14:45 〜 15:00
[MIS18-04] 青森県椿山温泉における炭酸カルシウムスケールの成長環境とその成因
キーワード:温泉、炭酸カルシウムスケール、生成メカニズム、飽和指数、界面張力、溶存Mg量
スケールは,地熱水の溶存成分が析出した物質である.スケールが生成することで配管を閉塞や,熱交換効率が低下することが知られている.青森県深浦町の温泉採熱試験においても,温泉に沈めていた採熱器にスケールが付着し採熱効率が低下する問題が生じていた.このようなスケール種の代表例である炭酸カルシウムスケールは全国各地で析出し,他のスケール種よりも成長速度が速いことから生成要因の解明が強く求められている.炭酸カルシウムスケールは地表面に湧出後,化学変化を起こすことで沈殿する.この主な原因は二酸化炭素の脱ガスによるとされている.このように沈殿したスケールはやがて硬化 (結晶化)する.炭酸カルシウムスケールには,カルサイトとアラゴナイトがあり,これらのスケール防止の技術も相によって異なる.これらの量比を決める要因は,熱水の温度や過飽和度,主要成分や微量成分など多岐にわたる.そこで,本研究は青森県深浦町の温泉の水質とスケールの産状を調査し,その結晶化メカニズムを明らかにすることを目的とした.
本調査地域は青森県深浦町の温泉廃業施設である.源泉は海岸付近で自噴しており,崖上30 mまで揚水されたのち排水されている.源泉および排水路そして比較のために排水路から約20m離れた地点を大気の参照地点として二酸化炭素濃度を測定した.その結果,源泉では大気の値と比べて明らかに高いことが分かった.実際に源泉で音を立てながら発砲していたことから,源泉付近で急激に二酸化炭素が脱ガスしていたと考えられる.源泉に含まれる溶存成分は,Cl- (15,040.0 mg/kg)とNa+ (7,898.0 mg/kg)が多く,他にMg2+ (976.0 mg/kg),Ca2+ (732.2 mg/kg),HCO3- (971.5 mg/kg)などが微量に含まれていた.スケールの産状およびその生成メカニズムを明らかにするために,温泉の排水口付近のスケール試料を採取した.この試料について種々の分析を行った.結晶の同定とその量比を定量化 (X線回折法: XRD)した.また,任意の点において元素分析 (エネルギー分散型X線分光法: EDS)を行い,柱状結晶はアラゴナイトであることが確認できた.
現地調査で得られた温泉水の水質と試料の分析から得られたスケールの産状から,飽和指数を用いて,二酸化炭素脱ガスによるカルサイトとアラゴナイトの析出のしやすさを推測した.温泉水の溶存成分から求めた飽和指数は,カルサイトの飽和指数が高く,化学平衡的にはカルサイトが優先的に成長すると考えらえるが,実際にはアラゴナイト相が優先的に形成されていることが分かった.この違いは各結晶の界面張力の差と温泉水中のMgが結晶量比を決めた可能性が高いことが示唆された.
本調査地域は青森県深浦町の温泉廃業施設である.源泉は海岸付近で自噴しており,崖上30 mまで揚水されたのち排水されている.源泉および排水路そして比較のために排水路から約20m離れた地点を大気の参照地点として二酸化炭素濃度を測定した.その結果,源泉では大気の値と比べて明らかに高いことが分かった.実際に源泉で音を立てながら発砲していたことから,源泉付近で急激に二酸化炭素が脱ガスしていたと考えられる.源泉に含まれる溶存成分は,Cl- (15,040.0 mg/kg)とNa+ (7,898.0 mg/kg)が多く,他にMg2+ (976.0 mg/kg),Ca2+ (732.2 mg/kg),HCO3- (971.5 mg/kg)などが微量に含まれていた.スケールの産状およびその生成メカニズムを明らかにするために,温泉の排水口付近のスケール試料を採取した.この試料について種々の分析を行った.結晶の同定とその量比を定量化 (X線回折法: XRD)した.また,任意の点において元素分析 (エネルギー分散型X線分光法: EDS)を行い,柱状結晶はアラゴナイトであることが確認できた.
現地調査で得られた温泉水の水質と試料の分析から得られたスケールの産状から,飽和指数を用いて,二酸化炭素脱ガスによるカルサイトとアラゴナイトの析出のしやすさを推測した.温泉水の溶存成分から求めた飽和指数は,カルサイトの飽和指数が高く,化学平衡的にはカルサイトが優先的に成長すると考えらえるが,実際にはアラゴナイト相が優先的に形成されていることが分かった.この違いは各結晶の界面張力の差と温泉水中のMgが結晶量比を決めた可能性が高いことが示唆された.