[M-IS15] 地球表層における粒子重力流のダイナミクス

[MIS15-03] 二層モデルに基づく泥流の数値計算モデルの開発

*酒井 佑一¹ (1.宇都宮大学農学部)

キーワード：土石流、泥流、数値計算モデル、侵食・堆積

土石流の流動機構はその構成材料によって変化する。砂礫を主体とする土石流（石礫型土石流）では、粒子間応力が卓越し、粒子は層状に流れる。石礫型土石流の数値計算モデルは、これを抵抗則に反映させ、平衡河床勾配に近づくように侵食・堆積が生じるというメカニズムを取り入れて構築されており、過去の災害事例において再現性が確認されている。
　一方、細粒砂を主体とする土石流（泥流）では、粒子が乱流の影響を受けて浮遊する。泥流は高濃度の土砂を含む流れであり、低濃度の浮遊砂流の理論では説明できないことが指摘されている。そのため、泥流の流動機構を適切に反映した数値計算モデルの開発が求められている。そこで本研究では、泥流の水路実験をもとに、高濃度流としての泥流の流動機構を反映させた数値計算モデルを開発した。
　まず、土石流の間隙水圧を測定した実験に基づき、泥流の二層モデルを構築した。この実験では、土石流の粒子径を変化させることによって、石礫型土石流から泥流までの幅広い流れを対象とした。その結果、石礫型土石流から泥流への遷移は、上層が乱流、下層が層流の二層構造をもつ流れを伴って連続的であり、土石流の慣性力と粒子間応力の比として定義された土石流のレイノルズ数に対応することが分かった。この二層構造の流れを反映させた二層モデルをもとに、二層の境界位置を土石流のレイノルズ数によって決定する泥流の流動モデルを構築した。この泥流の二層モデルを別に行った泥流の堆積実験に適用したところ、二層モデルをもとに算出した平衡河床勾配によって、その堆積開始勾配を説明することができた。
　以上の泥流の二層モデルを浅水流方程式に取り入れることで、泥流の数値計算モデルを構築した。ただし、泥流の流動モデル自体は二層であるが、浅水流方程式においては、泥流をひとつの流体として取り扱い、質量保存と運動量保存を考慮している。このとき、浅水流方程式には石礫型土石流で用いられているものと同様のフレームワークを用いている。そのため、泥流の二層モデルの効果は、浅水流方程式の抵抗則と侵食・堆積速度式として間接的に表れることになる。