17:15 〜 18:45
[MIS14-P02] カンラン岩流域における河川水中の溶存鉄と溶存有機炭素濃度の変動
キーワード:カンラン岩、堆積岩、アポイ岳、森林流域、河川流量
陸域の河川からの溶存鉄の供給は海洋の生物生産を支える重要な因子である。しかし、溶存鉄濃度が河川間や季節によってどのように異なるかについては不明な点も多く、溶存鉄の流出プロセスの理解は十分ではない。一般的に鉄は溶存有機物と錯体を形成し、溶存鉄として流出することが知られている。したがって溶存鉄の流出プロセスと溶存有機物の動態と関係づけて観測することは重要である。また河川流量との関係をみることで、詳細な溶存鉄の流出プロセスを把握することが可能になる。地質は物質循環を決定する主要な因子の一つである。カンラン岩は地下深くのマントルが変質することなく地上に現れたもので、マグネシウムや鉄に富む性質をもつ。北海道のアポイ岳は山体全体がカンラン岩でできた、世界的にも珍しい地質的特徴をもっている。また沿岸近くに立地する森林域であり、森林域での物質動態が沿岸域への物質供給へ直接的に影響すると考えられ、森と海のつながりを調べるには最適の場所である。本研究ではカンラン岩流域河川および近接する非カンラン岩流域河川において、季節ごとの溶存鉄濃度、溶存有機炭素(DOC)濃度の変動と溶存鉄濃度とDOC濃度の関係を明らかにすることを目的とした。また降雨出水時の連続観測により河川流量との関係を検討した。
北海道様似町に位置するアポイ岳のカンラン岩域および近接する堆積岩域の河川において2012年~2014年にかけて月1回の定期採水を行った。また、集中観測を行ったカンラン岩流域および堆積岩流域に位置する4河川では、自動採水器により3月、7月、8月、10月、12月の降雨出水時に河川水を4時間間隔で連続的に採取し、水位計により河川水位を連続観測し河川流量を求めた。河川水試料はガラス繊維ろ紙(GF/F, 47mm)を用いてろ過後、4℃にて保存した。溶存鉄とDOCは誘導結合プラズマ発光分析装置、全有機炭素分析装置をそれぞれ用いて分析した。
河川水中の溶存鉄濃度の河川ごとの平均は、0.005~0.21 mg L-1の範囲となり、カンラン岩域河川で高かった。河川流量は平水時にはカンラン岩域河川で低い一方、出水時にはカンラン岩流域河川で堆積岩域河川の流量より高まった。カンラン岩域では降雨が地下深く浸透せずに、表層流の寄与が大きいために降雨に対する流量の応答が速いと考えられた。河川水中の溶存鉄濃度、DOC濃度はカンラン岩域堆積岩域ともに河川流量のピーク時に急激に上昇し、その後河川流量の低下とともに減衰した。溶存鉄濃度、DOC濃度ともにカンラン岩流域の河川で高く、10月の出水時にそれぞれ最大1.81 mg L-1、17.0 mg L-1に達した。一方、8月の出水時には高いDOC濃度(34.0 mg L-1)にもかかわらず、溶存鉄濃度は最大で1.05 mg L-1であった。全期間の溶存鉄濃度とDOC濃度の関係は不明瞭であったが、季節ごとに関係性を見ると、正の直線関係にあり、鉄はDOCと結合して流失していることが明らかになった。一方、溶存鉄・DOC比は季節間で異なり、10月・12月に高く、3月・8月に低かった。8月にはDOC濃度が高いにもかかわらず、溶存鉄濃度は低いのは、夏季にはDOC成分のうち易分解性画分の割合が高まるためであると推察された。また、3月はDOC濃度の変化に対し、溶存鉄濃度の変化が著しく小さかった。以上から、カンラン岩流域河川では、非カンラン岩域河川に比べて、溶存鉄濃度、DOC濃度ともに高いことが明らかになった。カンラン岩が鉄に富む性質に加えて、有機物の堆積と水流出特性によって溶存鉄の流出量が高まることが示唆された。
北海道様似町に位置するアポイ岳のカンラン岩域および近接する堆積岩域の河川において2012年~2014年にかけて月1回の定期採水を行った。また、集中観測を行ったカンラン岩流域および堆積岩流域に位置する4河川では、自動採水器により3月、7月、8月、10月、12月の降雨出水時に河川水を4時間間隔で連続的に採取し、水位計により河川水位を連続観測し河川流量を求めた。河川水試料はガラス繊維ろ紙(GF/F, 47mm)を用いてろ過後、4℃にて保存した。溶存鉄とDOCは誘導結合プラズマ発光分析装置、全有機炭素分析装置をそれぞれ用いて分析した。
河川水中の溶存鉄濃度の河川ごとの平均は、0.005~0.21 mg L-1の範囲となり、カンラン岩域河川で高かった。河川流量は平水時にはカンラン岩域河川で低い一方、出水時にはカンラン岩流域河川で堆積岩域河川の流量より高まった。カンラン岩域では降雨が地下深く浸透せずに、表層流の寄与が大きいために降雨に対する流量の応答が速いと考えられた。河川水中の溶存鉄濃度、DOC濃度はカンラン岩域堆積岩域ともに河川流量のピーク時に急激に上昇し、その後河川流量の低下とともに減衰した。溶存鉄濃度、DOC濃度ともにカンラン岩流域の河川で高く、10月の出水時にそれぞれ最大1.81 mg L-1、17.0 mg L-1に達した。一方、8月の出水時には高いDOC濃度(34.0 mg L-1)にもかかわらず、溶存鉄濃度は最大で1.05 mg L-1であった。全期間の溶存鉄濃度とDOC濃度の関係は不明瞭であったが、季節ごとに関係性を見ると、正の直線関係にあり、鉄はDOCと結合して流失していることが明らかになった。一方、溶存鉄・DOC比は季節間で異なり、10月・12月に高く、3月・8月に低かった。8月にはDOC濃度が高いにもかかわらず、溶存鉄濃度は低いのは、夏季にはDOC成分のうち易分解性画分の割合が高まるためであると推察された。また、3月はDOC濃度の変化に対し、溶存鉄濃度の変化が著しく小さかった。以上から、カンラン岩流域河川では、非カンラン岩域河川に比べて、溶存鉄濃度、DOC濃度ともに高いことが明らかになった。カンラン岩が鉄に富む性質に加えて、有機物の堆積と水流出特性によって溶存鉄の流出量が高まることが示唆された。