13:45 〜 15:15
[O08-P39] 輝線原子特定による流星高度と輝線強度の関係 ~流星のスペクトルに迫る~
キーワード:流星高度、輝線強度、スペクトル解析
1.はじめに
流星をカメラを用いて観測し、流星ごとの輝線に含まれる原子を特定することで、流星高度と輝線強度の関係の調査した。
〇『流星のスペクトル』とは?
通常の流星でのスペクトルは基本的には輝線の集合で、流星本体起源であるCa,Mg,Na,Feなどの輝線と主に大気起源であるN,Oなどの輝線が目立つ。また、対地速度・突入角度の違いや、発光高度の差による物理・化学的環境の差、もともとの流星体の個体差などによって、輝線の種類や強度比は大きく異なっている。(図2)
2.方法
場所:ひるがの高原観測所
機材:モノクロビデオカメラWatec100Nレンズ(12mmF1.4)
透過型回折格子フィルム(エドモンド500/mm)
観測手順:動画を静止画に変換し、画像からグラフを取る。
次に0次光と輝線スペクトルまでのpixel距離を測定し、観測したpixel距離を基に波長に変換することで原子を特定した。この際、理科年表を参照して特定を行った。
〈原子特定の方法〉
事前研究ではMgを基に輝線原子を特定していたが、正確に特定できなかった。
それはMgの輝線から離れるにつれて歪みが大きくなるからだと考え、Mgではなく、Hg(図1,2)を基にpixel距離を波長に変換したところ、Mgの輝線から離れるにつれて歪みが確認された。ここでHgを使用したのは、Hgを比較光源として撮影することで、より正確に原子を特定するためである。(図1)
3.結果
pixel距離を~280(pixel)では1.44倍、280~370(pixel)では1.45倍、370~(pixel)では1.43倍することでpixel距離をnmに変換した。
横軸は画像のx座標(pixel),縦軸は輝線強度(count)をとった。
<Ⅰ>2023年5月5日に観測した流星の流星高度と輝線強度の関係
高高度(図3)では、Mg,Naの強度が大きいが、Ca,Feの強度は小さく、Naの左にOが見られる。また、中高度(図4)では、全体的に輝線の強度が上昇し、特にNaの強度の上昇が大きい。高高度では(図5)では、全輝線の強度が低下し、Oはほとんど消えかかっている。
<Ⅱ>2023年8月28日に観測した流星の流星高度と輝線強度の関係
□はまだ特定できていない原子を表している。高高度(図6)ではCaの輝線強度が大きく、爆発地点での中高度(図7)では、全ての輝線の強度が大幅に上昇したが、右側のCa輝線の強度の上昇率は小さい。また、爆発後の中高度(図7)では、全ての輝線の強度が低下し、右側のCaの輝線が消えた。低高度(図8)では、Caの輝線強度に変化はなく、その他の輝線は消えた。
<Ⅲ>爆発時の流星ごとの比較
図7,9,10,はそれぞれ2023年8月28日,2019年12月15日,2021年8月26日の3日間の流星における爆発地点を表している。2023年8月28日(図7)の流星では、全ての輝線の強度が大きいが、特に左側のCaの輝線の強度が大きい。また、2019年12月15日の(図9)の流星では、Ca,Naの強度が大きく、Mg,Siの輝線の強度は小さくなっている。2021年8月26日(図10)の流星では、Mg,Naの輝線の強度が大きく、Ca,Feの輝線の強度は小さくなっている。
4.考察
結果Ⅰから、Oは大気起源であるため、他の輝線より消えるのが早く、Mg,Na の輝線強度が大きいのは、流星本体に含まれるMg,Naの量が多いからだと思われる。
また、結果Ⅱで右側のCaの輝線が流星本体から離れているのは、2次光であるからだと考えられる。
結果Ⅲから、爆発地点での3つの流星に共通する特徴はあまり見られなかったが、流星の爆発地点では、比較的Na,Caの輝線の強度が大きいと思われる。
5.今後の展望
より多くの流星のデータを集めることで、流星群ごとの特徴を分類する。
□であらわされているような、まだ特定できていない輝線の原子を特定する。
1つの流星を2地点で同時に観測し、正確な流星高度を求めることで、より正確な比較をする。
6.使用ソフト
すばる画像処理ソフト「マカリ」、Microsoft Excel、ステライメージ、UFO Capture
7.参考文献
理科年表 令和4年、国立天文台分光宇宙アルバムhttps://prc.bao.ac.jp
流星をカメラを用いて観測し、流星ごとの輝線に含まれる原子を特定することで、流星高度と輝線強度の関係の調査した。
〇『流星のスペクトル』とは?
