日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 O (パブリック) » パブリック

[O-07] キッチン地球科学:多様な到達点を生む実験

2024年5月26日(日) 17:15 〜 18:45 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 6ホール)

コンビーナ:熊谷 一郎(明星大学理工学部)、鈴木 絢子(東洋大学)、下川 倫子(奈良女子大学)、栗田 敬(東京工業大学 地球生命研究所)

17:15 〜 18:45

[O07-P04] 顕著なシアシニング性を示す流体による熱対流

★招待講演

*柳澤 孝寿1,2田坂 裕司2,1、大家 広平2能登 大輔3亀山 真典4,1 (1.国立研究開発法人海洋研究開発機構、2.北海道大学大学院工学研究院、3.ペンシルバニア大学、4.愛媛大学地球深部ダイナミクス研究センター)

キーワード:熱対流、マグマ、レオロジー、シアシニング、流速場

温度の上昇とともに粘性が低下する流体による対流はマントルなど地球科学の対象として重要であり、多くの研究がなされてきた。上下温度差が駆動するレイリー・べナール対流の場合、粘性の温度依存性に起因する重要な特徴の1つは上下の温度境界層が非対称となることであり、そのために内部の温度は上昇する。これに対して、粘性率がシアレートに依存する非ニュートン性を持つ流体による対流は、マグマの流れなどを理解する重要な要素であるにもかかわらず十分には理解されていない。ここでは粘性率がシアレートとともに低下するシアシニング流体を用いて、流速場の解析から流れの構造にシアシニング性を反映したものが見られるかどうかを、ニュートン流体による対流の流速場と詳細に比較しつつ調べた。実験には奥行き方向に狭い矩形容器を用い、上下の温度をそれぞれ固定、側壁は断熱とする。高分子多糖類の一種であるキサンタンガムの希薄水溶液を作業流体とする。キサンタンガムは増粘剤として食品にも広く使用されている。トレーサー粒子の画像解析から流速場とその時間発展を定量化した(PIV)。その一方で、高性能のレオメータを用いてシアレートと粘性の関係、粘度曲線を取得した。その結果、0.01%というような希薄な水溶液でも、シアレートの2桁増加に対して粘性が2桁低下するような、顕著なシアシニング性を示すことを見出した。このシアレートの範囲にかかるような熱対流を実現しその流速場を観察すると、いくつかの興味深い挙動が見られた。そのうちの1つは、対流セルの境界となる上昇下降の領域が細くなって流速が増加し、セルの内部にほとんど流れのない領域が取り残されることである。これらの実験に加えて、計測されたシアシニング性をモデル化して組み込んだ熱対流の数値シミュレーションを実施し、観察された挙動の再現に成功するとともに、粘性率の空間分布などの詳細を明らかにした。