日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS12] 古気候・古海洋変動

2024年5月29日(水) 13:45 〜 15:15 国際会議室 (IC) (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:山崎 敦子(名古屋大学大学院環境学研究科)、岡崎 裕典(九州大学大学院理学研究院地球惑星科学部門)、長谷川 精(高知大学理工学部)、小長谷 貴志(東京大学大気海洋研究所)、座長:山崎 敦子(名古屋大学大学院環境学研究科)

14:31 〜 14:53

[MIS12-03] モンゴルおよびロシア・バイカル地域における現生人類の出現

★招待講演

*出穂 雅実1 (1.東京都立大学)

キーワード:上部旧石器時代初期、現生人類、モンゴルとロシア・トランスバイカル(MO-TB)、生態系変化

上部旧石器時代初期(Initial Upper Paleolithic)は、以下の点で特徴付けられる。すなわち、(1)既によく発達したUP的行動が見られる、(2)UPの最も早い段階として位置づけられる(~45 ka)、(3)文化的コンポーネントの諸特徴とその存続期間は地域によって変異がある、そして(4)北アフリカから北東アジアまで最も広域に、しかし不連続に分布する考古学現象である。
IUPの広域類似性が、遺伝的集団の系統的連続を示すのかそれとも地域毎の文化的収斂現象を示すのかをより良く理解するため、本発表では、海洋酸素同位体ステージ(MIS)3のモンゴルとトランスバイカル(MO-TB)をテストケースとして、IUPと後続する上部旧石器時代早期(EUP)における文化変化と生態系変遷の対応関係を議論する。
MO-TBでは、遺跡から近年得られたAMS年代の急速な増加を受け、IUP-EUPの文化的展開がおよそ45,000-30,000 Cal yr BPの期間に生じたと多くの考古学者が考えるようになってきた。加えて、近年、湖沼堆積物分析に基づく高分解能の環境復元が利用可能になり、考古学的および古気候学的データを対比すると、現生人類の居住は環境変動の気候回復期、すなわち、IUPはハインリッヒイベント(H)5とH4、そしてEUPはH4とH3の期間に生じたことが指摘されるようになった。本発表では、居住強度の変化から、IUPとEUPにおける狩猟採集民は、MO-TBが地域生態系の変化に伴い居住適地になったときに出現したことを示す。