日本地球惑星科学連合2024年大会

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[J] ポスター発表

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[M-ZZ46] ジオパークとサステナビリティ(ポスター)

2024年5月26日(日) 17:15 〜 18:45 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 6ホール)

コンビーナ:松原 典孝(兵庫県立大学大学院 地域資源マネジメント研究科)、郡山 鈴夏(フォッサマグナミュージアム)

17:15 〜 18:45

[MZZ46-P10] パラフィンと火山噴出物を用いた手の平サイズ成層火山~完成後も持続的に楽しむことが出来る火山実験の構築~

*倉科 萌1笠間 友博2 (1.南足柄市企画課、2.箱根ジオパーク推進協議会)

キーワード:火山実験、持ち帰り、手の平サイズ、教育、子ども達

箱根ジオパークは首都圏から一番近い火山を有するジオパークとして火山教育に力を入れている。「食べることに主眼を置いた子ども向け成層火山作製実験の試み~チョコビスケット火山~」(倉科,2023)では、溶岩や軽石の代わりに溶かしたチョコレートや砕いたビスケットを重ねることで、火山の成長の概念を直感的に学ぶことができる。子育て支援団体や、商業施設からも依頼を受け、発表から1年で約310名が参加する需要の高い講座となった。一方、在庫の賞味期限や、食品衛生法上完成品は会場で消費しなければならないなどの制約も生じた。
非食品での火山実験は既に数多く開発されており、箱根ジオパークでは「食用廃油を使用した複成火山作成実験の開発」(笠間,2010)が小中学校授業を中心に実施されている。
しかし、火山現象の再現は物質が拡散する特性上実験は大掛かりになり片付けの手間もかかる。
本実験は、準備や片付けが大変楽であること、また手乗りサイズの小さなケースに入れて持ち帰れる火山でありながら、完成度は高いことを目指した。さらに、帰宅後も楽しめる仕掛けがあり、自身で作成した愛着も相まって長く印象に残る実験となるよう新たに構築したものである。
2023年8月、神奈川県立生命の星・地球博物館と共同で実験イベントを行い、56名の子どもたちが参加した。
手順
火山噴出物を3種類の材料(ア、イ、ウ)に置き換えて成層火山を作る。
溶岩はパラフィンをお湯で溶かしたもの(アとする)。パラフィンはロウソクの原料である。
軽石と火山弾は、今回は自宅の畑で採取し、ふるいにかけた細粒の宝永スコリアを使用したが、一般的には鹿沼石や赤玉土などの園芸用軽石(2mmφ程度)でよい(イとする)。
火山灰は園芸用軽石を粉末にしたもの(ウとする)。火山噴出物には、液体状のものとバラバラになった固体状のものがあること、後者には様々な大きさがあること、手の平サイズの火山に縮小するため使用する砕屑物は細粒のものを選別、または粉状に加工していること、を伝える。
まず始めに、紙皿の上にクッキングシートを敷き、その上にお弁当用アルミカップ(6号)を1枚広げる(80mmφ)。山頂火口での噴火を想定し、湯煎したアをスプーン1杯分注ぐ、冷えて固まる溶岩の挙動として観察させるとともに、ベースとなる山体を作製する(図.1①)。固まり始めたアの中央部に火道に見立てた線香を立てる(図.1②)。安定角があるので底面の直径80㎜に対して線香の先端の高さは2㎝ぐらいが目安である。
その後、線香を中心に火砕物に見立てたイ、ウを積もらせる。さらにイ→ウ→ア→イ・・・と交互に降り重ねていくことで火山が噴火で成長する様子を観察する(図.1③)。
線香の先が2mm程見える所まで積み重ねる。最後に水溶き糊を降りかけ山体を固める。惣菜用カップのフタ(86mmφ)をひっくり返し、アルミカップの円周内にできた成層火山をクッキングペーパーから外しフタに乗せる。カップを上からはめると持ち帰りサイズの成層火山が完成する(図.3)。
結果
パラフィンは温度によって透明から白色に変化するため、外側から固まっていく様子がよく観察できた。また、溶岩のシワにそっくりなシワも観察された(図2)。今回の実験では保温性を重視したため、溶岩ドームの形状はほとんど観察されず、安定した成層火山が形成された(図3)。
実験中、参加者は火傷を防ぐために手袋を着用した。熱い液体が染み込まないビニール手袋が最適である。また、パラフィンを溶かす容器には、安定性・保温性に優れた弁当用陶器(おぎのや製)を使用した(容器は耐熱ガラスを代用しても良い)。その結果、火傷や容器を転倒させた参加者は1人も無く、真剣に実験に取り組んだ。山体を成長させすぎて、カップに入りきらない例も一部見受けられたが、子ども達は火山の成長をリアルに学び取ることができ、完成品を嬉しそうに持ち帰っていった。
保護者へは、完成後カップから取り出し線香に着火すると、頂上から煙が出て見た目でも楽しむことができること(図.4)、パラフィンやボンドの染みこんだ線香は、燃え尽きず2分ほどで自然に消火する(数回程度繰り返し可)こと、自然に消火するが、最後は必ず水をかけておくことを口頭と書面にて伝えた。
2024年3月以降も各地の博物館、公共施設にて実施依頼を複数受けている。今後も試行錯誤を繰り返し、依頼者側の様々な条件やニーズに併せた講座を複数用意することで火山教育の底上げに役立てていく予定である。