通常の流星でのスペクトルは基本的には輝線の集合で、流星本体起源であるCa,Mg,Na,Feなどの輝線と主に大気起源であるN,Oなどの輝線が目立つ。また、対地速度・突入角度の違いや、発光高度の差による物理・化学的環境の差、もともとの流星体の個体差などによって、輝線の種類や強度比は大きく異なっている。(図2)
2.方法
場所:ひるがの高原観測所
機材:モノクロビデオカメラWatec100Nレンズ(12mmF1.4)
透過型回折格子フィルム(エドモンド500/mm)
観測手順:動画を静止画に変換し、画像からグラフを取る。
次に0次光と輝線スペクトルまでのpixel距離を測定し、観測したpixel距離を基に波長に変換することで原子を特定した。この際、理科年表を参照して特定を行った。
〈原子特定の方法〉
事前研究ではMgを基に輝線原子を特定していたが、正確に特定できなかった。
それはMgの輝線から離れるにつれて歪みが大きくなるからだと考え、Mgではなく、Hg(図1,2)を基にpixel距離を波長に変換したところ、Mgの輝線から離れるにつれて歪みが確認された。ここでHgを使用したのは、Hgを比較光源として撮影することで、より正確に原子を特定するためである。(図1)
3.結果
pixel距離を~280(pixel)では1.44倍、280~370(pixel)では1.45倍、370~(pixel)では1.43倍することでpixel距離をnmに変換した。
横軸は画像のx座標(pixel),縦軸は輝線強度(count)をとった。
<Ⅰ>2023年5月5日に観測した流星の流星高度と輝線強度の関係
高高度(図3)では、Mg,Naの強度が大きいが、Ca,Feの強度は小さく、Naの左にOが見られる。また、中高度(図4)では、全体的に輝線の強度が上昇し、特にNaの強度の上昇が大きい。高高度では(図5)では、全輝線の強度が低下し、Oはほとんど消えかかっている。
<Ⅱ>2023年8月28日に観測した流星の流星高度と輝線強度の関係
□はまだ特定できていない原子を表している。高高度(図6)ではCaの輝線強度が大きく、爆発地点での中高度(図7)では、全ての輝線の強度が大幅に上昇したが、右側のCa輝線の強度の上昇率は小さい。また、爆発後の中高度(図7)では、全ての輝線の強度が低下し、右側のCaの輝線が消えた。低高度(図8)では、Caの輝線強度に変化はなく、その他の輝線は消えた。
<Ⅲ>爆発時の流星ごとの比較
図7,9,10,はそれぞれ2023年8月28日,2019年12月15日,2021年8月26日の3日間の流星における爆発地点を表している。2023年8月28日(図7)の流星では、全ての輝線の強度が大きいが、特に左側のCaの輝線の強度が大きい。また、2019年12月15日の(図9)の流星では、Ca,Naの強度が大きく、Mg,Siの輝線の強度は小さくなっている。2021年8月26日(図10)の流星では、Mg,Naの輝線の強度が大きく、Ca,Feの輝線の強度は小さくなっている。
4.考察
結果Ⅰから、Oは大気起源であるため、他の輝線より消えるのが早く、Mg,Na の輝線強度が大きいのは、流星本体に含まれるMg,Naの量が多いからだと思われる。
また、結果Ⅱで右側のCaの輝線が流星本体から離れているのは、2次光であるからだと考えられる。
結果Ⅲから、爆発地点での3つの流星に共通する特徴はあまり見られなかったが、流星の爆発地点では、比較的Na,Caの輝線の強度が大きいと思われる。
5.今後の展望
より多くの流星のデータを集めることで、流星群ごとの特徴を分類する。
□であらわされているような、まだ特定できていない輝線の原子を特定する。
1つの流星を2地点で同時に観測し、正確な流星高度を求めることで、より正確な比較をする。
6.使用ソフト
すばる画像処理ソフト「マカリ」、Microsoft Excel、ステライメージ、UFO Capture
7.参考文献
理科年表 令和4年、国立天文台分光宇宙アルバムhttps://prc.bao.ac.jp