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[PPS03-07] 小惑星リュウグウの小惑星帯における衝突進化史

キーワード:リュウグウ、小惑星族、衝突進化、クレーター年代学
はやぶさ2が探査した地球近傍炭素質小惑星リュウグウは、小惑星帯内帯において母天体が破壊されてできた破片が起源であり、小惑星帯内縁のν6共鳴によって現在の地球近傍軌道に軌道変化したと考えられている。本研究では、リュウグウの起源である母天体の破壊が起きてから現在の地球近傍軌道に至るまでの軌道変化を考慮し、各軌道におけるリュウグウへの天体衝突の頻度を計算した。これをもとにして、軌道変化によって衝突頻度がどのように変化したのか、またリュウグウに衝突する天体がどこから来たのかを考察した。
リュウグウはNew Polana族またはEulalia族に由来していると考えられている(Bottke et al., 2015, Sugita et al., 2019)。小惑星帯にいた時のリュウグウはこれらの小惑星族と軌道要素が近いため、他の小惑星帯天体に比べて族の天体との衝突が起きやすいと予想される。また、小惑星族との衝突によって母天体での形成深度が異なる岩石や異なる母天体の岩石がリュウグウに供給される可能性があり、Bright boulders (Tatsumi et al., 2021)のような周囲とスペクトルが異なる岩石がこれに由来している可能性が考えられる。しかしこれまでにNew Polana族やEulalia族との衝突頻度を考えた研究はないため、本研究ではその衝突頻度を計算し、小惑星族との衝突やそれによる天体破壊がどの程度起きていたのかを推定することで、リュウグウに形成過程の異なる岩石が含まれている可能性を評価する。
また先行研究では、小惑星帯における衝突頻度の平均値を用いてクレーター年代学モデルを構築し、リュウグウ表面のクレーター統計から表面年代が推定されている(Sugita et al., 2019, Morota et al., 2020, Cho et al., 2021)。しかし、前述のような小惑星族との衝突によってリュウグウへの衝突頻度が大きくなることに加え、小惑星帯内縁のν6共鳴で軌道が乱されて離心率が大きくなった軌道(遷移軌道)ではより多くの天体と衝突する可能性があることから、各軌道での衝突頻度・クレーター生成頻度を計算し、より正確な表面年代の推定を試みた。
具体的には小惑星帯、遷移軌道、地球近傍における固有衝突確率(Wetherill, 1967)を数値計算し、天体のサイズ頻度分布(Bottke et al., 2005)を用いてある直径以上の天体がリュウグウに衝突する頻度を求めた。その結果、離心率が大きくなる遷移軌道ではクレーター生成頻度が小惑星帯の約2倍であるということが分かった。さらに、小惑星帯ではリュウグウに衝突する天体のうち約4割がNew Polana族またはEulalia族由来であるということも分かり、これを加味すると表面年代は420~660万年であると推定された。先行研究(Sugita et al., 2019)では890±250万年とされているので、予想通り表面年代がやや小さくなっていることがわかる。
また、リュウグウが小惑星族との衝突によって破壊される頻度は、New Polana族相手では約40億年、Eulalia族相手では約10億年に1回と計算された。これをもとにして、現在までにリュウグウが各小惑星族との衝突破壊を経験した確率を求めると、New Polana族とは20%以上、Eulalia族とは60%以上と見積もられる。この確率は、リュウグウがラブルパイル天体であり強度が小さいことを仮定するとさらに大きくなるため、リュウグウは小惑星族との衝突破壊を経験した可能性が十分考えられる。また、これによって母天体での形成深度が異なる岩石や母天体の異なる岩石がリュウグウに含まれていることが示唆される。
リュウグウはNew Polana族またはEulalia族に由来していると考えられている(Bottke et al., 2015, Sugita et al., 2019)。小惑星帯にいた時のリュウグウはこれらの小惑星族と軌道要素が近いため、他の小惑星帯天体に比べて族の天体との衝突が起きやすいと予想される。また、小惑星族との衝突によって母天体での形成深度が異なる岩石や異なる母天体の岩石がリュウグウに供給される可能性があり、Bright boulders (Tatsumi et al., 2021)のような周囲とスペクトルが異なる岩石がこれに由来している可能性が考えられる。しかしこれまでにNew Polana族やEulalia族との衝突頻度を考えた研究はないため、本研究ではその衝突頻度を計算し、小惑星族との衝突やそれによる天体破壊がどの程度起きていたのかを推定することで、リュウグウに形成過程の異なる岩石が含まれている可能性を評価する。
また先行研究では、小惑星帯における衝突頻度の平均値を用いてクレーター年代学モデルを構築し、リュウグウ表面のクレーター統計から表面年代が推定されている(Sugita et al., 2019, Morota et al., 2020, Cho et al., 2021)。しかし、前述のような小惑星族との衝突によってリュウグウへの衝突頻度が大きくなることに加え、小惑星帯内縁のν6共鳴で軌道が乱されて離心率が大きくなった軌道(遷移軌道)ではより多くの天体と衝突する可能性があることから、各軌道での衝突頻度・クレーター生成頻度を計算し、より正確な表面年代の推定を試みた。
具体的には小惑星帯、遷移軌道、地球近傍における固有衝突確率(Wetherill, 1967)を数値計算し、天体のサイズ頻度分布(Bottke et al., 2005)を用いてある直径以上の天体がリュウグウに衝突する頻度を求めた。その結果、離心率が大きくなる遷移軌道ではクレーター生成頻度が小惑星帯の約2倍であるということが分かった。さらに、小惑星帯ではリュウグウに衝突する天体のうち約4割がNew Polana族またはEulalia族由来であるということも分かり、これを加味すると表面年代は420~660万年であると推定された。先行研究(Sugita et al., 2019)では890±250万年とされているので、予想通り表面年代がやや小さくなっていることがわかる。
また、リュウグウが小惑星族との衝突によって破壊される頻度は、New Polana族相手では約40億年、Eulalia族相手では約10億年に1回と計算された。これをもとにして、現在までにリュウグウが各小惑星族との衝突破壊を経験した確率を求めると、New Polana族とは20%以上、Eulalia族とは60%以上と見積もられる。この確率は、リュウグウがラブルパイル天体であり強度が小さいことを仮定するとさらに大きくなるため、リュウグウは小惑星族との衝突破壊を経験した可能性が十分考えられる。また、これによって母天体での形成深度が異なる岩石や母天体の異なる岩石がリュウグウに含まれていることが示唆される。