日本地球惑星科学連合2024年大会

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[O-08] 高校生ポスター発表

2024年5月26日(日) 13:45 〜 15:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 6ホール)

コンビーナ:原 辰彦(建築研究所国際地震工学センター)、道林 克禎(名古屋大学 大学院環境学研究科 地球惑星科学系 岩石鉱物学研究室)、久利 美和(文部科学省)、紺屋 恵子(海洋研究開発機構)

13:45 〜 15:15

[O08-P28] 2020年7月8日 岐阜県白川町で発生した溢水

*今井 幹太1 (1.岐阜県立加茂高等学校)

キーワード:溢水、飛騨川、白川、バックウォーター現象、河川の狭窄部

背景
 岐阜県加茂郡白川町では2020年、2021年に本流の飛騨川と支流の白川の合流地点において溢水が発生し、周囲を浸水させた。2018年、2020年においても増水があり、氾濫寸前の状態となった。2018年の増水、2020年の溢水では白川流域の降水が飛騨川流域の降水に対して少なく、水位上昇の原因は合流地点において飛騨川に白川の水が流入することができず滞水する「バックウォーター現象」によるものだとされている。

目的
 増水の程度を決定する因子として、各流域の降水量と溢水した付近の地形が考えられた。これらについて、どのような条件において増水が発生しやすいか調査することを目的とした。

手法
 国土交通省HP水門水質データベース、気象庁HP過去の気象データより飛騨川流域と白川流域の降水量、地理院地図より周辺地域の断面図を作成した。これらの2018年、2020年、2021年の降水量と水位のデータをグラフ化し周辺地域の地形的特徴を重ね合わせ、水位上昇の原因やプロセスを考察した。

結果
 周辺地域の地形的特徴として、飛騨川下流部には飛水峡と呼ばれる狭窄部が続いており、合流地点においても白川側で川幅が狭くなっているため、それぞれの狭窄部において水が滞水しやすくなっていることが分かった(図1)。
 2018年は7月4日から8日にかけ降水があり、6日までは飛騨川、白川の各地域に降水量の違いが見られず、2地点の水位上昇は増水直前と比べて緩やかだった。7日22時から8日4時にかけ飛騨川流域で豪雨となり、飛騨川流域の8か所で6時間総雨量が100㎜を超えていた。増水前2日間の降雨によって白川口の水位は1 mから4 mに上昇しており、8日の2時から5時にかけて水位が急上昇し、10 m越えの水位を10時まで保ち、その後下降していった(図2)。
 2020年は7月6日から8日にかけての総雨量が上呂観測所で570㎜、白川口観測所で299㎜となり、飛騨川上流部での降雨が多かった。この間上呂の水位は2018と同程度の6 mが最大水位となったのに対し、白川口の水位は白川流域でまとまった降雨があった数時間後に上昇してから下降することを繰り返し、8日0時から水位が上昇し9時には11.5 mとなり溢水となった。2020年の増水は2018年のものと比べ最高水位に至るまでの上昇速度が遅かった。また、溢水前の8日8時には白川、東白川観測所で時間雨量が41㎜、31㎜となった(図3)。
 2021年は8月12日から15日にかけて岐阜県全域で大雨となり、この間の上呂、白川口の各観測所の総雨量は422㎜、346㎜となった。2018年、2020年と比較して時間当たりの降水量は大きかった。上呂、白川の水位は14日9時頃から上昇を始め、両地点ともに同日17時から15日7時頃まで小刻みに増減しながら上呂で6 m以上、白川で8 m以上を維持し、特に白川口では14日23時に11.3 mとなり溢水した(図4)。
 2018年、2020年、2021年のほかに2011年9月19日から21日にかけても増水が確認されており、この年は白川流域で豪雨となり白川口で20日16時に時間雨量58㎜を記録し白川口の水位も上昇していたが溢水にはならなかった(図5)。

考察
 溢水が発生した2020年、2021年と発生しなかった2011年、2018年の状況を比較すると、発生した年は飛騨川流域において継続的な降雨があったことに加えて、白川流域の降水も2020年は瞬間的、2021年は継続的と違いはあったものの多量にあり、それに対して2018年は白川流域で、2011年は飛騨川流域の降水量が少なかった。また、飛騨川、白川両河川において溢水発生地点付近に狭窄部が存在しており、2020年と2021年は飛騨川流域で降雨があり飛水峡で流下が阻まれることで合流地点付近において滞水して水位が上昇した。この状態に白川からの多量の流入があったため、合流地点直前の狭窄部と飛騨川の増水に阻まれ、「バックウォーター現象」となり、水位が上昇しやすくなったものと推定される。

参考文献
岐阜県,清流の国ぎふ防災・減災センター(2020):平成30年7月豪雨災害と令和2年7月豪雨災害の気象状況の比較
岐阜県,清流の国ぎふ防災・減災センター(2020):令和2年7月豪雨災害検証報告書
岐阜県,清流の国ぎふ防災・減災センター(2021):令和3年8月11日からの大雨の概要
岐阜県白川町(2020):白川町7/8豪雨災害まとめ
国土交通省・気象庁:過去の気象データ,https://www.data.jma.go.jp/stats/etrn/index.php/
 (2023.7.21アクセス)
国土交通省・国土地理院:国土地理院地図,https://www.gsi.go.jp/(2023.7.21アクセス)
国土交通省:水文水質データべース,http://www1.river.go.jp/(2023.7.21アクセス)
下舵秀則・遠藤彰博・世良賢司・山下大輔・家木光晴(2021):飛騨川周辺における令和2年7月豪雨災害調査報告,全地連「技術フォーラム2021」大阪