16:00 〜 16:15
[SCG44-15] 衝撃回収実験により石英中に形成された衝撃変成組織Feather Features の特徴
キーワード:Feather Features、衝撃変成組織
天体衝突に伴う衝撃波の伝播により鉱物中に形成される変成組織は衝撃変成組織と呼ばれ、地質試料が被った衝撃圧力の大きさや天体衝突条件の推定に用いられている。特に、石英中の衝撃変成組織は、石英が地球の大陸地殻中に普遍的に存在し、様々な衝撃変成組織を示すこと、風化・変質に強いことから地球上での天体衝突の指標として用いられてきた。
石英の衝撃変成組織の一種であるFeather Features(FFs)は、平板割れ目(Planar Fractures: PFs)と、PFから1方向に伸びる長さ10–100μm程度、間隔2–10μm程度の微細なラメラ(Feather Feature Lamellae: FFL)から構成される組織である。FFsは天然の衝突クレーター試料から数多く報告されているものの、実験的にFFsの形成が確認された例は1例のみ(Poelchau and Kenkamann 2011)に限られており、FFsの形成圧力範囲や衝撃波伝播方向との関係は十分明らかにはなっていない。また、FFLは割れ目であると考えられてきたが、電子顕微鏡を用いたサブミクロンスケールでの観察例は少なく、その実態は不明確である。
そこで我々は、FFsの形成圧力範囲、FFLがどのような構造であるのか、FFLの方向と衝撃波の伝播方向との関係、衝撃圧力の大きさに伴うFFsの特徴の変化を明らかにすることを目的とし、花崗岩をターゲットとして二段式軽ガス銃を用いた衝撃回収実験を行った。手法はKurosawa et al. (2022)、 Ono et al. (2023)、 Hamman et al. (2023)によって確立したものである。ターゲット内の衝撃圧力分布及び衝撃波の伝播方向は数値衝突計算により推定した。回収試料の薄片を作成し、石英中に形成されたFFsについて、光学顕微鏡と電子顕微鏡 (SEM、SEM-EBSD、TEM) による微細組織観察、およびユニバーサルステージ顕微鏡を用いた面方位測定を行った。
衝撃回収試料の光学顕微鏡観察の結果、およそ2から18 GPaの衝撃圧力を被った領域から計34個のFFsが見つかった。FFsは、形成された衝撃圧力の大きさによって特徴の異なる3つのタイプ(Type I–III)に分けることができた。
Type IのFFsは~2–12 GPaで形成された26個のFFsである。PFの結晶方位は(0001)面が卓越し、FFLの結晶方位は{10-11}面と{11-22}面が卓越する。FFLは微細な割れ目であり、FFLの方向は衝撃波の伝播方向とおおむね平行である。Type IIのFFsは~12–14 GPaで形成された3個のFFsである。PFの結晶方位は{11-22}面または{11-20}面に平行で、FFLの結晶方位は{11-22}面に平行か、どの結晶面とも平行でない。FFLはType Iと同様に微細な割れ目であるが、衝撃波の伝播方向とは40度以上方向が異なっている。Type IIIのFFsは~16–18 GPaで形成された5個のFFsである。PFは{10-10}や、{11-20}、{51-61}などの結晶面に平行であり、FFLは{10-13}または{10-14}面に平行である。Type IIIのFFLはType I, Type IIとは異なり、非晶質SiO2で構成されていて、FFLの方向は衝撃波の伝播方向とは40度以上方向が異なっている。
本研究で明らかとなった、衝撃圧力に伴うFFsの特徴の変化は新たな衝撃圧力指標となることが期待できる。
石英の衝撃変成組織の一種であるFeather Features(FFs)は、平板割れ目(Planar Fractures: PFs)と、PFから1方向に伸びる長さ10–100μm程度、間隔2–10μm程度の微細なラメラ(Feather Feature Lamellae: FFL)から構成される組織である。FFsは天然の衝突クレーター試料から数多く報告されているものの、実験的にFFsの形成が確認された例は1例のみ(Poelchau and Kenkamann 2011)に限られており、FFsの形成圧力範囲や衝撃波伝播方向との関係は十分明らかにはなっていない。また、FFLは割れ目であると考えられてきたが、電子顕微鏡を用いたサブミクロンスケールでの観察例は少なく、その実態は不明確である。
そこで我々は、FFsの形成圧力範囲、FFLがどのような構造であるのか、FFLの方向と衝撃波の伝播方向との関係、衝撃圧力の大きさに伴うFFsの特徴の変化を明らかにすることを目的とし、花崗岩をターゲットとして二段式軽ガス銃を用いた衝撃回収実験を行った。手法はKurosawa et al. (2022)、 Ono et al. (2023)、 Hamman et al. (2023)によって確立したものである。ターゲット内の衝撃圧力分布及び衝撃波の伝播方向は数値衝突計算により推定した。回収試料の薄片を作成し、石英中に形成されたFFsについて、光学顕微鏡と電子顕微鏡 (SEM、SEM-EBSD、TEM) による微細組織観察、およびユニバーサルステージ顕微鏡を用いた面方位測定を行った。
衝撃回収試料の光学顕微鏡観察の結果、およそ2から18 GPaの衝撃圧力を被った領域から計34個のFFsが見つかった。FFsは、形成された衝撃圧力の大きさによって特徴の異なる3つのタイプ(Type I–III)に分けることができた。
Type IのFFsは~2–12 GPaで形成された26個のFFsである。PFの結晶方位は(0001)面が卓越し、FFLの結晶方位は{10-11}面と{11-22}面が卓越する。FFLは微細な割れ目であり、FFLの方向は衝撃波の伝播方向とおおむね平行である。Type IIのFFsは~12–14 GPaで形成された3個のFFsである。PFの結晶方位は{11-22}面または{11-20}面に平行で、FFLの結晶方位は{11-22}面に平行か、どの結晶面とも平行でない。FFLはType Iと同様に微細な割れ目であるが、衝撃波の伝播方向とは40度以上方向が異なっている。Type IIIのFFsは~16–18 GPaで形成された5個のFFsである。PFは{10-10}や、{11-20}、{51-61}などの結晶面に平行であり、FFLは{10-13}または{10-14}面に平行である。Type IIIのFFLはType I, Type IIとは異なり、非晶質SiO2で構成されていて、FFLの方向は衝撃波の伝播方向とは40度以上方向が異なっている。
本研究で明らかとなった、衝撃圧力に伴うFFsの特徴の変化は新たな衝撃圧力指標となることが期待できる。