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[MGI31-P03] 根尾谷断層掘削コアの物性値が示す最新すべり面の特徴
キーワード:最新すべり面、コアロギング、根尾谷断層
根尾谷断層は1891年にM8.0の濃尾地震を引き起こしたことがよく知られるものの,断層岩としての特徴はこれまでにあまり調べられていない.近年,原子力規制庁が岐阜県本巣市根尾長嶺と根尾水鳥において断層ガウジ帯を貫くボーリング掘削を行った.その際,検層は十分には行われなかった.そこで,最新すべり面の特徴を物性値の点から明らかにするために,コア試料を用いて帯磁率測定,蛍光X線分析等のコアロギングを行った.
断層掘削を行った2地点のうち,根尾長嶺では濃尾地震の際に6.2 m の左横ずれ変位を生じている(粟田ほか, 1999).ここでは,R3NDFP-1とR3NDFD-1,そのサイドトラック孔であるR3NDFD-1-S1の3本のボーリング孔が掘削されており,R3NDFP-1は傾斜60°,長さ30 m, R3NDFD-1, R3NDFD-1-S1は傾斜82 °,長さ80 mである.根尾水鳥では濃尾地震の際に6 mの縦ずれ変位を生じている(Koto, 1893).ここでは,NDFP-1とNDFD-1-S1の2本のボーリング孔が掘削されており,NDFP-1は傾斜50°,長さ140 m,NDFD-1-S1は傾斜78 °,長さ525 mである.明瞭な断層ガウジ帯はいずれのボーリングコアでも1ヶ所のみである.最新すべり面は断層ガウジ帯における連続性,直線性のよい面として認められ,R3NDFP-1, R3NDFD-1-S1では深度15.93-16.07 m, 64.73-65.96 m, 64.95-66.07 m, NDFP-1, NDFD-1-S1では深度110.62-110.69 m,387.52-387.67 mに位置している.原岩は美濃帯の泥岩基質メランジュであり,最新すべり面を含む断層ガウジの原岩はR3-NDFP-1とR3-NDFD-1-S1では泥岩であり,NDFP-1とNDFD-1-S1では玄武岩である.
ポータブル帯磁率計を用いて帯磁率を1 cm 間隔で測定した結果,R3NDFD-1-S1では最新すべり面で不連続な高帯磁率異常が認められる.R3NDFD-1におけるXRD分析の結果,最新すべり面に沿って磁鉄鉱が,また断層ガウジの一部にはスメクタイトが認められる.蛍光X線分析を1 cm間隔で行った結果,最新すべり面とその近傍のみFe2O3の含有率が帯磁率と同じ挙動を示す.R3NDFP-1でもR3-NDFD-1-S1と同様に最新すべり面で高帯磁率異常が認められる.一方で,NDFD-1とNDFD-1-S1では高帯磁率異常は見出されない.
スメクタイトは250 ℃以上に加熱されることにより細粒な磁鉄鉱に変化する(Yang et al., 2020).このため,暗灰色断層ガウジ・優黒色断層ガウジに含まれる磁鉄鉱は,断層活動時に生じる摩擦発熱によって,スメクタイトから形成したものであると考えられる.最新すべり面ではFe2O3は帯磁率と同じ挙動を示すことから,断層ガウジに含まれる鉄が一定の割合で磁鉄鉱に変化したのであろう.高帯磁率領域の不連続な分布は最近の活動による摩擦発熱が局所的に生じたか,あるいは古い活動で一様に形成された高帯磁率領域がその後の活動により断片化されたかのいずれかと解釈できる.最新すべり面に沿って断層ガウジは不均質に分布しており,固結の程度も一様ではない.これにより局所的な摩擦発熱を生じる可能性とともに,古いガウジの断片化の可能性も考えられる.断層変位に伴う帯磁率の増加はわずかであるために,断層ガウジの原岩が玄武岩の場合には原岩の帯磁率が高く高帯磁率異常が見出されないと考えられる.
断層掘削を行った2地点のうち,根尾長嶺では濃尾地震の際に6.2 m の左横ずれ変位を生じている(粟田ほか, 1999).ここでは,R3NDFP-1とR3NDFD-1,そのサイドトラック孔であるR3NDFD-1-S1の3本のボーリング孔が掘削されており,R3NDFP-1は傾斜60°,長さ30 m, R3NDFD-1, R3NDFD-1-S1は傾斜82 °,長さ80 mである.根尾水鳥では濃尾地震の際に6 mの縦ずれ変位を生じている(Koto, 1893).ここでは,NDFP-1とNDFD-1-S1の2本のボーリング孔が掘削されており,NDFP-1は傾斜50°,長さ140 m,NDFD-1-S1は傾斜78 °,長さ525 mである.明瞭な断層ガウジ帯はいずれのボーリングコアでも1ヶ所のみである.最新すべり面は断層ガウジ帯における連続性,直線性のよい面として認められ,R3NDFP-1, R3NDFD-1-S1では深度15.93-16.07 m, 64.73-65.96 m, 64.95-66.07 m, NDFP-1, NDFD-1-S1では深度110.62-110.69 m,387.52-387.67 mに位置している.原岩は美濃帯の泥岩基質メランジュであり,最新すべり面を含む断層ガウジの原岩はR3-NDFP-1とR3-NDFD-1-S1では泥岩であり,NDFP-1とNDFD-1-S1では玄武岩である.
ポータブル帯磁率計を用いて帯磁率を1 cm 間隔で測定した結果,R3NDFD-1-S1では最新すべり面で不連続な高帯磁率異常が認められる.R3NDFD-1におけるXRD分析の結果,最新すべり面に沿って磁鉄鉱が,また断層ガウジの一部にはスメクタイトが認められる.蛍光X線分析を1 cm間隔で行った結果,最新すべり面とその近傍のみFe2O3の含有率が帯磁率と同じ挙動を示す.R3NDFP-1でもR3-NDFD-1-S1と同様に最新すべり面で高帯磁率異常が認められる.一方で,NDFD-1とNDFD-1-S1では高帯磁率異常は見出されない.
スメクタイトは250 ℃以上に加熱されることにより細粒な磁鉄鉱に変化する(Yang et al., 2020).このため,暗灰色断層ガウジ・優黒色断層ガウジに含まれる磁鉄鉱は,断層活動時に生じる摩擦発熱によって,スメクタイトから形成したものであると考えられる.最新すべり面ではFe2O3は帯磁率と同じ挙動を示すことから,断層ガウジに含まれる鉄が一定の割合で磁鉄鉱に変化したのであろう.高帯磁率領域の不連続な分布は最近の活動による摩擦発熱が局所的に生じたか,あるいは古い活動で一様に形成された高帯磁率領域がその後の活動により断片化されたかのいずれかと解釈できる.最新すべり面に沿って断層ガウジは不均質に分布しており,固結の程度も一様ではない.これにより局所的な摩擦発熱を生じる可能性とともに,古いガウジの断片化の可能性も考えられる.断層変位に伴う帯磁率の増加はわずかであるために,断層ガウジの原岩が玄武岩の場合には原岩の帯磁率が高く高帯磁率異常が見出されないと考えられる.