17:15 〜 18:45
[MZZ44-P03] 「三嶋の神のモノガタリ」を通じた文理連携の取り組み
キーワード:伊豆半島ジオパーク、火山、伊豆三嶋信仰
「ユネスコ世界ジオパーク(UGGP)」は、国際的に価値のある地質遺産を保護し、自然環境や地域文化への理解を深め、教育や地域振興等を通じて、持続可能な社会の実現を目指す取り組みである。伊豆半島は伊豆-小笠原弧の北端部に位置し、フィリピン海プレートの北上にともなって南から移動して本州に衝突したという特異な地史をもつ。この地域には国際的に価値のある火山や地殻変動の痕跡が見られることから、2018年にユネスコ世界ジオパークに認定された。沿岸地域は黒潮の影響を受けた温暖な気候に恵まれている一方、火山に由来する起伏に富んだ山地には冷涼・湿潤な環境が広がり、多様な生態系を生んでいる。こうした風土のもと、伊豆諸島と本州をつなぐ結節点となり、古代から人や物資が行き交い、特有の信仰や歴史・文化が形成されてきた。
当初、地質遺産の保護活動からスタートした世界ジオパークはユネスコの正式事業化以降、ガイドラインや認定審査時の勧告などにおいて文化遺産についても扱うよう言及されるようになった。本来、その土地で育まれてきた文化は、周囲の自然環境と切り離して考えることができないものである。ジオパークは一つの地域をまるごと対象としており、そこには特有の地形・地質と生態が存在し、人と自然が互いに影響し合いながら育まれてきた文化がある。その関係性を伝えることが、ジオパークにおいて文化を扱う重要性であるといえる。
このような背景のもと、伊豆半島世界ジオパークでは本地域の歴史や文化・信仰に関する研究を蓄積してきた國學院大學博物館と2023年に連携協定を締結した。協定は相互の有する研究成果や物的・人的資源の活用及び教育・普及事業への参画を図ることが目的で、おもな事業として取り組んだのが國學院大學博物館での特別展示「三嶋の神のモノガタリ-焼き出された伊豆の島々-」の開催と関連普及イベントである。人々は火山噴火や造島といった自然現象に神々のはたらきを見出し、神の御業は古代国家により重視され、中世以降の島々の創成説話を語る縁起として流布されてきた。このように本地域で自然の影響を強く受けながら成立・発展してきた伊豆三嶋信仰について、自然科学及び神道学的・考古学的観点から捉え直して紹介した。
本事業による最も大きな成果は、これまで地質学・考古学・神道学といった各学問領域で独自に進められてきた研究を、伊豆三嶋信仰という一つのテーマのもとで互いに関連付けられたことである。伊豆諸島での噴火現象に端を発する三嶋神が、古代国家における祭祀制度の変容といった社会情勢の流れの中で、その位置づけや役割が変化し、神を祀る場も島嶼部から府中へとその場を移した。これには当時の政治・社会が大きく関わっているが、その背景には島嶼部における火山活動の一時的な静穏化が影響していることが見えてきた。これらのことは歴史書や信仰・祭祀の様相に当時の自然環境や現象がどのように表れているかを示す好例であるといえよう。本事業の展開により、これまで人文および自然科学の個別領域で独自に進められてきた研究が一つのテーマのもとに融合し、有機的に結び合うことにつながった。
当初、地質遺産の保護活動からスタートした世界ジオパークはユネスコの正式事業化以降、ガイドラインや認定審査時の勧告などにおいて文化遺産についても扱うよう言及されるようになった。本来、その土地で育まれてきた文化は、周囲の自然環境と切り離して考えることができないものである。ジオパークは一つの地域をまるごと対象としており、そこには特有の地形・地質と生態が存在し、人と自然が互いに影響し合いながら育まれてきた文化がある。その関係性を伝えることが、ジオパークにおいて文化を扱う重要性であるといえる。
このような背景のもと、伊豆半島世界ジオパークでは本地域の歴史や文化・信仰に関する研究を蓄積してきた國學院大學博物館と2023年に連携協定を締結した。協定は相互の有する研究成果や物的・人的資源の活用及び教育・普及事業への参画を図ることが目的で、おもな事業として取り組んだのが國學院大學博物館での特別展示「三嶋の神のモノガタリ-焼き出された伊豆の島々-」の開催と関連普及イベントである。人々は火山噴火や造島といった自然現象に神々のはたらきを見出し、神の御業は古代国家により重視され、中世以降の島々の創成説話を語る縁起として流布されてきた。このように本地域で自然の影響を強く受けながら成立・発展してきた伊豆三嶋信仰について、自然科学及び神道学的・考古学的観点から捉え直して紹介した。
本事業による最も大きな成果は、これまで地質学・考古学・神道学といった各学問領域で独自に進められてきた研究を、伊豆三嶋信仰という一つのテーマのもとで互いに関連付けられたことである。伊豆諸島での噴火現象に端を発する三嶋神が、古代国家における祭祀制度の変容といった社会情勢の流れの中で、その位置づけや役割が変化し、神を祀る場も島嶼部から府中へとその場を移した。これには当時の政治・社会が大きく関わっているが、その背景には島嶼部における火山活動の一時的な静穏化が影響していることが見えてきた。これらのことは歴史書や信仰・祭祀の様相に当時の自然環境や現象がどのように表れているかを示す好例であるといえよう。本事業の展開により、これまで人文および自然科学の個別領域で独自に進められてきた研究が一つのテーマのもとに融合し、有機的に結び合うことにつながった。