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[MSD35-05] ひまわり後継衛星計画の進捗と赤外サウンダ模擬観測データ
キーワード:衛星観測、気象衛星、ひまわり、赤外サウンダ
1. はじめに
気象庁で運用している静止気象衛星ひまわり8号・9号は,2029年度頃に運用を終える予定であり,2023年3月より,後継衛星であるひまわり10号の製作を,三菱電機株式会社を契約者として開始した.ひまわり10号では,従来から搭載している可視・赤外イメージャに加えて,線状降水帯に伴う集中豪雨などの監視・予測のためにハイパースペクトル赤外サウンダを新たに導入する.気象庁では静止気象衛星に搭載される赤外サウンダを運用開始後,早期に利活用することが求められており,ひまわり10号が搭載する赤外サウンダの観測をシミュレートした模擬観測データを作成し,その準備を進めている.本発表では,気象庁のひまわり10号の整備計画の進捗を示すとともに赤外サウンダ模擬観測データについて紹介する.
2. ひまわり10号計画の進捗
気象庁は,宇宙基本計画(2023年6月13日閣議決定)に沿って,2029年度の運用開始に向け,ひまわり10号の設計・整備を着実に進めている.2024年度は基本設計審査を実施することとしており,具体的な設計や調達部品の性能をもとに全体の設計が解析上妥当であることを確認する計画である.
また,衛星の運用形態については,現行と同じくPFI事業として実施することとしており,2024年度は同事業の概要等を記した「実施方針」を公表する予定である.
3. Geostationary HiMawari Sounder: GHMS
赤外サウンダは,大気や雲・地表面などからの赤外放射を高い波数分解能で測定し,気温や水蒸気などの大気の鉛直構造を観測するセンサである.ひまわり10号に搭載するGHMSは,L3Harris社製のフーリエ変換分光計(FTS)型の赤外サウンダである.
GHMSの観測波数域としては,680-1,095 cm -1の長波赤外域と中波赤外域1,689-2,250 cm-1の2つに分かれている.衛星直下点における水平分解能は4.2 km以下を計画しており,波数分解能(半値全幅)は0.754 cm-1以下,波数サンプリング間隔は0.625 cm-1以下の予定.
GHMSでは,ディスク観測と称する衛星天頂角が60度以内の領域の観測を60分毎に行う予定である.さらに東西2,500 km・南北2,000 kmの日本域観測を15分毎,東西1,000 km・南北1,000 kmの機動観測を同じく15分毎に行うこととしている.
4. 赤外サウンダ模擬観測データ
気象庁では,ひまわり10号に搭載される赤外サウンダの早期の利用,プロダクト開発,ユーザサポート等に活用するため,赤外サウンダの模擬観測データを作成している.本データは,入力としてERA5の1時間毎,水平分解能約30kmの解析値を利用しており,気温,比湿,雲量,雲水量,雲氷量,オゾン量等のモデル面データを基に,放射伝達モデルRTTOV-13.1により,GHMSの観測を模擬した全天輝度温度及び晴天輝度温度を算出した.本データを庁外の研究者にも提供することにより,幅広い利用技術開発を推進していくことを計画している.
なお,模擬観測データは有人宇宙システム株式会社,L3Harris社及びフランス気象局の協力により作成した.
5. おわりに
ひまわりは気象業務だけでなく,国民に広く利用されており,我が国の重要な社会資本となっている.このため,ひまわり10号においても,オールジャパンで最大限の利用を図っていくことが求められている.この観点から,ひまわり10号の仕様検討にあたっては,庁内利用者だけでなく,「静止気象衛星に関する懇談会」やそのもとに設置された「データ利用研究推進グループ」から意見や要望を伺った.また,気象学会やJpGU等を通じて,研究者からの意見も集約した.さらに「今後の宇宙開発体制のあり方に関するタスクフォース会合・リモートセンシング分科会」のサブ組織である「将来の静止衛星観測に関する検討会(MInT)」からも貴重な意見をいただくとともに,その検討結果を日本リモートセンシング学会誌の解説記事として提示していただいた.これらのご意見を参考に,ひまわり10号の準備を進めている.伏して感謝する次第である.
