日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS15] 地球表層における粒子重力流のダイナミクス

2024年5月29日(水) 15:30 〜 16:45 201A (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:成瀬 元(京都大学大学院理学研究科)、酒井 佑一(宇都宮大学農学部)、志水 宏行(砂防・地すべり技術センター)、田邊 章洋(防災科学技術研究所)、座長:酒井 佑一(宇都宮大学農学部)、志水 宏行(砂防・地すべり技術センター)、田邊 章洋(防災科学技術研究所)

16:00 〜 16:15

[MIS15-02] 実験水路で多重サージ混濁流により形成されたサイクリックステップの粒度特性:下流粗粒化についての考察

*横川 美和1、永野 蓮1、松波 和真1、福岡 篤生1 (1.大阪工業大学情報科学部)

キーワード:サイクリックステップ、混濁流、粒度分布、下流粗粒化、水路実験

長さ7m,幅8cm,傾き7°の水路に流した141回のサージ的混濁流によって2つのステップが形成された.上流側のステップ1の波形勾配は0.06で,これまでに得られている実験結果や現世の海底に見られるsediment waves の海底勾配と波形勾配の関係と調和的である.
 141回のサージを流した後の堆積物表面の粒度分析から,中央粒径D50は,ばらつきはあるものの下流へ向かって粗粒化していることがわかった.ステップについてみると,上流側のステップ1では上流側の斜面表面のD50の方が細かい傾向がある.これに対して,下流側に位置するステップ2では,上流側斜面の方がD50が粗い.また,何も堆積していない初期状態での混濁流から得られた浮遊砂の粒度分布と比べると,ステップ1の上流側は,混濁流のボディーの浮遊砂のD50に近い.また,ステップ2の近辺では,混濁流のヘッドの浮遊砂のD50に近い.さらに詳しく粒度の頻度分布をみると,もともと材料の粒度分布を反映して,どのサンプルでも二峰性の分布を示す.二つのモード径はそれほど大きく変化しないが,頻度が場所によって異なるため,D50が異なってくる.ステップ1の上流側では細かい方のモード径の頻度が大きく,D50が細かくなっている.これに対して,ステップ2の上流側斜面では粗い方のモード径の頻度が大きいのである.
 富山深海長谷での調査結果と比較すると,富山深海長谷でも,Meiyo bedとよばれる大きな屈曲部のouter leveeの方は上流側斜面側の堆積速度が顕著に大きく,平均粒径は上流側の方が小さい.Inner leveeの方は,mudwavesの上流側斜面と下流側斜面でタービダイトの厚さにそれほど変化はなく,上流側斜面の平均粒径の方が粗い.この研究を行なったNakajima and Satoh (2001)は,Meiyo bendのようなきつい屈曲部では遠心力の影響で,多くの溢れ出しがおこり,それがこのような上流側の厚層化をもたらしたのだろうと考察している.
 これと比較すると,本実験でもStep1は非常に堆積速度が大きいこと,そして浮遊砂の粒度と比べるとボディーのD50に近いことから,ヘッドはこの部分をバイパスしているが,この実験での流量や堆積物濃度が高いため,ボディーから細かい成分が多く堆積しているのではないかと考えられる.また,ステップ1で鉛直方向にサンプルを採取し,D50をみると,底面付近は細粒で,上方へ向かう途中で粗くなり,最上位に向かってまた細粒化する.このことも,上述の細粒物質の堆積による大きな累重速度の結果と考えられる.