13:45 〜 15:15
[O08-P10] 発光高度・形態に着目した夏季・冬季スプライト柱の比較
キーワード:スプライト、形態、夏季
§1.動機・目的
本校では,これまで高高度発光現象に焦点を当てて研究を行ってきた.先行研究では冬季スプライト柱の面積が本数・長さとそれぞれ比例することが確認されている.またPeak current intensity(kA)は先行研究より電磁パルスと比例関係にあり,スプライトの発生面積は電磁パルスに比例することからPeak current intensity(kA)は面積と比例関係にあると確認できた.
§2.スプライトとは
スプライトは高高度発光現象の一種であり,雷雲地上間放電に伴って発生する,下端は高度約70km,上端は約80㎞の発光現象である.スプライトには様々な形状があることが知られており,本研究では,①Column(柱状), ②Angel(天使の羽のような部分を持つ), ③Carrot(人参の髭のような部分を持つ), ④Wishbone Tree(枝分かれ部分を持つ)の4種類に形状を分類した(Bor,2013).以降スプライト柱をColumnと呼ぶ.
§3.研究方法
3台の高感度CCDカメラでそれぞれ撮影された映像を動体検知ソフトで常時監視することにより,自動観測を行っている.PCがカメラの映像を自動で監視し,スプライトなどの動体を検知した場合,その前後3秒を含めた動画を記録する.また,カメラの視野範囲を基に,スプライトの発生地点を特定する.さらに,スプライトを形状により分類し,面積測定ソフト(lenaraf220b)を用いることでスプライトの面積を求め,本数,長さ,高度,との相関関係を調べる.そのため今回は,複数の種類が同時発生したイベントは除外した.
§4.結果
4-1.形状別面積(Column)
スプライトの本数と面積の関係を調べたところ,正の相関関係が見られた.また,長さと面積の関係を調べたところ,正の相関関係が見られた.さらに,高度と面積の関係を調べたところ,正の相関関係が見られた.
4-2.形状別面積(Carrot)
スプライトの本数と面積の関係を調べたところ,正の相関が見られた.また,長さと面積の関係を調べたところ,弱い正の相関が見られた.さらに,高度と面積の関係を調べたところ,非常に弱い正の相関が見られた.
§5.考察
先行研究では冬季Columnにおいて柱の本数・長さ・高度と面積がそれぞれほぼ比例することが確認されていた.夏季Columnにおいても同様の関係が見られたことから,Columnは夏季と冬季において発生形態に大きな違いはないと考えられる.
夏季Carrotにおいて面積と本数が比例することから,一本当たりの面積が一定であると考えられる.一方で,面積と長さの関係は弱い正の相関関係であったため,夏季Carrotは柱の横幅が一定ではないと考えられる.また、夏季Carrotは夏季Columnと比較して,一本当たりの面積が一定であるが,長さ・太さ・高度はばらつきが大きいと考えられる.
夏季Carrotにおける面積と長さ・高度の相関が弱かったのは,解析したCarrotの母数が少なかったことが影響している可能性があると考えられる.
§6.結論
冬季Columnと同様の関係が夏季Columnにも見られたことからこれらの間には発生形態に大きな違いがないことが分かった.また,夏季Columnは,夏季Carrotと比較して,発生形態が常に同じであるが,夏季Carrotの発生形態は常に同じではないということが分かった.
§7.今後の展望
柱状以外のスプライトではどのような関係があるのかを調べ,柱状スプライトとの比較を行いたい.
スプライトの解析の母数を増やし,より正確な測定を行いたい.
スプライト発生時の環境が,分析結果に影響を及ぼした可能性があるのかを調べたい.
§8.参考文献
József Bór, 2013, Optically perceptible characteristics of sprites observed in Central Europe in 2007-2009
Adachi, T., et al.(2004), Geophys. Res. Lett., doi:10.1029/2003GL019081.
宇都宮櫂・上川敬人,2022,冬季スプライトの形状と気象条件の関係
§9.謝辞
研究に協力していただいたふじのくに環境史ミュージアム客員研究員の青島晃,顧問の榑松宏征,地学部の皆さんに改めて感謝申し上げます.
