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[O08-P108] 不知火海を吹く風を探る2
キーワード:海陸風、季節風、不知火海、永尾、不知火現象
1 目的
不知火の研究を通して、風が発生条件の1つであることが分かった。不知火の観測所である永尾において、実際に吹く風について知りたいと思った。しかし、永尾付近には気象観測所がなく風のデータがない。そこで、不知火海全体の風の傾向をつかみ永尾で吹く風を推測することにした。
2 不知火海北部の風向と風速
(1)1日の風
不知火海北部沿岸にある「松島」という地点で、風向と風速に注目し、気象庁のデータにおいて以下の条件に絞りに調べる。
条件 ①天候:降水量が0の日 ②季節:冬(1、2月)
③時間:1時間ごと ④期間:2011~2020年
風向に関しては昼に北東風、夜に南西風が多く、風速に関しては昼に強く、夜に弱くなるということが分かった。風向と風速が一日周期で変わることからこの風は海陸風ではないのかと考えた。
(2)1年の風
不知火海沿岸部で気象庁の観測所がある「三角」、「松島」、「八代」で風向と風速に注目し、気象庁データをもとに調べる。
条件 ①天候:降水量が0の日 ②時間:1ケ月ごと ③期間:2011~2020年
④風速:各地点の中央値で強と弱に区分 ⑤風向:各方向の±45°で16方位を4つに区分
夜は、季節によらず、弱い風が吹いており、海陸風の陸風だと考えられる。昼は、季節によって風向が変わるのでこの風は季節風だと考えられる。よって、夏も冬も海陸風が吹いている。夜は陸風が顕著に表れている。しかし、昼は季節風の影響を大きく受けている。
3 海陸風
海陸風がどこの陸と海の影響を受けて発生しているのか考察を行う。
(1)東西方向について
・仮説1:「海」は「東シナ海」、「陸」は「九州」
・仮説2:「海」は「不知火海」、「陸」は「九州」や「天草諸島」
②仮説の証明
松島と八代では、同じ時間帯で風向が逆になる。よって、仮説2が正しいと考えられる。
(2)南北方向について
・仮説1:「陸」は「宇土半島」、「海」は「不知火海」
・仮説2:「陸」はなく、「海」は「不知火海」と「有明海」
②仮説の証明
宇土半島の北側(御輿来海岸)と南側(永尾海岸)の2地点で、夜と昼の風向を計測する。
宇土半島の北側と南側では、逆向きの風が吹いていることが観測された。よって、宇土半島が「陸」であり、仮説1が正しいと分かる。
4 季節風
季節風は海陸風よりも広域で吹く風である。そのため、不知火海の北に位置する有明海沿岸の地域を含めた5つの観測点において、月ごとに風向の解析を行う。
昼は、広域で風向が同じで、夏は南風、冬は北風が強く吹き、かつ、季節により風向が変化した。よって、昼は季節風の影響を強く受けていることが分かった。
5 永尾の風 仮説 夜に不知火海では、不知火海内部へ向かって弱い陸風が吹き、昼は季節風の影響が強くなるという傾向が分かったので、永尾では夜は弱い北風、昼は季節風が吹くことが考えられる。 仮説の証明(実際の観測) 宇土半島の北側(御輿来海岸)と南側(永尾)の2地点で、夜と昼の風向・風速を、計測することで証明を行う。9~12月に観測を行うと永尾と御輿来海岸で夜は逆向きにのみ吹いており、昼は両地点で北風が吹いている時と逆向きに吹いている時があった。
(3)考察
10回のうち8回は夜に陸風、昼に季節風と同じ風向、2回は昼と夜のどちらも海陸風と同じ風向であった。このことから永尾で吹く風の傾向は不知火海沿岸に位置する地点の傾向と同じであることがわかる。
6 まとめ
●永尾で夜は北風、昼は夏に南風、冬に北風が吹く。
