日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS12] 古気候・古海洋変動

2024年5月29日(水) 17:15 〜 18:45 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 6ホール)

コンビーナ:山崎 敦子(名古屋大学大学院環境学研究科)、岡崎 裕典(九州大学大学院理学研究院地球惑星科学部門)、長谷川 精(高知大学理工学部)、小長谷 貴志(東京大学大気海洋研究所)

17:15 〜 18:45

[MIS12-P28] ベンガル湾の深海掘削コアのバイオマーカー分析による鮮新世から更新世の古環境変動の復元

*児玉 祐輔1Muhammad Adam Ismail1安藤 卓人2沢田 健3 (1.北海道大学 理学院 自然史科学専攻、2.秋田大学 国際資源学研究科 資源地球科学専攻、3.北海道大学 理学研究院 地球惑星科学部門)

キーワード:マングローブ、タービダイト、IODP、アルケノン、長鎖アルキルジオール、テルペノイド

インド洋北東部のベンガル湾に存在するベンガルファンは、主にヒマラヤ山脈やチベット高原の隆起に伴う砕屑物がガンジス川・ブラマプトラ川水系により海洋へと運搬されたことによって形成された海底扇状地である(Curray et al., 2002)。海底扇状地を形成するタービダイトは主に洪水流や地震に起因し、洪水流によるタービダイトには陸源有機物が濃集することから、タービダイト層の有機物分析から輸送・堆積過程の議論が可能である。本研究ではベンガル湾で行われたIODP Exp.353航海で掘削されたコアのうち、ベンガルファンの堆積物を掘削したSite U1444のコアをバイオマーカー分析することによって、タービダイトの堆積環境と鮮新世から更新世の古植生や海洋環境の復元を行った。
 バイオマーカー分析の結果、陸上植物に由来するテルペノイドや、藻類に由来する長鎖アルケノン、長鎖アルキルジオール、ステロイドなどが検出された。タービダイトの分析では、マングローブ由来のバイオマーカーと藻類由来のバイオマーカーの変動からタービダイト層の堆積過程の評価を行った。特にガンジスデルタには世界最大のマングローブ林が広がり、マングローブ由来の有機物は砕屑物とともにベンガル湾に流れ込んでいることが考えられ、今研究のマングローブ由来バイオマーカーの結果は調和的である。また、半遠洋性泥岩の分析では鮮新世から更新世の古環境変動を低解像度であるが復元した。古水温は長鎖アルケノン指標であるUK’37と長鎖アルキルジオール指標であるLDIから復元し、全球的な傾向と同様に寒冷化傾向を示した。マングローブ由来のテルペノイドを含む陸上植物バイオマーカーの変動と藻類バイオマーカーの変動には違いが見られた。陸上植物と藻類のバイオマーカー変動の違いは気候変動に対する応答の差に関係する可能性があると推察している。