日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS08] ジオパーク

2024年5月27日(月) 09:00 〜 10:15 国際会議室 (IC) (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:尾方 隆幸(琉球大学大学院理工学研究科)、田所 敬一(名古屋大学地震火山研究センター)、松原 典孝(兵庫県立大学大学院 地域資源マネジメント研究科)、道家 涼介(弘前大学大学院理工学研究科)、座長:大野 希一(一般社団法人 鳥海山・飛島ジオパーク推進協議会)、田所 敬一(名古屋大学地震火山研究センター)

09:45 〜 10:00

[MIS08-04] 世界に誇る秋田県一ノ目潟の再評価:ジオパークとの連携に向けて

*安藤 卓人1鈴木 貴裕1林 武司2梶田 展人3永田 篤規3梅田 浩司3 (1.秋田大学 国際資源学部、2.秋田大学 教育文化学部、3.弘前大学 理工学部)

キーワード:ジオパーク、男鹿半島、一ノ目潟、セディメントトラップ、年縞

男鹿半島には日本海拡大からの地球史を記録する陸上露頭が多く露出しているため,地質調査が古くから盛んに行われており,男鹿半島・大潟ジオパークとして日本ジオパークに認定されている。西部には戸賀湾を含めた男鹿目潟火山群が存在し,本研究で対象としている一ノ目潟もこれに属している。一ノ目潟では,かんらん岩を含む捕獲岩で有名である一方,水深が面積に対して深いマール(爆裂火口)の特性から底層に無酸素水塊が広がり,湖底の堆積物には年縞がよく保存されている。湖底堆積物コアの観察結果から,年縞は珪藻遺骸に富む明色層と陸源物質に富む暗色層から構成されていることが示されている(Yamada et al., 2018)。また,一ノ目潟には水温によって組成の変わる脂質であるアルケノンを合成するハプト藻が生息していることから,堆積物コアから年縞レベルでの水温復元が行なえる可能性を秘めており,そのような試料は世界的にも珍しい。一ノ目潟の年縞に対しては,これまで堆積物コアを使った研究が主に行われてきた。また,定期的な観測については水文学的な研究(草野・林,2015)がほとんどであり,年縞の堆積過程への理解に重要な堆積学的もしくは生物地球化学的な研究は行なわれてこなかった。そこで,秋田大学・弘前大学で新たにチームを結成し,自然公園法・文化財保護法に対する許可を受けた上で,2023年4月末より2年間の月例調査を開始し,現在も継続中である。なお,本研究の一部は秋田県ジオパーク研究助成事業による支援をもとに行なった。
毎月の調査では,深度方向の水温測定を行ない,水試料からは懸濁物量,栄養塩,環境DNA,バイオマーカー(脂質)を測定し,その日のうちに顕微鏡を用いた微生物群集解析を行なっている。また,湖心に簡易式セディメントトラップ(自作)を設置した上で毎月回収し,得られた沈降粒子からフラックス測定,顕微鏡観察,元素分析,高分子分析などを行なっている。さらに,毎月の表層堆積物の採泥に加えて,これまでに数本のコア試料の採取も行なっている。これらの分析結果については,本大会の他のセッションで詳しく紹介するとして,本発表では期待される成果のジオパークにおける位置づけや,ジオパークと大学の関わりについて議論をしたい。