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[MZZ44-04] 広島県東広島市安芸津町の神社と寺院の安全性比較―地震時における避難場所としての適性-
キーワード:地震災害、緊急避難場所、神社、寺院
広島県東広島市は2018年に発生した平成30年7月豪雨災害により,地域の広い範囲で土石流や河川の氾濫などが発生し,建物被害は全壊97件を含めた計1,489件にも及んだ。市南部に位置する安芸津町はその中で最も多い556件であった(東広島市,2021)。安芸津町は瀬戸内海に面した地域であり,台風・高潮などの豪雨災害に加え,地震時は津波被害が懸念される地域である。安芸津町内には32ヶ所の指定避難所があるが,地震・土砂災害・洪水・高潮・津波の全ての自然災害発生時に対応できる避難所は10ヶ所のみ,収容可能人数は903名である。8,558人(2023年12月時点)の地域住民を避難所で収容することは難しい上に,緊急避難場所は設定されていない(東広島市HP,2024年2月閲覧)。そのため自然災害が発生した際の緊急避難先を検討する必要がある。
どのような場所を選択するのが適当かを検討するにあたり,先行研究で「安全説」がある神社と,新たな避難先として検討されている寺院について立地的安全性を比較することにした。これまで多くの調査が実施された神社は,微高地に立地していることにより津波や浸水の被害から免れたとの指摘がある(例えば黒木,2022)。一方,寺院については指定緊急避難所よりも浸水リスクのやや高い場所に立地していることが検証されているが,一般的に水害のリスクは高くはないとの調査結果があり,避難所としての機能を期待されている(小林ほか,2023)。今回は地震によって生じる地盤災害および土砂災害と津波災害に対する避難場所としての安全性について,神社と寺院の検討をおこなった。
分析にはArcGIS Pro 3.1.1を用いた。安芸津町内の32ヶ所の避難所と神社22件と寺院13件の座標値を,Google Mapより抽出してポイントデータとし,津波浸水想定域※1と土砂災害警戒区域※2,震度想定域※3のGISデータを用いて,それぞれの立地的安全性について比較分析をおこなった。
分析の結果,神社は,土石流や洪水といった豪雨災害では被災を免れるが,強い揺れやがけ崩れ,津波被害を受ける場所に立地するものが半数程度あることがわかった。一方,寺院は13件のうち11件が地震時の安全性が高いと判断された。このことから,地震時では避難先として寺院を設定することが有効だと考えられる。また,安芸津町の避難所についても神社や寺院と同様に立地的安全性について分析をおこなったところ,避難所には強い揺れを生じる場所に立地するものが16件あり,これまで安全と考えられていた10件の避難所のうち6件が,地震時に家屋倒壊などの危険があることがわかった。
沿岸部の安芸津町風早地区では,安全な避難場所の確保が困難と考え,これまで津波発生時の緊急避難場所として高台の線路北側を設定していた。しかし,今回の分析結果から盛土箇所で地震時の揺れに対する危険度が高いことが判明したため,寺院への避難という選択も含めた,避難場所についての再検討を始めている。
引用文献:
東広島市総務部危機管理課(2021):『東広島市平成30年7月豪雨災害記録誌』。95ページ,東広島市総務部危機管理課,東広島。
東広島市HP:指定緊急避難場所・その他の指定避難所2023/05/31更新,安芸津町人口(2023.12月)
https://www.city.higashihiroshima.lg.jp/ 2024年1月閲覧
黒木貴一(2022):令和2年7月豪雨による球磨川の洪水と神社の立地条件,第11回土砂災害に関するシンポジウム論文集,pp.1-6
小林 遼・山田真史・堀 智晴(2023):寺院の立地特性と水害時緊急避難場所としての活用可能性に関する全国調査,2023日本自然災害学会学術講演会発表論文集,Ⅲ-3-1
使用データ:
1) 高潮・津波ポータルひろしま,2) 土砂災害ポータルひろしま,広島県 危機管理監 危機管理課,(http://www.bousai.pref.hiroshima.jp/ 2024年2月閲覧)
3) 確率論的地震動予測地図データ,J-SHIS,https://www.j-shis.bosai.go.jp/ 2024年2月閲覧
どのような場所を選択するのが適当かを検討するにあたり,先行研究で「安全説」がある神社と,新たな避難先として検討されている寺院について立地的安全性を比較することにした。これまで多くの調査が実施された神社は,微高地に立地していることにより津波や浸水の被害から免れたとの指摘がある(例えば黒木,2022)。一方,寺院については指定緊急避難所よりも浸水リスクのやや高い場所に立地していることが検証されているが,一般的に水害のリスクは高くはないとの調査結果があり,避難所としての機能を期待されている(小林ほか,2023)。今回は地震によって生じる地盤災害および土砂災害と津波災害に対する避難場所としての安全性について,神社と寺院の検討をおこなった。
分析にはArcGIS Pro 3.1.1を用いた。安芸津町内の32ヶ所の避難所と神社22件と寺院13件の座標値を,Google Mapより抽出してポイントデータとし,津波浸水想定域※1と土砂災害警戒区域※2,震度想定域※3のGISデータを用いて,それぞれの立地的安全性について比較分析をおこなった。
分析の結果,神社は,土石流や洪水といった豪雨災害では被災を免れるが,強い揺れやがけ崩れ,津波被害を受ける場所に立地するものが半数程度あることがわかった。一方,寺院は13件のうち11件が地震時の安全性が高いと判断された。このことから,地震時では避難先として寺院を設定することが有効だと考えられる。また,安芸津町の避難所についても神社や寺院と同様に立地的安全性について分析をおこなったところ,避難所には強い揺れを生じる場所に立地するものが16件あり,これまで安全と考えられていた10件の避難所のうち6件が,地震時に家屋倒壊などの危険があることがわかった。
沿岸部の安芸津町風早地区では,安全な避難場所の確保が困難と考え,これまで津波発生時の緊急避難場所として高台の線路北側を設定していた。しかし,今回の分析結果から盛土箇所で地震時の揺れに対する危険度が高いことが判明したため,寺院への避難という選択も含めた,避難場所についての再検討を始めている。
引用文献:
東広島市総務部危機管理課(2021):『東広島市平成30年7月豪雨災害記録誌』。95ページ,東広島市総務部危機管理課,東広島。
東広島市HP:指定緊急避難場所・その他の指定避難所2023/05/31更新,安芸津町人口(2023.12月)
https://www.city.higashihiroshima.lg.jp/ 2024年1月閲覧
黒木貴一(2022):令和2年7月豪雨による球磨川の洪水と神社の立地条件,第11回土砂災害に関するシンポジウム論文集,pp.1-6
小林 遼・山田真史・堀 智晴(2023):寺院の立地特性と水害時緊急避難場所としての活用可能性に関する全国調査,2023日本自然災害学会学術講演会発表論文集,Ⅲ-3-1
使用データ:
1) 高潮・津波ポータルひろしま,2) 土砂災害ポータルひろしま,広島県 危機管理監 危機管理課,(http://www.bousai.pref.hiroshima.jp/ 2024年2月閲覧)
3) 確率論的地震動予測地図データ,J-SHIS,https://www.j-shis.bosai.go.jp/ 2024年2月閲覧