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[O08-P38] ウィルソン効果による太陽黒点の深度考察 Ⅱ
キーワード:ウィルソン効果、黒点の深度
〈目的〉
先行研究において、ウィルソン効果による太陽黒点の深度について研究されている。そこで我々は、最新の国立天文台のデータを用い、現代の手法で再び研究することで、新たな角度から太陽黒点の深度をとらえることを目指した。
〈要旨〉
太陽黒点のウィルソン効果に基づき、太陽黒点の大きさと深さには正の相関がある、という仮説を立てた。そして、黒点の大きさとウィルソン効果により求めた黒点の深度を考察した(黒点の深度は太陽の可視光球面を基準として求めている)。その結果、黒点の大きさと黒点の深度には弱いながら正の相関関係があると得られた。また、磁気と黒点の深度の関係性を調べたところ、黒点の深度が大きいほど磁気が強いという結果も得られた。磁気測定に用いた太陽観測衛星SDOの画像の磁気が視線方向のデータであること、磁気測定に用いたデータ数が少ないことから、この関係性はさらなる検証が必要である。
〈はじめに〉
ウィルソン効果とは、黒点が自転運動によって太陽周縁部に近づく際に太陽黒点の暗部が凹んで見える現象のことである(図1)
〈測定方法〉
画像処理ソフトマカリ上で各黒点の距離等を計測した後、以下の式を用いExcel上で黒点の深度を算出した。なお測定する黒点は同心円であると仮定しており、図2のような、赤矢印で示されている視線方向からの角度を定義した。
θA+θD=θB+θC
ここから、黒点の深度を変数としておくことで黒点の深度を求めることが可能である。
使用画像:前研究では、国立天文台より引用している画像(Gバンド画像)の解像度が低い、測定可能な黒点データの数が少ないという問題が発生したため、本研究では画像解像度の異なるデータ(スケッチ画像等)を合算してグラフを算出した。
〈仮説〉
太陽黒点が大きいほどウィルソン効果は強く表れる、つまり黒点(半暗部)が大きいほど深度が大きくなる。
〈測定結果〉
結果:算出したグラフより黒点の大きさとウィルソン効果の強さには弱い正の相関関係があるといえる。(図3)
〈考察〉
黒点が大きいほど磁気が強くなり深度が大きくなると考察し、極端な深度が表れている黒点を選出、黒点の深度が浅いものと深いものとで比較して磁気との関係の考察を試みた。
磁気の比較には、SDO画像を使用した。SDO画像は、人工衛星SDOがHMI(日震磁気撮像装置)で捉えた太陽の磁場画像であり、白いもしくは黒いほど磁気が強いといえる。
〈深度比較〉
図4(2023/7/10、深度:47km):色が限りなく中間色で、ほぼ認識不可→磁気が弱い
図5(2022/7/7、深度:3909km):色が暗い部分が確認できる→磁気が強い
磁気が強いほど深いと思われたが、別画像では深い黒点も中間色に近く磁気が弱いという結果になった。これは、SDO画像が視線方向のみであること,測定に用いた黒点に、図4から確認できるように、太陽中心部付近に位置しているものが含まれていたために誤差が大きくなったことに関係していると考えられる。
〈黒点の発達における追尾〉
図6から図7のように黒点が発達していくにつれ深度は浅くなっている(図6;2023/11/11、深度:1319km、
図7;2023/11/12、深度:850km)。しかし、西側にある黒点群が測定に何らかの影響を与えている可能性があるため、黒点の深さと磁気の関係性は言い切れない。
以上より、磁気と黒点の大きさに関係性はないと考えられるが、画像の特性(SDO画像で示される磁場が視線方向のみであること)からこの結果は言い切れない。
〈SDO画像における同一黒点の東西比較〉
磁気の強さを、SDO画像上でカウント値(輝度)ととらえ、各黒点のカウント値から同X軸の赤道付近のカウント値をさし引いた。これによって、東西の自転による磁気への影響をキャンセルし、各黒点の磁気を比較した(図8、10)。カウント値が高いほど磁気が強いといえる。
結果:輝度は、西側黒点(2024/1/21、深度:1334km)のほうが東側黒点(2024/1/13、深度:783km)より約20カウント輝度が高い(図9,11)
結論:黒点の深度が大きいほど、磁気が強い
なお、カウント値は画像から相対的に出した数値であるため、磁気の単位では表していない。
〈今後の展望〉
・SDO画像は視線方向の磁場のみ示される。そのため画像補正によって全方向の磁場の基準を統一する。
・角度90°付近(太陽周縁部付近)の黒点が同心円か否かの明確化の方法を探る。
・現在の磁気の測定方法は相対的な磁気の強さしか判明しないため、絶対的な磁気の強さを求める方法を検討する。
・東西比較においては現状のサンプル数が一つしかないため、数を増やし、東西での関係性をより精査していく。
新しいデータは現在解析を行っているため、当日発表する予定である。
〈参考文献、使用ソフト〉
TH.PROKAKIS 「The depth of sunspots」
国立天文台 太陽観測科学プロジェクト 三鷹太陽地上観測 https://solarwww.mtk.nao.ac.jp/jp/solarobs.html
国立米子工業高等専門学校 「小望遠鏡を用いた太陽黒点のウィルソン効果の検出」
すばる画像処理ソフト マカリ Excel 理科年表2022
