13:45 〜 15:15
[O08-P50] 砂浜におけるマイクロプラスチック分布の解明〜全国マッピングのネットワーク確立に向けて〜
キーワード:マイクロプラスチック、砂浜、シンポジウム
1. 背景
近年、海に流れ込むマイクロプラスチック(以下、MPs)を海洋生物が取り込むことで引き起こされる生物濃縮や残留性有機物汚染などが世界中で問題となっている。砂浜におけるMPsの定量方法は多く存在するが、作業工程が多いことや比重分離ではヨウ化ナトリウムなどの高価な薬品を使用するため、高校などの教育現場において安易に定量することは難しいのが現状である。このことから、高校生でも安価で簡単にMPsの定量ができるような方法を確立するため、先行研究を下に本研究を進めた。加えて、現在の海洋環境の問題について広く周知し、考える場を設けることも社会的な課題であると考え、外部団体との共同して活動する枠組みやシンポジウムの実施など、アウトリーチ活動も進めた。
2.目的
一般的なMPsの定量方法であると高価な薬品や専門的な用具を必要とするため高校生でもできるような容易な定量方法を確立すること。この方法により、MPsの地域ごとの量を比較し、マッピングして考察を行う。また、本研究を普及するためのアウトリーチ活動に取り組む。
3.データ
海岸において砂をサンプリングし、その分析を行うとともに、本校の様々な交流行事などで繋がりを持った学校や個人に呼びかけを行い、各地の海岸の砂を提供してもらい分析を行った。ここでは宮城県2地点(桂島・閖上海岸)、山形県大浜、福島県釣り師浜海水浴場、東京都お台場海浜公園の計5地点の解析例を示す。
4.手法
実験は①砂採取、②砂の洗浄・乾燥、③過酸化水素処理、④比重分離、⑤双眼実体顕微鏡、イメージJによるMPsの概算検出の手順で行う。①は地理的条件(島、河口付近、内湾など)の違いなどから任意の地点を選択し、海岸では満潮線においてコドラート法を用いて縦20cm横20cm深さ5cmの範囲内の砂を採取する。②の洗浄は泡がなくなるまで繰り返し水を取り替えながら行う。③においては20mlの砂に34.5%の過酸化水素水を30%に希釈して40ml注ぎ有機物を除去する。④は精製水を用いて行う。⑤は双眼実体顕微鏡を用い肉眼でMPsの同定を行い、その量をイメージJを用いてビーカーの水面の面積に占めるMPsの面積比率を求めることで算出した。
5.結果
離島におけるMPs(桂島およびお台場)と河川近傍に分布するMPs(閖上海岸、大浜、釣り師浜海水浴場)の量を比較した。実験から得られたビーカー水面に占めるMPs面積割合の結果、数値はそれぞれ、桂島が0.28%、お台場が0.13%、閖上海岸が3.55%、大浜が1.50%、釣り師浜海水浴場が1.91%、という結果になった。
6.考察
まず、お台場のMPs量は少ない値となった。お台場の砂は、人工的に持ち込まれたものであり、伊豆諸島の神津島の砂を使用している。したがって神津島で堆積したMPsの量を反映しているか、または神津島でのMPsの量は十分に少なく人工的な浜ができたのちに東京湾のMPsが堆積した可能性が考えられる。お台場は人工的な埋立地であり、砂の堆積場として機能していない可能性があり、低い値となったのは妥当であると言える。なお、お台場については2mm以上の目視で確認できる大きさのプラスチック片が多かった。結果よりMPs量は他の地点と比べて少ないためまだ分解が進んでないことも予想できる。
次に桂島でも少ない値となった。これは、入り組んだ地形の中にあり、また、河川はなく人口は124人(令和2年度国勢調査より)と少ないことから陸域からのMPsの流入は少ないことが考えられる。
釣師浜は、砂子田川、濁川からの流入があり、海に面しているためそこからの供給が多いのではないかと考える。
閖上海岸は、広瀬川、碁石川、名取川の河川からの流入があり、仙台の主要河川の合流地点であることからMPs量が最も多くなったと考えられる。
お台場・桂島はどちらも内湾に位置し、海流の影響を受けにくく、河川からの流入も少ない。一方、釣り師浜・閖上は外洋に面していて海流の影響を受けやすく、河川からの流入も多い。また、釣師浜と閖上のMPs量の違いについては、釣師浜は河川からの流入が少なく、閖上は多いことから生じたと考えられる。このことからマイクロプラスチック量は、河川からの流入と大きく関わっていると考えられる。
7.アウトリーチ活動
本研究の発展と様々な方との関わりを増やすため、東京大学で開催された「海洋教育実践発表交流会」に参加した。この経験から本研究の結果を第三者へ共有する場として「高校生による海洋問題シンポジウム」を企画・開催した。このシンポジウムでは、海洋環境問題に関する研究や取り組みを行っている高校生や千葉市科学館の館長補佐の方、本校OGの東京農工大学大学院生の方などにご協力をいただいた。また、「現代社会における私達の取るべき行動とは」をテーマにグループディスカッションを行った。本シンポジウムでは、探究の成果を共有し啓発することにとどまらず、高校生自らが様々な視点で海洋問題を捉え、何を行っていくべきかを考えられた有意義な経験となった。さらに、本研究の全国ネットワークの確立に必要である、幅広い地域の高校生との繋がりを得ることができた。