本校では,これまで高高度発光現象に焦点を当てて研究を行ってきた.先行研究では冬季スプライト柱の面積が本数・長さとそれぞれ比例することが確認されている.またPeak current intensity(kA)は先行研究より電磁パルスと比例関係にあり,スプライトの発生面積は電磁パルスに比例することからPeak current intensity(kA)は面積と比例関係にあると確認できた.
§2.スプライトとは
スプライトは高高度発光現象の一種であり,雷雲地上間放電に伴って発生する,下端は高度約70km,上端は約80㎞の発光現象である.スプライトには様々な形状があることが知られており,本研究では,①Column(柱状), ②Angel(天使の羽のような部分を持つ), ③Carrot(人参の髭のような部分を持つ), ④Wishbone Tree(枝分かれ部分を持つ)の4種類に形状を分類した(Bor,2013).以降スプライト柱をColumnと呼ぶ.
§3.研究方法
3台の高感度CCDカメラでそれぞれ撮影された映像を動体検知ソフトで常時監視することにより,自動観測を行っている.PCがカメラの映像を自動で監視し,スプライトなどの動体を検知した場合,その前後3秒を含めた動画を記録する.また,カメラの視野範囲を基に,スプライトの発生地点を特定する.さらに,スプライトを形状により分類し,面積測定ソフト(lenaraf220b)を用いることでスプライトの面積を求め,本数,長さ,高度,との相関関係を調べる.そのため今回は,複数の種類が同時発生したイベントは除外した.
§4.結果
4-1.形状別面積(Column)
スプライトの本数と面積の関係を調べたところ,正の相関関係が見られた.また,長さと面積の関係を調べたところ,正の相関関係が見られた.さらに,高度と面積の関係を調べたところ,正の相関関係が見られた.
4-2.形状別面積(Carrot)
スプライトの本数と面積の関係を調べたところ,正の相関が見られた.また,長さと面積の関係を調べたところ,弱い正の相関が見られた.さらに,高度と面積の関係を調べたところ,非常に弱い正の相関が見られた.
§5.考察
先行研究では冬季Columnにおいて柱の本数・長さ・高度と面積がそれぞれほぼ比例することが確認されていた.夏季Columnにおいても同様の関係が見られたことから,Columnは夏季と冬季において発生形態に大きな違いはないと考えられる.
夏季Carrotにおいて面積と本数が比例することから,一本当たりの面積が一定であると考えられる.一方で,面積と長さの関係は弱い正の相関関係であったため,夏季Carrotは柱の横幅が一定ではないと考えられる.また、夏季Carrotは夏季Columnと比較して,一本当たりの面積が一定であるが,長さ・太さ・高度はばらつきが大きいと考えられる.
夏季Carrotにおける面積と長さ・高度の相関が弱かったのは,解析したCarrotの母数が少なかったことが影響している可能性があると考えられる.
§6.結論
冬季Columnと同様の関係が夏季Columnにも見られたことからこれらの間には発生形態に大きな違いがないことが分かった.また,夏季Columnは,夏季Carrotと比較して,発生形態が常に同じであるが,夏季Carrotの発生形態は常に同じではないということが分かった.
§7.今後の展望
柱状以外のスプライトではどのような関係があるのかを調べ,柱状スプライトとの比較を行いたい.
スプライトの解析の母数を増やし,より正確な測定を行いたい.
スプライト発生時の環境が,分析結果に影響を及ぼした可能性があるのかを調べたい.
§8.参考文献
József Bór, 2013, Optically perceptible characteristics of sprites observed in Central Europe in 2007-2009
Adachi, T., et al.(2004), Geophys. Res. Lett., doi:10.1029/2003GL019081.
宇都宮櫂・上川敬人,2022,冬季スプライトの形状と気象条件の関係
§9.謝辞
研究に協力していただいたふじのくに環境史ミュージアム客員研究員の青島晃,顧問の榑松宏征,地学部の皆さんに改めて感謝申し上げます.