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[MZZ44-05] 模擬岩石の帯磁率測定と石材研究への適用

キーワード:文化地質学、帯磁率、文化財、石材
堆積物や土壌の帯磁率は、古環境変動や環境汚染などの調査研究において、しばしば用いられる(例えば鳥居, 2005)。帯磁率計測は簡便かつ非破壊で実施できるため、文化地質学的研究においても、帯磁率が石造物の産地推定を行う情報のひとつになりうる(先山, 2005; 長, 2015)。これまでに、磁鉄鉱では帯磁率の粒子サイズ依存性が議論されてきたが(Till et al., 2011)、数百μm以上のサイズの磁性粒子を含むサンプルの帯磁率についての議論は殆どなされていない。また、岩石試料について帯磁率測定の安定性や、岩石試料の大きさと帯磁率測定値の関係、岩石のうち火山岩の結晶度と帯磁率の関係については、系統的な研究は行われていない。そこで本研究では、これらのうち、岩石試料の大きさや磁性粒子の含有量による帯磁率測定値への影響を検討するために室内実験を行った。具体的には、磁鉄鉱や赤鉄鉱の質量を変化させた模擬岩石試料を作成して帯磁率を測定するとともに、対象物の厚みや面積を変えた場合の帯磁率測定も実施した。その結果、磁性鉱物の質量と帯磁率に正の高い相関が見られた。また岩石試料の厚みや面積と帯磁率の関係についても定式化できることが分かった。これを踏まえて適切な測定条件を示した。更に、世界文化遺産である姫路城の石垣などにも使用されている石材などの帯磁率の測定も実施し、野外での石材測定について必要な知見をまとめる。