近年、海に流れ込むマイクロプラスチック(以下、MPs)を海洋生物が取り込むことで引き起こされる生物濃縮や残留性有機物汚染などが世界中で問題となっている。砂浜におけるMPsの定量方法は多く存在するが、作業工程が多いことや比重分離ではヨウ化ナトリウムなどの高価な薬品を使用するため、高校などの教育現場において安易に定量することは難しいのが現状である。このことから、高校生でも安価で簡単にMPsの定量ができるような方法を確立するため、先行研究を下に本研究を進めた。加えて、現在の海洋環境の問題について広く周知し、考える場を設けることも社会的な課題であると考え、外部団体との共同して活動する枠組みやシンポジウムの実施など、アウトリーチ活動も進めた。
2.目的
一般的なMPsの定量方法であると高価な薬品や専門的な用具を必要とするため高校生でもできるような容易な定量方法を確立すること。この方法により、MPsの地域ごとの量を比較し、マッピングして考察を行う。また、本研究を普及するためのアウトリーチ活動に取り組む。
3.データ
海岸において砂をサンプリングし、その分析を行うとともに、本校の様々な交流行事などで繋がりを持った学校や個人に呼びかけを行い、各地の海岸の砂を提供してもらい分析を行った。ここでは宮城県2地点(桂島・閖上海岸)、山形県大浜、福島県釣り師浜海水浴場、東京都お台場海浜公園の計5地点の解析例を示す。
4.手法
実験は①砂採取、②砂の洗浄・乾燥、③過酸化水素処理、④比重分離、⑤双眼実体顕微鏡、イメージJによるMPsの概算検出の手順で行う。①は地理的条件(島、河口付近、内湾など)の違いなどから任意の地点を選択し、海岸では満潮線においてコドラート法を用いて縦20cm横20cm深さ5cmの範囲内の砂を採取する。②の洗浄は泡がなくなるまで繰り返し水を取り替えながら行う。③においては20mlの砂に34.5%の過酸化水素水を30%に希釈して40ml注ぎ有機物を除去する。④は精製水を用いて行う。⑤は双眼実体顕微鏡を用い肉眼でMPsの同定を行い、その量をイメージJを用いてビーカーの水面の面積に占めるMPsの面積比率を求めることで算出した。
5.結果
離島におけるMPs(桂島およびお台場)と河川近傍に分布するMPs(閖上海岸、大浜、釣り師浜海水浴場)の量を比較した。実験から得られたビーカー水面に占めるMPs面積割合の結果、数値はそれぞれ、桂島が0.28%、お台場が0.13%、閖上海岸が3.55%、大浜が1.50%、釣り師浜海水浴場が1.91%、という結果になった。
6.考察
まず、お台場のMPs量は少ない値となった。お台場の砂は、人工的に持ち込まれたものであり、伊豆諸島の神津島の砂を使用している。したがって神津島で堆積したMPsの量を反映しているか、または神津島でのMPsの量は十分に少なく人工的な浜ができたのちに東京湾のMPsが堆積した可能性が考えられる。お台場は人工的な埋立地であり、砂の堆積場として機能していない可能性があり、低い値となったのは妥当であると言える。なお、お台場については2mm以上の目視で確認できる大きさのプラスチック片が多かった。結果よりMPs量は他の地点と比べて少ないためまだ分解が進んでないことも予想できる。
次に桂島でも少ない値となった。これは、入り組んだ地形の中にあり、また、河川はなく人口は124人(令和2年度国勢調査より)と少ないことから陸域からのMPsの流入は少ないことが考えられる。
釣師浜は、砂子田川、濁川からの流入があり、海に面しているためそこからの供給が多いのではないかと考える。
閖上海岸は、広瀬川、碁石川、名取川の河川からの流入があり、仙台の主要河川の合流地点であることからMPs量が最も多くなったと考えられる。
お台場・桂島はどちらも内湾に位置し、海流の影響を受けにくく、河川からの流入も少ない。一方、釣り師浜・閖上は外洋に面していて海流の影響を受けやすく、河川からの流入も多い。また、釣師浜と閖上のMPs量の違いについては、釣師浜は河川からの流入が少なく、閖上は多いことから生じたと考えられる。このことからマイクロプラスチック量は、河川からの流入と大きく関わっていると考えられる。
7.アウトリーチ活動
本研究の発展と様々な方との関わりを増やすため、東京大学で開催された「海洋教育実践発表交流会」に参加した。この経験から本研究の結果を第三者へ共有する場として「高校生による海洋問題シンポジウム」を企画・開催した。このシンポジウムでは、海洋環境問題に関する研究や取り組みを行っている高校生や千葉市科学館の館長補佐の方、本校OGの東京農工大学大学院生の方などにご協力をいただいた。また、「現代社会における私達の取るべき行動とは」をテーマにグループディスカッションを行った。本シンポジウムでは、探究の成果を共有し啓発することにとどまらず、高校生自らが様々な視点で海洋問題を捉え、何を行っていくべきかを考えられた有意義な経験となった。さらに、本研究の全国ネットワークの確立に必要である、幅広い地域の高校生との繋がりを得ることができた。