● 不知火海沿岸の傾向として夜は陸風が顕著であるが、昼は季節風の影響を受けやすいことが分かった。
● 気象観測所がない永尾でも、ほかの地点と同様の傾向を示す。
不知火の研究を通して、風が発生条件の1つであることが分かった。不知火の観測所である永尾において、実際に吹く風について知りたいと思った。しかし、永尾付近には気象観測所がなく風のデータがない。そこで、不知火海全体の風の傾向をつかみ永尾で吹く風を推測することにした。
2 不知火海北部の風向と風速
(1)1日の風
不知火海北部沿岸にある「松島」という地点で、風向と風速に注目し、気象庁のデータにおいて以下の条件に絞りに調べる。
条件 ①天候:降水量が0の日 ②季節:冬(1、2月)
③時間:1時間ごと ④期間:2011~2020年
風向に関しては昼に北東風、夜に南西風が多く、風速に関しては昼に強く、夜に弱くなるということが分かった。風向と風速が一日周期で変わることからこの風は海陸風ではないのかと考えた。
(2)1年の風
不知火海沿岸部で気象庁の観測所がある「三角」、「松島」、「八代」で風向と風速に注目し、気象庁データをもとに調べる。
条件 ①天候:降水量が0の日 ②時間:1ケ月ごと ③期間:2011~2020年
④風速:各地点の中央値で強と弱に区分 ⑤風向:各方向の±45°で16方位を4つに区分
夜は、季節によらず、弱い風が吹いており、海陸風の陸風だと考えられる。昼は、季節によって風向が変わるのでこの風は季節風だと考えられる。よって、夏も冬も海陸風が吹いている。夜は陸風が顕著に表れている。しかし、昼は季節風の影響を大きく受けている。
3 海陸風
海陸風がどこの陸と海の影響を受けて発生しているのか考察を行う。
(1)東西方向について
・仮説1:「海」は「東シナ海」、「陸」は「九州」
・仮説2:「海」は「不知火海」、「陸」は「九州」や「天草諸島」
②仮説の証明
松島と八代では、同じ時間帯で風向が逆になる。よって、仮説2が正しいと考えられる。
(2)南北方向について
・仮説1:「陸」は「宇土半島」、「海」は「不知火海」
・仮説2:「陸」はなく、「海」は「不知火海」と「有明海」
②仮説の証明
宇土半島の北側(御輿来海岸)と南側(永尾海岸)の2地点で、夜と昼の風向を計測する。
宇土半島の北側と南側では、逆向きの風が吹いていることが観測された。よって、宇土半島が「陸」であり、仮説1が正しいと分かる。
4 季節風
季節風は海陸風よりも広域で吹く風である。そのため、不知火海の北に位置する有明海沿岸の地域を含めた5つの観測点において、月ごとに風向の解析を行う。
昼は、広域で風向が同じで、夏は南風、冬は北風が強く吹き、かつ、季節により風向が変化した。よって、昼は季節風の影響を強く受けていることが分かった。
5 永尾の風 仮説 夜に不知火海では、不知火海内部へ向かって弱い陸風が吹き、昼は季節風の影響が強くなるという傾向が分かったので、永尾では夜は弱い北風、昼は季節風が吹くことが考えられる。 仮説の証明(実際の観測) 宇土半島の北側(御輿来海岸)と南側(永尾)の2地点で、夜と昼の風向・風速を、計測することで証明を行う。9~12月に観測を行うと永尾と御輿来海岸で夜は逆向きにのみ吹いており、昼は両地点で北風が吹いている時と逆向きに吹いている時があった。
(3)考察
10回のうち8回は夜に陸風、昼に季節風と同じ風向、2回は昼と夜のどちらも海陸風と同じ風向であった。このことから永尾で吹く風の傾向は不知火海沿岸に位置する地点の傾向と同じであることがわかる。
6 まとめ
●永尾で夜は北風、昼は夏に南風、冬に北風が吹く。
● 不知火海沿岸の傾向として夜は陸風が顕著であるが、昼は季節風の影響を受けやすいことが分かった。
● 気象観測所がない永尾でも、ほかの地点と同様の傾向を示す。