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[O08-P34] 振動に対する構造物の揺動と地中埋設部の深さの相関
キーワード:地震、振動数、埋設深度
1. 背景と目的
日本は災害大国であり,地震に対する研究も盛んに行われている。宮川らは,1階から4階まで区切った構造物を作り,その構造物の最深部を揺らし,階層ごとの揺れの大きさを報告している1)。また,久保島らは,木杭を土中に埋設した状態のヤング係数の値は,片末端を完全に固定した理論値とは異なり,半剛接合状態と仮定した方が適切であると報告している2),3)。すなわち,棒状の構造物を地中部に埋設した場合の力学的特性は埋設部分の影響を受けることが示唆される。そこで我々は,建築物を地中に埋設して埋設深度を変化させた場合,地震を模した振動に対する揺動挙動がどのように影響をうけるかに着目して研究を行った。
2. 実験方法と結果
(1) 実験Ⅰ
木の丸棒4本(直径6mm)を,一辺100mmの正方形底面をもつ直方体形状になるようプラスチック段ボール2枚を用いて固定し建物のモデルを作製した。BB弾で満たした容器を地盤に見立て,建物モデルの地上部の長さが600mmになるように下端をBB弾層に埋めて鉛直に立て,強力振とう機TS-10N(タイテック(株)製)で振動させた。【図1】のように実験装置の後方2ヵ所に定規を固定して,建物の上部と下部の揺れ幅を動画から読み取り,(上部の揺れ幅)-(下部の揺れ幅)を「上下の揺れの差」として傾きの指標とした。地上部長は600mmとし,地中部の長さ(埋設深度D(mm))を100~300mmの範囲の3つの条件で,振動数は2つの条件で検討した。
(結果Ⅰ)
【図2(a)】【図2(b)】に埋設深度に対する上下の揺れの差を,振動数1.7Hzと2.3Hzで測定した結果を示した。ばらつきは見られるものの,埋設深度200(mm)付近で極大値をとることがわかった。1.7Hzと2.3Hzの場合を比較すると,振動数の大きい2.3Hzの方が揺れの差は大きいことがわかる。
(2) 実験Ⅱ
様々な埋設深度で,様々な振動数における建物上部の揺れ幅の変化を確かめるために以下の実験を行った。距離センサー(DataHarvest社製)によって揺れ幅が観測できるように,実験Ⅰで使用した装置上部のプラスチック段ボールに反射板を鉛直に取り付けたものを用いた。化学スタンドに距離センサーを設置し,20秒間振動させ,得られた距離変化の記録から揺れ幅の平均を測定した。地上部の長さを600mmとし,埋設深度を100~300mmの6つの条件,振動数を1.8Hz~2.6Hzの6つの条件で測定した。
(結果Ⅱ)
結果を【図3(a)】と【図3(b)】に示す。【図3(a)】より,埋設深度を大きくするにつれ振動数による揺れ幅は50~70mmの範囲で一定になる傾向が見られる。また,埋設深度が比較的浅い100mm,120mmでは振動数が大きくなると揺れ幅が顕著に大きくなることがわかる。【図3(b)】からは,振動数が大きくなると,埋設深度が小さいほど揺れ幅が大きくなる傾向が見られる。
3. 考察
実験結果Ⅰより建造物の傾きが D=200 (mm) のときに極大となる為,上下の揺れの差は地上部の長さのみで決まらないことがわかる。これは,建物モデルの共振振動数が存在し,埋設部分の可動性が埋設深度により変化することで共振振動数が変化するのではないかと考えられる。また,実験結果Ⅱより,振動数の値が2.1HzまではDの値に関わらず揺れ幅はほぼ等しいが,2.3Hzより大きい振動数においては,Dの値が小さくなるにつれて顕著に揺れ幅が増幅する傾向が観測された。これらは地盤として見立てたBB弾が揺れにより上部の流動的な層と下部の静的な層の二層に分かれることが関係しているのではないかと考えられる(なお,流動層の厚みは振動数に依存し,2.1Hz以上の値になると顕著に現れることが動画から読み取れる)。流動層の形成により,棒の揺れの起点が表層から深い方向に移動し,設定していた地上部長さよりも実際の振動している長さが長くなるのではないかと考えられる。すなわち,地上部と埋設部の棒の長さの比は,振動数を増加させると地上部の比が見かけ上増加することが今回の実験のような挙動をもたらしているのではないかと考えられる。
4. 参考文献
1)宮川ら(滋賀県立膳所高校 物理地学班), 第42回全国高等学校総合文化祭自然科学部門研究発表 https://www.milive.jp/live/18sobun/p111 参照日:2024年4月10日
2)久保島吉貴, 加藤英雄, 原忠, 園田里見,2020,土中埋設した木材の振動現象(その1),第70回日本木材学会大会要旨集,C17-P1-13
