13:45 〜 15:15
[O08-P74] Webカメラを用いた放射線の測定と画像解析
キーワード:放射線測定、ウェブカメラ、画像解析、電子ビーム
webカメラを用いた放射線の測定と画像解析
発表者 内田彩尊 渋谷教育学園幕張高等学校
1.目的
宇宙線や放射線の粒子や電磁波[1,5]を、webカメラによって感知することは、イメージセンサーの原理上は可能であり、可視光を遮断し放射線や宇宙線のみがイメージセンサーに届くようにカメラを改造すれば、理論上測定はできる。
私は簡単に手に入るwebカメラを用い、放射線の長時間露光測定を行い、線源(152Eu、241Am、90Sr)毎に得られた画像を解析し、alph線、beta線、gamma線の識別を試みてきた。検討の結果、線源別に軌跡の形、輝度に有意な違いがあることが分った。そこで、放射線の知見[2,3,4,5,7]や霧箱で観測される放射線の特徴[6]と、webカメラによる測定で画像に現れた軌跡の特徴とを比較し線種の識別が可能ではないか、さらに、軌跡の長さ、面積の数値化により定量的な識別が可能ではないかという仮説をたて、それに基づき画像解析を行った。
また、センサーへの放射線の入射角による画像解析結果への影響を電子ビームの測定にて検証した。
2.実験方法
webカメラはレンズを取る。露光の際は、線源をイメージセンサーの上に置き、アルミホイルで可視光を遮断する。
カメラはパソコンにつなぎ、ソフト[4]を用いて長時間露光を行う。得られた測定画像は、openCVとPythonを用いたコードで解析を行う。線源は、152Eu、241Am、90Srを用いた。
3.解析方法とデータ
(画像解析の方法1) 軌跡の長さや面積、平均輝度を数値化
式1:軌跡の長さL=√h2+w2
式2:平均輝度l=T/a
(画像解析の方法2) 軌跡の縦横比から、軌跡の形を数値化
式3:軌跡の縦横比 h/w
4.結果
これまでに、画像解析の方法1により、beta線とgammma線の識別は可能であると報告した。
画像解析の方法2による解析結果では、90Srのbeta線と思われる細長い軌跡が、低い輝度を示した。丸い軌跡も、細長い軌跡と似た平均輝度の分布を示したが、放射線がイメージセンサーに入る角度の関係で、丸く検知されることによると考えた。これは、本測定の場合、線源を用いたため、90Srの長時間露光で検出された軌跡は全てbeta線であると考えられることによる。152Euと241Amの細長い軌跡は、Srのbeta線と似た分布を示した。その丸い軌跡は細長い軌跡と比べ、高い平均輝度を示した。そして、241Amについては、丸い軌跡の分布をgamma線であると推測した。より詳しい解析の結果(表1)、解析の方法2の考察を裏づける結果が得られた。90Srのグラフ上、縦横比0付近のピークは細長い軌跡のbeta線を示し、縦横比0.2から0.45付近のピークは、センサーへの入射角の影響で少し丸に近い形となったβ線を示す。152Euと241Amも同様の挙動で、これらはbeta線を示す。また、各グラフの縦横比0.6から0.8付近のピークは、丸に近い形のgamma線を示す。これらが文献上の各放射線の特徴[2,6,7]と一致した。つまり、画像に現れた軌跡を長さや面積、平均輝度を数値化した解析によるbeta線とgamma線の識別は可能であり、また、軌跡の縦横比を用いた軌跡の形を数値化した解析により、beta線は細く長い軌跡、gamma線が小さく丸い軌跡という放射線の特徴を表すことができた。結果として、webカメラを用いた測定で放射線が残した軌跡の特徴を数値化した画像解析により、各線源の定量的識別が成功したといえる。
考察と検証 webカメラによる電子ビームの観測
研究の過程で問題となっていた、イメージセンサーへの放射線の入射角による画像解析結果への影響を、KEKの電子ビームの測定にて検証した。
画像解析の結果、イメージセンサーへの電子ビームの入射角により、軌跡の形が変化することが示唆された(表2)。
参考文献
[1] 宇宙線とは?|名古屋大学宇宙線物理学研究室(CR研)
[2]Webcam Particle Detector Measurements. PhysicsOpenLab.(2016)
[3]Takano,W.,&Hibino,K.(2023)
Consumer devices with CMOS camera image sensors as pocket-sized particle detectors.
[4]DIY webcam particle detector.PhysicsOpenLab.(2016)
[5]第10章それぞれの放射性物質について考えよう
[6]大阪大学理学部物理学科山中卓研究室(2022) Osksn2.hep.sci.osaka-U.AC.JP.
