17:15 〜 18:45
[MIS12-P29] 新潟県胎内市の中新統内須川層から産出した放散虫化石を用いた日本海の古環境復元

キーワード:生層序、日本海、中新世、古環境復元、放散虫、内須川層
日本海は北西太平洋の縁海であり,対馬海峡・津軽海峡・宗谷海峡・間宮海峡の4つの浅い海峡を通じて外洋と接続し,表層水のみを交換する半閉鎖的な海洋である.日本海は後期漸新世から中期中新世(およそ28〜13 Ma)にかけて開口した背弧海盆であると考えられており,日本列島の地殻変動や氷河性海水準変動の影響を受けて様々な環境変動を経験してきたとされている.
新潟県胎内市の中心部を流れる胎内川右岸の夏井セクションには,川沿いの段丘崖に中部中新統下関層から鮮新〜更新統鍬江層にかけての地層が連続的に露出している.このセクションではさまざまな微化石を用いた生層序学的・古環境学的研究がなされており,このうち中部〜上部中新統の内須川層からは珪藻や放散虫が豊富に産出することが報告されている.本セクションではMotoyama et al.(2017)によって12試料を用いて大まかな堆積層序が検討されたが,古環境復元はなされていない.そこで本研究では,放散虫化石層序に基づく年代決定および中期〜後期中新世の日本海の古環境復元を目的として夏井セクションの内須川層から53試料を採取した.
検討の結果,Motoyama et al.(2017)と同様に内須川層基底部〜中部がEucyrtidium inflatum 帯(15.3〜11.8 Ma)に,内須川層中部〜上部がLychnocanoma magnacornuta 帯(11.8〜9.1 Ma)に対比可能であり,新たにCyrtocapsella japonica 亜帯とCollosphaera reynoldsi 亜帯の境界を示すCyrtocapsella japonica の消滅が内須川層上部に認められた.内須川層上部〜最上部はMotoyama et al.(2017)と同様にLipmanella redondoensis 帯(9.1〜7.3 Ma)に対比可能であった.
つづいて種多様度および均衡度を算出し,群集の定量的な指標を明らかにした.さらにフリー統計解析ソフトのPAST(PAleontological STatistics; Hammer et al., 2001)を用いてQモードクラスター分析を行った.類似度にはBray-Curtis指数とMorisita指数の2種を用い,描画されたデンドログラムからそれぞれ11個のクラスターを認定した.そして,それらクラスターの時間的推移をもとに4つの古環境ステージ(I,II,III,IV)を認定した.一方放散虫の生態に関する先行研究をもとに産出した放散虫種を生息緯度や水深に応じて分類し,環境指標種ごとの層序的産出状況を示し,ステージと関連づけて古環境を復元した.
ステージI(およそ15.2〜13.0 Ma),ステージII(およそ13.0〜11.8 Ma)では暖流と寒流双方が流入する比較的温暖で穏やかな環境だったことが示唆され,寒流由来の種の産出頻度変化からステージIよりステージIIの方が暖流優勢な環境だったと考えられる.ステージIII(およそ11.8〜10.0 Ma)になると暖流由来の中層種と水深1000 m以深の指標種が欠如する区間が認められたことから,暖流の流入量および経路の変化と海水準変動の影響が考えられる.ステージIV(およそ10.0〜8.9 Ma)では暖流由来の種の多様性が大きく低下したことと,深層種の連続的産出から,寒冷化の進行と海峡深度の増大が示唆され,深層水は常に流入していたと考えられる.
新潟県胎内市の中心部を流れる胎内川右岸の夏井セクションには,川沿いの段丘崖に中部中新統下関層から鮮新〜更新統鍬江層にかけての地層が連続的に露出している.このセクションではさまざまな微化石を用いた生層序学的・古環境学的研究がなされており,このうち中部〜上部中新統の内須川層からは珪藻や放散虫が豊富に産出することが報告されている.本セクションではMotoyama et al.(2017)によって12試料を用いて大まかな堆積層序が検討されたが,古環境復元はなされていない.そこで本研究では,放散虫化石層序に基づく年代決定および中期〜後期中新世の日本海の古環境復元を目的として夏井セクションの内須川層から53試料を採取した.
検討の結果,Motoyama et al.(2017)と同様に内須川層基底部〜中部がEucyrtidium inflatum 帯(15.3〜11.8 Ma)に,内須川層中部〜上部がLychnocanoma magnacornuta 帯(11.8〜9.1 Ma)に対比可能であり,新たにCyrtocapsella japonica 亜帯とCollosphaera reynoldsi 亜帯の境界を示すCyrtocapsella japonica の消滅が内須川層上部に認められた.内須川層上部〜最上部はMotoyama et al.(2017)と同様にLipmanella redondoensis 帯(9.1〜7.3 Ma)に対比可能であった.
つづいて種多様度および均衡度を算出し,群集の定量的な指標を明らかにした.さらにフリー統計解析ソフトのPAST(PAleontological STatistics; Hammer et al., 2001)を用いてQモードクラスター分析を行った.類似度にはBray-Curtis指数とMorisita指数の2種を用い,描画されたデンドログラムからそれぞれ11個のクラスターを認定した.そして,それらクラスターの時間的推移をもとに4つの古環境ステージ(I,II,III,IV)を認定した.一方放散虫の生態に関する先行研究をもとに産出した放散虫種を生息緯度や水深に応じて分類し,環境指標種ごとの層序的産出状況を示し,ステージと関連づけて古環境を復元した.
ステージI(およそ15.2〜13.0 Ma),ステージII(およそ13.0〜11.8 Ma)では暖流と寒流双方が流入する比較的温暖で穏やかな環境だったことが示唆され,寒流由来の種の産出頻度変化からステージIよりステージIIの方が暖流優勢な環境だったと考えられる.ステージIII(およそ11.8〜10.0 Ma)になると暖流由来の中層種と水深1000 m以深の指標種が欠如する区間が認められたことから,暖流の流入量および経路の変化と海水準変動の影響が考えられる.ステージIV(およそ10.0〜8.9 Ma)では暖流由来の種の多様性が大きく低下したことと,深層種の連続的産出から,寒冷化の進行と海峡深度の増大が示唆され,深層水は常に流入していたと考えられる.