3)加藤英雄, 久保島吉貴, 園田里見, 園田里見,2024,傾斜計による木杭のヤング係数の測定方法に関する検討,土木学会論文集, Vol.79, No.28, ID:22-28001
日本は災害大国であり,地震に対する研究も盛んに行われている。宮川らは,1階から4階まで区切った構造物を作り,その構造物の最深部を揺らし,階層ごとの揺れの大きさを報告している1)。また,久保島らは,木杭を土中に埋設した状態のヤング係数の値は,片末端を完全に固定した理論値とは異なり,半剛接合状態と仮定した方が適切であると報告している2),3)。すなわち,棒状の構造物を地中部に埋設した場合の力学的特性は埋設部分の影響を受けることが示唆される。そこで我々は,建築物を地中に埋設して埋設深度を変化させた場合,地震を模した振動に対する揺動挙動がどのように影響をうけるかに着目して研究を行った。
2. 実験方法と結果
(1) 実験Ⅰ
木の丸棒4本(直径6mm)を,一辺100mmの正方形底面をもつ直方体形状になるようプラスチック段ボール2枚を用いて固定し建物のモデルを作製した。BB弾で満たした容器を地盤に見立て,建物モデルの地上部の長さが600mmになるように下端をBB弾層に埋めて鉛直に立て,強力振とう機TS-10N(タイテック(株)製)で振動させた。【図1】のように実験装置の後方2ヵ所に定規を固定して,建物の上部と下部の揺れ幅を動画から読み取り,(上部の揺れ幅)-(下部の揺れ幅)を「上下の揺れの差」として傾きの指標とした。地上部長は600mmとし,地中部の長さ(埋設深度D(mm))を100~300mmの範囲の3つの条件で,振動数は2つの条件で検討した。
(結果Ⅰ)
【図2(a)】【図2(b)】に埋設深度に対する上下の揺れの差を,振動数1.7Hzと2.3Hzで測定した結果を示した。ばらつきは見られるものの,埋設深度200(mm)付近で極大値をとることがわかった。1.7Hzと2.3Hzの場合を比較すると,振動数の大きい2.3Hzの方が揺れの差は大きいことがわかる。
(2) 実験Ⅱ
様々な埋設深度で,様々な振動数における建物上部の揺れ幅の変化を確かめるために以下の実験を行った。距離センサー(DataHarvest社製)によって揺れ幅が観測できるように,実験Ⅰで使用した装置上部のプラスチック段ボールに反射板を鉛直に取り付けたものを用いた。化学スタンドに距離センサーを設置し,20秒間振動させ,得られた距離変化の記録から揺れ幅の平均を測定した。地上部の長さを600mmとし,埋設深度を100~300mmの6つの条件,振動数を1.8Hz~2.6Hzの6つの条件で測定した。
(結果Ⅱ)
結果を【図3(a)】と【図3(b)】に示す。【図3(a)】より,埋設深度を大きくするにつれ振動数による揺れ幅は50~70mmの範囲で一定になる傾向が見られる。また,埋設深度が比較的浅い100mm,120mmでは振動数が大きくなると揺れ幅が顕著に大きくなることがわかる。【図3(b)】からは,振動数が大きくなると,埋設深度が小さいほど揺れ幅が大きくなる傾向が見られる。
3. 考察
実験結果Ⅰより建造物の傾きが D=200 (mm) のときに極大となる為,上下の揺れの差は地上部の長さのみで決まらないことがわかる。これは,建物モデルの共振振動数が存在し,埋設部分の可動性が埋設深度により変化することで共振振動数が変化するのではないかと考えられる。また,実験結果Ⅱより,振動数の値が2.1HzまではDの値に関わらず揺れ幅はほぼ等しいが,2.3Hzより大きい振動数においては,Dの値が小さくなるにつれて顕著に揺れ幅が増幅する傾向が観測された。これらは地盤として見立てたBB弾が揺れにより上部の流動的な層と下部の静的な層の二層に分かれることが関係しているのではないかと考えられる(なお,流動層の厚みは振動数に依存し,2.1Hz以上の値になると顕著に現れることが動画から読み取れる)。流動層の形成により,棒の揺れの起点が表層から深い方向に移動し,設定していた地上部長さよりも実際の振動している長さが長くなるのではないかと考えられる。すなわち,地上部と埋設部の棒の長さの比は,振動数を増加させると地上部の比が見かけ上増加することが今回の実験のような挙動をもたらしているのではないかと考えられる。
4. 参考文献
1)宮川ら(滋賀県立膳所高校 物理地学班), 第42回全国高等学校総合文化祭自然科学部門研究発表 https://www.milive.jp/live/18sobun/p111 参照日:2024年4月10日
2)久保島吉貴, 加藤英雄, 原忠, 園田里見,2020,土中埋設した木材の振動現象(その1),第70回日本木材学会大会要旨集,C17-P1-13
3)加藤英雄, 久保島吉貴, 園田里見, 園田里見,2024,傾斜計による木杭のヤング係数の測定方法に関する検討,土木学会論文集, Vol.79, No.28, ID:22-28001