霧箱を用いた放射線の測定
[7]名古屋大学理学研究科素粒子宇宙物理系F研基本粒子研究室(2011)
見えないものを見る放射線測定から物質の根源を探る(霧箱・応用編)
発表者 内田彩尊 渋谷教育学園幕張高等学校
1.目的
宇宙線や放射線の粒子や電磁波[1,5]を、webカメラによって感知することは、イメージセンサーの原理上は可能であり、可視光を遮断し放射線や宇宙線のみがイメージセンサーに届くようにカメラを改造すれば、理論上測定はできる。
私は簡単に手に入るwebカメラを用い、放射線の長時間露光測定を行い、線源(152Eu、241Am、90Sr)毎に得られた画像を解析し、alph線、beta線、gamma線の識別を試みてきた。検討の結果、線源別に軌跡の形、輝度に有意な違いがあることが分った。そこで、放射線の知見[2,3,4,5,7]や霧箱で観測される放射線の特徴[6]と、webカメラによる測定で画像に現れた軌跡の特徴とを比較し線種の識別が可能ではないか、さらに、軌跡の長さ、面積の数値化により定量的な識別が可能ではないかという仮説をたて、それに基づき画像解析を行った。
また、センサーへの放射線の入射角による画像解析結果への影響を電子ビームの測定にて検証した。
2.実験方法
webカメラはレンズを取る。露光の際は、線源をイメージセンサーの上に置き、アルミホイルで可視光を遮断する。
カメラはパソコンにつなぎ、ソフト[4]を用いて長時間露光を行う。得られた測定画像は、openCVとPythonを用いたコードで解析を行う。線源は、152Eu、241Am、90Srを用いた。
3.解析方法とデータ
(画像解析の方法1) 軌跡の長さや面積、平均輝度を数値化
式1:軌跡の長さL=√h2+w2
式2:平均輝度l=T/a
(画像解析の方法2) 軌跡の縦横比から、軌跡の形を数値化
式3:軌跡の縦横比 h/w
4.結果
これまでに、画像解析の方法1により、beta線とgammma線の識別は可能であると報告した。
画像解析の方法2による解析結果では、90Srのbeta線と思われる細長い軌跡が、低い輝度を示した。丸い軌跡も、細長い軌跡と似た平均輝度の分布を示したが、放射線がイメージセンサーに入る角度の関係で、丸く検知されることによると考えた。これは、本測定の場合、線源を用いたため、90Srの長時間露光で検出された軌跡は全てbeta線であると考えられることによる。152Euと241Amの細長い軌跡は、Srのbeta線と似た分布を示した。その丸い軌跡は細長い軌跡と比べ、高い平均輝度を示した。そして、241Amについては、丸い軌跡の分布をgamma線であると推測した。より詳しい解析の結果(表1)、解析の方法2の考察を裏づける結果が得られた。90Srのグラフ上、縦横比0付近のピークは細長い軌跡のbeta線を示し、縦横比0.2から0.45付近のピークは、センサーへの入射角の影響で少し丸に近い形となったβ線を示す。152Euと241Amも同様の挙動で、これらはbeta線を示す。また、各グラフの縦横比0.6から0.8付近のピークは、丸に近い形のgamma線を示す。これらが文献上の各放射線の特徴[2,6,7]と一致した。つまり、画像に現れた軌跡を長さや面積、平均輝度を数値化した解析によるbeta線とgamma線の識別は可能であり、また、軌跡の縦横比を用いた軌跡の形を数値化した解析により、beta線は細く長い軌跡、gamma線が小さく丸い軌跡という放射線の特徴を表すことができた。結果として、webカメラを用いた測定で放射線が残した軌跡の特徴を数値化した画像解析により、各線源の定量的識別が成功したといえる。
考察と検証 webカメラによる電子ビームの観測
研究の過程で問題となっていた、イメージセンサーへの放射線の入射角による画像解析結果への影響を、KEKの電子ビームの測定にて検証した。
画像解析の結果、イメージセンサーへの電子ビームの入射角により、軌跡の形が変化することが示唆された(表2)。
参考文献
[1] 宇宙線とは?|名古屋大学宇宙線物理学研究室(CR研)
[2]Webcam Particle Detector Measurements. PhysicsOpenLab.(2016)
[3]Takano,W.,&Hibino,K.(2023)
Consumer devices with CMOS camera image sensors as pocket-sized particle detectors.
[4]DIY webcam particle detector.PhysicsOpenLab.(2016)
[5]第10章それぞれの放射性物質について考えよう
[6]大阪大学理学部物理学科山中卓研究室(2022) Osksn2.hep.sci.osaka-U.AC.JP.
霧箱を用いた放射線の測定
[7]名古屋大学理学研究科素粒子宇宙物理系F研基本粒子研究室(2011)
見えないものを見る放射線測定から物質の根源を探る(霧箱・応用編)