日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS12] 古気候・古海洋変動

2024年5月29日(水) 17:15 〜 18:45 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 6ホール)

コンビーナ:山崎 敦子(名古屋大学大学院環境学研究科)、岡崎 裕典(九州大学大学院理学研究院地球惑星科学部門)、長谷川 精(高知大学理工学部)、小長谷 貴志(東京大学大気海洋研究所)

17:15 〜 18:45

[MIS12-P26] ゴビ砂漠に存在した過去の巨大塩湖の証拠

*中村 旭登1長谷川 精1佐久間 杏樹2池原 実1奥村 知世1、Shen Chuan-Chou3、イチノロフ ニーデン4、ダワースレン ダワドルジ5石川 剛志6西尾 嘉朗1山口 飛鳥2ルジ トリシット7、小松 吾郎8 (1.高知大学、2.東京大学、3.国立台湾大学、4.モンゴル古生物研究所、5.モンゴル国立大学、6.JAMSTEC、7.岡山大学 、8.ダヌンツィオ大学)

キーワード:ゴビ砂漠、巨大湖、塩湖、ストロマトライト、最終氷期、石灰岩

モンゴル南部ゴビ砂漠北縁部のValley of Lakes地域には,幅数km~20km程の塩湖[ブーンツァガン湖(平均水深9.3m),オログ湖(平均水深3m)など)]が点在する。一方で,湖岸地形の証拠から,過去にはブーンツァガン湖からオログ湖まで東西に繋がった,幅300km以上,最大水深200m以上の巨大な湖“Giant Gobi Lake”が存在した可能性が示唆されている(Komatsu et al., 2001; Lehmkuhl et al., 2018)。この巨大湖の発達した年代については,地形証拠や湖底堆積物のOSL年代に基づいて,MIS6∼5,MIS3,完新世中期頃であると推定されている(Lehmkuhl et al., 2018)。しかし,巨大湖の発達時期や,それを維持していた気候メカニズムなど,不明な点が多い。

我々は2023年7月にValley of Lakes地域の広域調査を行い,オログ湖から40km北の地点(巨大湖の浅湖域)において,塩湖で湖水が干上がる過程で形成される多角形の割れ目地形(乾燥ポリゴン地形)が発達することを発見した。さらに,乾燥ポリゴン地形の上に散らばる砂漠舗石の上に,縞状構造を示す炭酸塩の沈殿が見られることも発見した。これは,Giant Gobi Lakeが淡水湖ではなく塩湖であった可能性を示唆しており,更に沈殿した炭酸塩の年代測定や化学分析を行うことで,巨大塩湖の拡大・縮小のタイミングや発達メカニズムを解明できると期待される。そこで本研究では,砂漠舗石上に沈殿した縞状炭酸塩の元素・鉱物組成,安定炭素・酸素同位体比,そしてU/Th年代測定を行うことにより,ゴビ砂漠の巨大塩湖の発達メカニズムの解明を目的とする。

まず縞状炭酸塩試料を切断して内部構造を観察した結果,縞状構造を主体とする下部と,小礫を含む中部,そしてストロマトライト構造やウーイド構造を示す上部の,三層構造で構成されることが明らかになった。XRD分析の結果,上部のストロマトライト構造部はカルサイトを主体とすることが分かった。またµXRF分析およびLA-ICPMS分析を行って元素組成分布を解析した結果,縞状構造はpureな炭酸塩と,極細粒な砕屑鉱物を含む炭酸塩の互層からなることが明らかになった。さらにマイクロドリル(Geomil326と吸収男児)を用いて縞状石灰岩を100-200μm毎に微小領域切削を行い,安定炭素・酸素同位体比測定を行った。その結果,炭素同位体比は-1.0~+8.0‰,酸素同位体比は-6.6~-3.1‰で,縞状構造を反映して変動していた。今後はU/Th年代測定を行うことにより,巨大塩湖の拡大・縮小のタイミングを明らかにすると共に,上記の元素組成変化や同位体比変化を引き起こした気候変動の解明を試みる。