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[O08-P35] 京都府北部の主伐期を迎えた森林を利用した循環型システムの構築-京都府立丹後海と星の見える丘公園における測量結果による推定
キーワード:スギ・ヒノキ混交林、森林管理
1. 背景と目的
現在日本では森林の放置による土砂災害や倒壊の恐れが問題となっている。そこで,京都府立丹後海と星の見える丘公園(以下うみほし公園と称す。)では,園内の森林整備のために主伐期を迎えた木を伐採し,それで作った薪と太陽熱を利用して,お風呂を沸かすという循環型システムを構築している。本研究では,うみほし公園内の森林のある一定地域における材積を求めて,うみほし公園における薪の年間消費量が園内の材積のうちどのくらいを占めるのかを明らかにすることを試みた。
2. 調査地点
今回調査地点として選んだのは,「京都府立丹後海と星の見える丘公園」(通称:丹後エコパーク)である。京都府宮津市字日置,里波見地内にある(座標:35°37’16.64”N , 135°13’59.64”E (基準)※1 標高:120m (基準)※1)。公園面積は142.9 haである。水系は波見川,植生についてはそのほとんどが主伐期を迎えた植林地(スギ・ヒノキ・コナラ)である。また,母岩は礫岩※2である。多種多様な動植物が生息する豊かな自然環境を良好に保全・育成するとともに,太陽熱やバイオマスボイラー等,環境技術を駆使した施設を拠点とし,地球環境と共生する未来のライフスタイルの学びの場とすることを目的とした京都府の設置した都市公園である。今回の調査領域はゲストハウス(宿泊)棟 北北西地点を選んだ。
※1 GPSによる実測値 ※2 地質調査総合センター
3. 測量と計算方法
胸高直径の測定胸高直径は,地面から約1.2mの位置で幹の周囲長を測定して算出した。樹高については,測桿を使い測定した。長さが足りない場合はおおよその高さとした。林分材積については,久冨の報告1)を参考とし,以下の式に基づき算出した。
材積(体積) V=形数(f)×胸高断面積(g)×樹高(h)
針葉樹の気乾比重はスギとヒノキの平均をとり,広葉樹はコナラのものを用いた。調査領域内の木材については,以下の式に基づき算出し,有効数字は三桁とした。
調査領域の木材 (kg)=林分材積 (m3/ha) × 面積(ha) × 気乾比重 (kg/m3)
4. 結果
林分材積の計算結果を Table 3, Table 4に示す。調査・計算範囲は Fig.1 に示した範囲である。胸高断面積合計および林分材積は 1ha あたりの値として示している。なお,計算に当たって,胸高係数は木1本を円錐とみなし1/3とした。また,比重としてTable 1の値を針葉樹,広葉樹で平均し(Table 2に示す),この値を用いて計算を行った。
5. 考察
今回の調査領域は一般的な森林よりも木が密に林立しており,また木の直径も一般よりも大きかった。結果から,既存のうみほし公園での循環型システムでは,調査領域の木すべてを使用することでボイラーを少なくとも112日稼働することができることがわかった。また公園全体の木すべてを稼働用燃料にすると少なくとも307年稼働することが可能だということもわかった。また,うみほし公園では植林も併せて行っていることに加え,木材を運搬するときには機械を使わず,人の手のみで運搬しているので,ウッドマイレージを0として考えることができる。そのためこのシステムでは実質的にカーボンニュートラルが達成されていると考えられ,ウッドマイレージを考慮する必要のある他の循環型システムが構築された森林に比べ,モデル化がたやすい。しかし,主伐期を迎えてしまった森林を処理するという観点に着目すると,今回のうみほし公園のような,2基のボイラーの稼働用燃料としての利用のみでは森林の処理が追いつかない。そのため同様のボイラーを何基稼働できるのかを検証し,一年間でどれほどの燃料の供給が可能なのか検証した。結果は仮に15年で公園全体の木を使い切ろうとすると今現在うみほし公園で稼働しているボイラーを40機程運用できることがわかった。またこの場合の一年間での燃料の使用量は606トンである。ただ一年間でどれほど燃料が確保できるのかは調べ切れていない。さらに,同様の循環システムを他の主伐期を迎えた森林でも構築することを提案する。また,すでに主伐期を迎えている本校の校有林についても,数年後には対策を講じる必要がある。したがって,今後の展望として,うみほし公園をモデルとして本校校有林に適した循環型システムの構築を目指したい。また,循環システムを構築した森林をどのようなスパンで運用していくかについても検証を行う。
5. 参考文献
1) 久冨蒼天, 2023, 京都府立嵯峨野高等学校スーパーサイエンスラボ研究報告集2023, p.10-11.