SDO | Solar Dynamics Observatory
https://sdo.gsfc.nasa.gov/
先行研究において、ウィルソン効果による太陽黒点の深度について研究されている。そこで我々は、最新の国立天文台のデータを用い、現代の手法で再び研究することで、新たな角度から太陽黒点の深度をとらえることを目指した。
〈要旨〉
太陽黒点のウィルソン効果に基づき、太陽黒点の大きさと深さには正の相関がある、という仮説を立てた。そして、黒点の大きさとウィルソン効果により求めた黒点の深度を考察した(黒点の深度は太陽の可視光球面を基準として求めている)。その結果、黒点の大きさと黒点の深度には弱いながら正の相関関係があると得られた。また、磁気と黒点の深度の関係性を調べたところ、黒点の深度が大きいほど磁気が強いという結果も得られた。磁気測定に用いた太陽観測衛星SDOの画像の磁気が視線方向のデータであること、磁気測定に用いたデータ数が少ないことから、この関係性はさらなる検証が必要である。
〈はじめに〉
ウィルソン効果とは、黒点が自転運動によって太陽周縁部に近づく際に太陽黒点の暗部が凹んで見える現象のことである(図1)
〈測定方法〉
画像処理ソフトマカリ上で各黒点の距離等を計測した後、以下の式を用いExcel上で黒点の深度を算出した。なお測定する黒点は同心円であると仮定しており、図2のような、赤矢印で示されている視線方向からの角度を定義した。
θA+θD=θB+θC
ここから、黒点の深度を変数としておくことで黒点の深度を求めることが可能である。
使用画像:前研究では、国立天文台より引用している画像(Gバンド画像)の解像度が低い、測定可能な黒点データの数が少ないという問題が発生したため、本研究では画像解像度の異なるデータ(スケッチ画像等)を合算してグラフを算出した。
〈仮説〉
太陽黒点が大きいほどウィルソン効果は強く表れる、つまり黒点(半暗部)が大きいほど深度が大きくなる。
〈測定結果〉
結果:算出したグラフより黒点の大きさとウィルソン効果の強さには弱い正の相関関係があるといえる。(図3)
〈考察〉
黒点が大きいほど磁気が強くなり深度が大きくなると考察し、極端な深度が表れている黒点を選出、黒点の深度が浅いものと深いものとで比較して磁気との関係の考察を試みた。
磁気の比較には、SDO画像を使用した。SDO画像は、人工衛星SDOがHMI(日震磁気撮像装置)で捉えた太陽の磁場画像であり、白いもしくは黒いほど磁気が強いといえる。
〈深度比較〉
図4(2023/7/10、深度:47km):色が限りなく中間色で、ほぼ認識不可→磁気が弱い
図5(2022/7/7、深度:3909km):色が暗い部分が確認できる→磁気が強い
磁気が強いほど深いと思われたが、別画像では深い黒点も中間色に近く磁気が弱いという結果になった。これは、SDO画像が視線方向のみであること,測定に用いた黒点に、図4から確認できるように、太陽中心部付近に位置しているものが含まれていたために誤差が大きくなったことに関係していると考えられる。
〈黒点の発達における追尾〉
図6から図7のように黒点が発達していくにつれ深度は浅くなっている(図6;2023/11/11、深度:1319km、
図7;2023/11/12、深度:850km)。しかし、西側にある黒点群が測定に何らかの影響を与えている可能性があるため、黒点の深さと磁気の関係性は言い切れない。
以上より、磁気と黒点の大きさに関係性はないと考えられるが、画像の特性(SDO画像で示される磁場が視線方向のみであること)からこの結果は言い切れない。
〈SDO画像における同一黒点の東西比較〉
磁気の強さを、SDO画像上でカウント値(輝度)ととらえ、各黒点のカウント値から同X軸の赤道付近のカウント値をさし引いた。これによって、東西の自転による磁気への影響をキャンセルし、各黒点の磁気を比較した(図8、10)。カウント値が高いほど磁気が強いといえる。
結果:輝度は、西側黒点(2024/1/21、深度:1334km)のほうが東側黒点(2024/1/13、深度:783km)より約20カウント輝度が高い(図9,11)
結論:黒点の深度が大きいほど、磁気が強い
なお、カウント値は画像から相対的に出した数値であるため、磁気の単位では表していない。
〈今後の展望〉
・SDO画像は視線方向の磁場のみ示される。そのため画像補正によって全方向の磁場の基準を統一する。
・角度90°付近(太陽周縁部付近)の黒点が同心円か否かの明確化の方法を探る。
・現在の磁気の測定方法は相対的な磁気の強さしか判明しないため、絶対的な磁気の強さを求める方法を検討する。
・東西比較においては現状のサンプル数が一つしかないため、数を増やし、東西での関係性をより精査していく。
新しいデータは現在解析を行っているため、当日発表する予定である。
〈参考文献、使用ソフト〉
TH.PROKAKIS 「The depth of sunspots」
国立天文台 太陽観測科学プロジェクト 三鷹太陽地上観測 https://solarwww.mtk.nao.ac.jp/jp/solarobs.html
国立米子工業高等専門学校 「小望遠鏡を用いた太陽黒点のウィルソン効果の検出」
すばる画像処理ソフト マカリ Excel 理科年表2022
SDO | Solar Dynamics Observatory
https://sdo.gsfc.nasa.gov/