでも0.55%未満であった.また,3Dスキャナーの仕様を下回る長径1㎝未満の岩石の測定は困難であった.水置換法との回帰式における決定係数は0.999であった.長軸探索において,OBBでは長軸の方向にバラつきがあり,長軸長の標準誤差率が~1.9%であったが,PCAを用いた場合は方向がほぼ一致し,標準誤差率の多くが0.1%前後,最大でも0.6%となった.
このように,3Dスキャナーによる計測は本研究で確立した手順で実施することにより,簡便で信頼性が高く,加えて現地での測定も可能である為,自然科学における様々なアプリケーションに対して多くの議論に耐えうる精度のデータを取得できると考えられる.今後は,北海道駒ヶ岳1929年火砕流堆積物の全粒度組成分析の試み(上澤他, 2024)で得られた軽石に対して本手法による解析を行い,火砕流内部のダイナミクスを検討する.