17:15 〜 18:45
[PPS07-P17] 焼結による多孔質始原天体の機械特性の変化に関する実験的研究
キーワード:焼結、微惑星、ダスト、充填率
原始惑星系円盤内のダストアグリゲイトの集積において焼結は重要な役割を果たした可能性があり(Sirono, 1999; Sirono & Ueno, 2017; Okuzumi et al., 2016), また, 微惑星の熱進化は焼結を経たと考えられている(e.g., Henke et al., 2012; Neumann et al., 2014, 2021).そのため, 焼結した多孔質物体の機械的特性の理解が, 惑星形成初期の物理現象の解明ために必要である. 本研究では, 充填率が0.4-0.8の焼結体を作成し, その焼結体の機械特性, 特に縦波速度と曲げ強度の充填率に対する変化を調べた. また, 現実的な粉粒体として, 多分散かつ不規則形状のダスト粒子からなる粉粒体を焼結させ, その焼結挙動を観察した.
実験ではダスト試料として, GB-94(単分散, 球形, メジアン径94 μm, 平均粒径92±7 μm), GB-55(単分散, 球形, メジアン径55 μm, 平均粒径53±7 μm), GB-22(多分散, 球形, メジアン径22 μm, 平均粒径11±6 μm), GP-53(多分散, 不規則形状, メジアン径53 μm, 平均粒径12±15 μm)の4つのソーダライムガラス粒子を使用した. ソーダライムガラスの軟化点は約730℃である.
実験は次の手順で行った. (ⅰ)粒子試料をるつぼに充填する. このとき, ふるいを用いてランダム疎充填試料, タッピングによってランダム密充填試料を作成する. (ⅱ)試料をピーク温度620℃で加熱し, 焼結体を作成する. 昇温時間は30分で固定し, ピーク温度の維持時間を変更することで焼結度合いを変化させる. 一部の焼結体に関しては, ピーク温度を630℃, 640℃に設定して, 加熱した. (ⅲ)焼結体表面を走査型電子顕微鏡で観察する. (ⅳ)焼結体の質量と体積から充填率を算出する. (ⅴ)パルス透過法を用いて焼結体の縦波速度を測定し, 三点曲げ試験によって焼結体の曲げ強度を測定する.
走査型電子顕微鏡での観察から, 融点付近の加熱によって, 不規則形状ダストでは, ネックが形成されるだけでなく, ダストの表面形状の変化も生じることがわかった. ダストの角が丸みを帯び, 表面が滑らかになった. 粉粒体の緻密化曲線から, 多分散かつ不規則形状ダスト粒子からなる粉粒体は, 大きな粒子が含まれている場合でも比較的速く焼結することがわかった. これは, 粉粒体に含まれている粒径の小さな粒子の数が多いこと, 及び, 不規則形状粒子の実際の表面曲率半径が見かけの粒子半径よりもかなり小さいことに起因すると考えられる.
焼結体の縦波速度は, 粒径, 粒径分布, 充填方法, 粒子形状に依らず, 充填率に比例して増加した. このような増加は, 焼結した氷アグリゲイト(Shimaki and Arakawa, 2021)やグリーンランドの雪(Smith, 1965)の測定結果でも見られる. 焼結体の曲げ強度の充填率に対する変化には, 2つの傾向が見られた. 一つは, べき乗則に従う増加である. この傾向は焼結した氷アグリゲイトの引張強度(Shimaki and Arakawa, 2021)の測定結果と調和的である. もう一つは, 線形的な増加である. この傾向は焼結した氷アグリゲイトでは見られない. 線形傾向は, 充填率が増加するにつれてべき乗則に漸近しているように見える.
実験ではダスト試料として, GB-94(単分散, 球形, メジアン径94 μm, 平均粒径92±7 μm), GB-55(単分散, 球形, メジアン径55 μm, 平均粒径53±7 μm), GB-22(多分散, 球形, メジアン径22 μm, 平均粒径11±6 μm), GP-53(多分散, 不規則形状, メジアン径53 μm, 平均粒径12±15 μm)の4つのソーダライムガラス粒子を使用した. ソーダライムガラスの軟化点は約730℃である.
実験は次の手順で行った. (ⅰ)粒子試料をるつぼに充填する. このとき, ふるいを用いてランダム疎充填試料, タッピングによってランダム密充填試料を作成する. (ⅱ)試料をピーク温度620℃で加熱し, 焼結体を作成する. 昇温時間は30分で固定し, ピーク温度の維持時間を変更することで焼結度合いを変化させる. 一部の焼結体に関しては, ピーク温度を630℃, 640℃に設定して, 加熱した. (ⅲ)焼結体表面を走査型電子顕微鏡で観察する. (ⅳ)焼結体の質量と体積から充填率を算出する. (ⅴ)パルス透過法を用いて焼結体の縦波速度を測定し, 三点曲げ試験によって焼結体の曲げ強度を測定する.
走査型電子顕微鏡での観察から, 融点付近の加熱によって, 不規則形状ダストでは, ネックが形成されるだけでなく, ダストの表面形状の変化も生じることがわかった. ダストの角が丸みを帯び, 表面が滑らかになった. 粉粒体の緻密化曲線から, 多分散かつ不規則形状ダスト粒子からなる粉粒体は, 大きな粒子が含まれている場合でも比較的速く焼結することがわかった. これは, 粉粒体に含まれている粒径の小さな粒子の数が多いこと, 及び, 不規則形状粒子の実際の表面曲率半径が見かけの粒子半径よりもかなり小さいことに起因すると考えられる.
焼結体の縦波速度は, 粒径, 粒径分布, 充填方法, 粒子形状に依らず, 充填率に比例して増加した. このような増加は, 焼結した氷アグリゲイト(Shimaki and Arakawa, 2021)やグリーンランドの雪(Smith, 1965)の測定結果でも見られる. 焼結体の曲げ強度の充填率に対する変化には, 2つの傾向が見られた. 一つは, べき乗則に従う増加である. この傾向は焼結した氷アグリゲイトの引張強度(Shimaki and Arakawa, 2021)の測定結果と調和的である. もう一つは, 線形的な増加である. この傾向は焼結した氷アグリゲイトでは見られない. 線形傾向は, 充填率が増加するにつれてべき乗則に漸近しているように見える.