気象庁で運用している静止気象衛星ひまわり8号・9号は,2029年度頃に運用を終える予定であり,2023年3月より,後継衛星であるひまわり10号の製作を,三菱電機株式会社を契約者として開始した.ひまわり10号では,従来から搭載している可視・赤外イメージャに加えて,線状降水帯に伴う集中豪雨などの監視・予測のためにハイパースペクトル赤外サウンダを新たに導入する.気象庁では静止気象衛星に搭載される赤外サウンダを運用開始後,早期に利活用することが求められており,ひまわり10号が搭載する赤外サウンダの観測をシミュレートした模擬観測データを作成し,その準備を進めている.本発表では,気象庁のひまわり10号の整備計画の進捗を示すとともに赤外サウンダ模擬観測データについて紹介する.
2. ひまわり10号計画の進捗
気象庁は,宇宙基本計画(2023年6月13日閣議決定)に沿って,2029年度の運用開始に向け,ひまわり10号の設計・整備を着実に進めている.2024年度は基本設計審査を実施することとしており,具体的な設計や調達部品の性能をもとに全体の設計が解析上妥当であることを確認する計画である.
また,衛星の運用形態については,現行と同じくPFI事業として実施することとしており,2024年度は同事業の概要等を記した「実施方針」を公表する予定である.
3. Geostationary HiMawari Sounder: GHMS
赤外サウンダは,大気や雲・地表面などからの赤外放射を高い波数分解能で測定し,気温や水蒸気などの大気の鉛直構造を観測するセンサである.ひまわり10号に搭載するGHMSは,L3Harris社製のフーリエ変換分光計(FTS)型の赤外サウンダである.
GHMSの観測波数域としては,680-1,095 cm -1の長波赤外域と中波赤外域1,689-2,250 cm-1の2つに分かれている.衛星直下点における水平分解能は4.2 km以下を計画しており,波数分解能(半値全幅)は0.754 cm-1以下,波数サンプリング間隔は0.625 cm-1以下の予定.
GHMSでは,ディスク観測と称する衛星天頂角が60度以内の領域の観測を60分毎に行う予定である.さらに東西2,500 km・南北2,000 kmの日本域観測を15分毎,東西1,000 km・南北1,000 kmの機動観測を同じく15分毎に行うこととしている.
4. 赤外サウンダ模擬観測データ
気象庁では,ひまわり10号に搭載される赤外サウンダの早期の利用,プロダクト開発,ユーザサポート等に活用するため,赤外サウンダの模擬観測データを作成している.本データは,入力としてERA5の1時間毎,水平分解能約30kmの解析値を利用しており,気温,比湿,雲量,雲水量,雲氷量,オゾン量等のモデル面データを基に,放射伝達モデルRTTOV-13.1により,GHMSの観測を模擬した全天輝度温度及び晴天輝度温度を算出した.本データを庁外の研究者にも提供することにより,幅広い利用技術開発を推進していくことを計画している.
なお,模擬観測データは有人宇宙システム株式会社,L3Harris社及びフランス気象局の協力により作成した.
5. おわりに
ひまわりは気象業務だけでなく,国民に広く利用されており,我が国の重要な社会資本となっている.このため,ひまわり10号においても,オールジャパンで最大限の利用を図っていくことが求められている.この観点から,ひまわり10号の仕様検討にあたっては,庁内利用者だけでなく,「静止気象衛星に関する懇談会」やそのもとに設置された「データ利用研究推進グループ」から意見や要望を伺った.また,気象学会やJpGU等を通じて,研究者からの意見も集約した.さらに「今後の宇宙開発体制のあり方に関するタスクフォース会合・リモートセンシング分科会」のサブ組織である「将来の静止衛星観測に関する検討会(MInT)」からも貴重な意見をいただくとともに,その検討結果を日本リモートセンシング学会誌の解説記事として提示していただいた.これらのご意見を参考に,ひまわり10号の準備を進めている.伏して感謝する次第である.