現在日本では森林の放置による土砂災害や倒壊の恐れが問題となっている。そこで,京都府立丹後海と星の見える丘公園(以下うみほし公園と称す。)では,園内の森林整備のために主伐期を迎えた木を伐採し,それで作った薪と太陽熱を利用して,お風呂を沸かすという循環型システムを構築している。本研究では,うみほし公園内の森林のある一定地域における材積を求めて,うみほし公園における薪の年間消費量が園内の材積のうちどのくらいを占めるのかを明らかにすることを試みた。
2. 調査地点
今回調査地点として選んだのは,「京都府立丹後海と星の見える丘公園」(通称:丹後エコパーク)である。京都府宮津市字日置,里波見地内にある(座標:35°37’16.64”N , 135°13’59.64”E (基準)※1 標高:120m (基準)※1)。公園面積は142.9 haである。水系は波見川,植生についてはそのほとんどが主伐期を迎えた植林地(スギ・ヒノキ・コナラ)である。また,母岩は礫岩※2である。多種多様な動植物が生息する豊かな自然環境を良好に保全・育成するとともに,太陽熱やバイオマスボイラー等,環境技術を駆使した施設を拠点とし,地球環境と共生する未来のライフスタイルの学びの場とすることを目的とした京都府の設置した都市公園である。今回の調査領域はゲストハウス(宿泊)棟 北北西地点を選んだ。
※1 GPSによる実測値 ※2 地質調査総合センター
3. 測量と計算方法
胸高直径の測定胸高直径は,地面から約1.2mの位置で幹の周囲長を測定して算出した。樹高については,測桿を使い測定した。長さが足りない場合はおおよその高さとした。林分材積については,久冨の報告1)を参考とし,以下の式に基づき算出した。
材積(体積) V=形数(f)×胸高断面積(g)×樹高(h)
針葉樹の気乾比重はスギとヒノキの平均をとり,広葉樹はコナラのものを用いた。調査領域内の木材については,以下の式に基づき算出し,有効数字は三桁とした。
調査領域の木材 (kg)=林分材積 (m3/ha) × 面積(ha) × 気乾比重 (kg/m3)
4. 結果
林分材積の計算結果を Table 3, Table 4に示す。調査・計算範囲は Fig.1 に示した範囲である。胸高断面積合計および林分材積は 1ha あたりの値として示している。なお,計算に当たって,胸高係数は木1本を円錐とみなし1/3とした。また,比重としてTable 1の値を針葉樹,広葉樹で平均し(Table 2に示す),この値を用いて計算を行った。
5. 考察
今回の調査領域は一般的な森林よりも木が密に林立しており,また木の直径も一般よりも大きかった。結果から,既存のうみほし公園での循環型システムでは,調査領域の木すべてを使用することでボイラーを少なくとも112日稼働することができることがわかった。また公園全体の木すべてを稼働用燃料にすると少なくとも307年稼働することが可能だということもわかった。また,うみほし公園では植林も併せて行っていることに加え,木材を運搬するときには機械を使わず,人の手のみで運搬しているので,ウッドマイレージを0として考えることができる。そのためこのシステムでは実質的にカーボンニュートラルが達成されていると考えられ,ウッドマイレージを考慮する必要のある他の循環型システムが構築された森林に比べ,モデル化がたやすい。しかし,主伐期を迎えてしまった森林を処理するという観点に着目すると,今回のうみほし公園のような,2基のボイラーの稼働用燃料としての利用のみでは森林の処理が追いつかない。そのため同様のボイラーを何基稼働できるのかを検証し,一年間でどれほどの燃料の供給が可能なのか検証した。結果は仮に15年で公園全体の木を使い切ろうとすると今現在うみほし公園で稼働しているボイラーを40機程運用できることがわかった。またこの場合の一年間での燃料の使用量は606トンである。ただ一年間でどれほど燃料が確保できるのかは調べ切れていない。さらに,同様の循環システムを他の主伐期を迎えた森林でも構築することを提案する。また,すでに主伐期を迎えている本校の校有林についても,数年後には対策を講じる必要がある。したがって,今後の展望として,うみほし公園をモデルとして本校校有林に適した循環型システムの構築を目指したい。また,循環システムを構築した森林をどのようなスパンで運用していくかについても検証を行う。
5. 参考文献
1) 久冨蒼天, 2023, 京都府立嵯峨野高等学校スーパーサイエンスラボ研究報告集2023, p.10-11.