日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-ZZ その他

[M-ZZ46] ジオパークとサステナビリティ(ポスター)

2024年5月26日(日) 17:15 〜 18:45 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 6ホール)

コンビーナ:松原 典孝(兵庫県立大学大学院 地域資源マネジメント研究科)、郡山 鈴夏(フォッサマグナミュージアム)

17:15 〜 18:45

[MZZ46-P13] 立山黒部ジオパークを題材とした映像教材の有効性: 理解度と興味の度合いに着目した分析

*野寺 凜1,2 (1.黒部市吉田科学館、2.一般社団法人立山黒部ジオパーク協会)

キーワード:教育効果、地学教育、学習効果、山岳地域、アンケート調査、水循環

映画「剣の山」は,2017年に立山黒部ジオパークを介して地球の営みの理解を深めるための教材として制作された.本映画では,隆起運動と水の侵食作用による山の高さの変化や,山が平野にもたらす恵みである湧き水が解説される.ジオパークを題材とした映像教材は,ジオパークの地史や自然現象の理解を促す上で有効であると考えられる.すなわち,教材の教育効果の検証は,ジオパークの持続的な社会貢献の一助となる.そこで,本研究では,本映画の教育効果を調査するために,本映画を視聴した児童を対象とした事前および事後アンケートによる調査を実施した.アンケートで調査した項目は,(1)視聴前と視聴後2日後および視聴後1か月後時点における児童の理科に対する興味の度合いと,(2)視聴前と視聴後1か月後時点における児童の映画の内容に対する理解度と,(3)児童の理解度を向上させた本映画の構成要素との3点である.
児童の各分野に対する興味の度合いについては,全児童の回答の値を平均して分析した.児童の各分野に対する興味の度合いは,視聴後2日後の時点で,視聴前に比べて増加していたが,視聴後1ヶ月後の時点で視聴前と同程度となった.児童の理解度については,山の高さの長期的な変化の予測と,湧き水のしくみについて回答する設問を通じて分析した.本設問の正答率は,視聴後1か月後の時点において,視聴前に比べて増加した.さらに,湧き水のしくみの回答では,視聴後1か月後の時点において,「山」,「雪」,「水」,「雨」などの語彙の出現数が,視聴前に比べて増加した.次に,感想を記述する設問では,「水」,「地球」,「削る」,「プレート」,「称名滝」,「立山」などの語彙が多く出現した.児童の理解度を向上させた要因の分析では,これらの頻出語彙を踏まえ,事前アンケートで不正解であった児童が,事後アンケートで正解に転じたか否かと,感想の記述でこれらの語彙を用いているか否かを検証した.その結果として,不正解から正解に転じた児童には,両者ともに不正解の児童に比べて,感想を記述する設問において,映画の一場面と関連する語彙を用いやすい傾向があった.
以上の検証結果は,以下のように本映画の教育効果を示唆する.興味の度合いを問う設問の結果から,本映画が与える児童の理科に対する興味関心への影響としては,一時的な興味関心を喚起するものの,持続的な興味関心の形成には寄与しないと考えられる.理解度を問う設問の結果から,児童の本映画の内容に対する理解度としては,山の高さの長期的な変化や,湧き水のしくみについて,理解度が向上し記憶が持続していると考えられる.また,児童の理解度と感想で記述された語彙の関連は,本映画の印象的な場面が理解度の向上に寄与した可能性を示す.