09:30 〜 09:45
[MIS23-03] 地質・地形証拠から探る火星の表層環境変遷
キーワード:火星、ハビタブル環境、地下氷、地球アナログ
約38億年前に厚い大気と海を持ち,温暖湿潤な環境であった火星は,地球外生命体が存在した可能性が最も高い惑星である。一方で現在の火星は薄い大気と極寒乾燥な環境であり,太古に存在した液体水の大部分は,約35億年前の磁気圏の消失と共に宇宙空間に散逸したと考えられている。しかし,水の一部は極冠や中-高緯度域の浅部地下に氷として現存する (Head et al., 2003)のに加え,高緯度域には高濃度塩水が液体状態で存在し (Rivera-Valentin et al., 2020),現生生命が存在する可能性も示唆されている。つまり火星は,ハビタブル環境の持続性や進化を明らかにすることができる,地球外惑星の中で唯一の対象である。本発表では,(1) デルタ(三角州),(2) 地下氷,(3) 液体塩水,に着目することで明らかになった,過去~現在にかけての火星のハビタブル環境の変遷について紹介する。
研究(1)では長崎大学の実験水槽を用いることにより,火星表層に見られるデルタ地形の成因と太古の海水準変動との関係性を検討した。またクレーター年代に基づき,各種デルタ地形の形成年代を推定した。その結果,海退に伴って形成されるデルタ地形は約36~35億年前の年代を示し,磁気圏消失のタイミングと概ね一致することが分かった。またクレーター内部で水位上昇に伴って形成されるデルタ地形が34~32億年前に形成されており,同時期には小規模な水循環のみが存在したことが示唆された。このことから,約35~34億年前頃に,火星表層環境の転換点があった可能性が明らかになった(鬼頭ほかJpGU2024 堆積セッションH-CG22発表)。
研究(2)では,2030年代前半に計画されている国際火星探査計画Mars Ice Mapper計画の先行探査として,火星中緯度域の地下氷分布の推定を試みている。本研究では,地球の永久凍土地帯に発達する周氷河地形[凍土ポリゴン(多角形土),ピンゴ(凍結丘)]に着目し,永久凍土帯(北部)と砂漠乾燥帯(南部)が近接するモンゴルを地球アナログサイトとして調査し,地下氷分布と周氷河地形の関係性を調べた。そしてその結果を応用することで,火星中緯度域に現存する地下氷分布の推定に繋がった(Hasegawa et al. JpGU2024 Mars session P-PS05)。
研究(3)では,火星高緯度域の表層に液体塩水が存在する可能性の検証を進めている。衛星リモートセンシング解析の結果,南北両半球の高緯度域には液体塩水が関与したことを示唆する地形が多数分布しており,且つ夏季には同領域で石膏が析出していることを示唆する結果が得られた。このことは,火星の北極周辺域に石膏を主体とする砂丘が多数分布することとも整合的であり,地球アナログサイトである南極ドライバレーと同様に,氷底湖を起源とするアクティブな地下水循環の存在を示唆している(千々岩ほかJpGU2024 水惑星セッション M-IS20発表)。
研究(1)では長崎大学の実験水槽を用いることにより,火星表層に見られるデルタ地形の成因と太古の海水準変動との関係性を検討した。またクレーター年代に基づき,各種デルタ地形の形成年代を推定した。その結果,海退に伴って形成されるデルタ地形は約36~35億年前の年代を示し,磁気圏消失のタイミングと概ね一致することが分かった。またクレーター内部で水位上昇に伴って形成されるデルタ地形が34~32億年前に形成されており,同時期には小規模な水循環のみが存在したことが示唆された。このことから,約35~34億年前頃に,火星表層環境の転換点があった可能性が明らかになった(鬼頭ほかJpGU2024 堆積セッションH-CG22発表)。
研究(2)では,2030年代前半に計画されている国際火星探査計画Mars Ice Mapper計画の先行探査として,火星中緯度域の地下氷分布の推定を試みている。本研究では,地球の永久凍土地帯に発達する周氷河地形[凍土ポリゴン(多角形土),ピンゴ(凍結丘)]に着目し,永久凍土帯(北部)と砂漠乾燥帯(南部)が近接するモンゴルを地球アナログサイトとして調査し,地下氷分布と周氷河地形の関係性を調べた。そしてその結果を応用することで,火星中緯度域に現存する地下氷分布の推定に繋がった(Hasegawa et al. JpGU2024 Mars session P-PS05)。
研究(3)では,火星高緯度域の表層に液体塩水が存在する可能性の検証を進めている。衛星リモートセンシング解析の結果,南北両半球の高緯度域には液体塩水が関与したことを示唆する地形が多数分布しており,且つ夏季には同領域で石膏が析出していることを示唆する結果が得られた。このことは,火星の北極周辺域に石膏を主体とする砂丘が多数分布することとも整合的であり,地球アナログサイトである南極ドライバレーと同様に,氷底湖を起源とするアクティブな地下水循環の存在を示唆している(千々岩ほかJpGU2024 水惑星セッション M-IS20発表)。