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[MIS12-P04] 生物起源炭酸塩の酸素同位体比を用いた古水温復元の課題:生体効果による種特異性の定量的評価

キーワード:生物起源炭酸塩、酸素安定同位体比、生体効果、古水温復元
生物起源炭酸の酸素同位体比(δ18O)は、古水温復元に最も用いられている同位体指標である。これまでさまざまな分類群の生物起源炭酸塩の酸素同位体比と水温との温度換算式が報告されてきたが、これらの式と無機沈殿実験で求められた式との間には種特異的な差異があることが知られている。この差異は、生体内の様々な要因に起因する、生体効果(Vital effect)の影響であると考えられている(Gilbert et al., 2022)。したがって、より確からしい古温度を復元するために、酸素同位体分別の種特異性を定量的に評価し補正する必要があるが、炭酸塩の形成環境の違いや分析手法の違いによる誤差を除去しなければならないという課題がある。
本研究では、生物起源炭酸塩の酸素同位体分別の種特異性を精密かつ定量的に評価することを目指した。温度制御下(22℃, 19℃, 16℃)の同じ飼育水槽で飼育された二枚貝殻と魚類耳石を分析に用いた。全てのサンプルを同一環境で飼育することにより、形成環境の違いによる影響を排除した。さらに、全てのサンプルを同一の装置・手法で分析することで、系統的分析誤差を排除した。その上で、得られた炭酸塩の酸素同位体比(δ18OC)と飼育水の酸素同位体比(δ18OW)及び水温より、それぞれの生物の温度換算式を算出した。
アカガイとアサリの温度換算式の間の差異は、19℃で0.28±0.26 ‰、22℃で0.72±0.39‰であり、無機沈殿実験による同位体平衡値からのずれは特にアサリで顕著であった。また、魚類耳石と二枚貝殻との比較では、カタクチイワシとアカガイの間の差異は0.11±0.35 ‰、アサリとの間の差異は0.61±0.35 ‰であった。この結果から、二枚貝類のような同位体平衡で炭酸塩を形成すると考えられてきた分類群であっても、酸素同位体分別に種差が見られ、種特異性が存在していることを明らかにした。このことから、生体効果の影響は分類群に跨って存在している可能性を示唆した。
二枚貝類2種については、殻の酸素同位体比と同位体平衡値との差異(δ18OC―δ18Oeq)が生じる要因の検討も行った。二枚貝の代謝量MC(%)と比較したところ、MC(%)が増加するとδ18OC―δ18Oeqも増加する傾向が見られた。従って、二枚貝殻の酸素同位体比は代謝量を反映している可能性はあるが、詳細な機構解明には更なる検討が必要である。
本研究では、生物起源炭酸塩の酸素同位体分別の種特異性を精密かつ定量的に評価することを目指した。温度制御下(22℃, 19℃, 16℃)の同じ飼育水槽で飼育された二枚貝殻と魚類耳石を分析に用いた。全てのサンプルを同一環境で飼育することにより、形成環境の違いによる影響を排除した。さらに、全てのサンプルを同一の装置・手法で分析することで、系統的分析誤差を排除した。その上で、得られた炭酸塩の酸素同位体比(δ18OC)と飼育水の酸素同位体比(δ18OW)及び水温より、それぞれの生物の温度換算式を算出した。
アカガイとアサリの温度換算式の間の差異は、19℃で0.28±0.26 ‰、22℃で0.72±0.39‰であり、無機沈殿実験による同位体平衡値からのずれは特にアサリで顕著であった。また、魚類耳石と二枚貝殻との比較では、カタクチイワシとアカガイの間の差異は0.11±0.35 ‰、アサリとの間の差異は0.61±0.35 ‰であった。この結果から、二枚貝類のような同位体平衡で炭酸塩を形成すると考えられてきた分類群であっても、酸素同位体分別に種差が見られ、種特異性が存在していることを明らかにした。このことから、生体効果の影響は分類群に跨って存在している可能性を示唆した。
二枚貝類2種については、殻の酸素同位体比と同位体平衡値との差異(δ18OC―δ18Oeq)が生じる要因の検討も行った。二枚貝の代謝量MC(%)と比較したところ、MC(%)が増加するとδ18OC―δ18Oeqも増加する傾向が見られた。従って、二枚貝殻の酸素同位体比は代謝量を反映している可能性はあるが、詳細な機構解明には更なる検討が必要である。