[S-CG46] 岩石―流体相互作用の新展開：表層から沈み込み帯深部まで

[SCG46-13] シュードセクション法を用いた断層岩の水―岩石反応解析～オマーンオフィオライト地殻－マントル境界に発達した延性剪断帯の例～

*夏目 樹^1,2、纐纈 佑衣¹、道林 克禎^1,3、岡本 敦⁴ (1.名古屋大学大学院環境学研究科（岩鉱）、2.神奈川県立生命の星地球博物館、3.海洋研究開発機構海域地震火山部門、4.東北大学大学院環境科学研究科)

キーワード：シュードセクション、水－岩石反応、断層岩、オマーンオフィオライト、地殻－マントル境界、延性剪断帯

オマーンオフィオライトの地殻－マントル境界部には水－岩石反応を伴う延性剪断帯が存在し、微細構造と結晶方位発達過程について研究されている(Michibayashi and Oohara, 2013)．本研究では，この延性剪断帯についてシュードセクション法を適用し、海洋プレートの地殻－マントル境界における水－岩石反応とその変形への効果を考察した．本剪断帯の原岩は塊状のハンレイ岩にダナイト岩片が取り込まれた構造をもつモホ遷移帯である。断層岩の微細構造観察と主要な鉱物組合せに基づき、角閃石と斜長石からなる角閃石－斜長石組織、カンラン石からなるカンラン石組織、角閃石からなる角閃石組織、緑泥石からなる緑泥石組織、単斜輝石と緑泥石からなる単斜輝石組織に分類された。次に、温度と全岩化学組成の関係を示すシュードセクションを作成した。計算は、H₂O流体に飽和したCa-Fe-Mg-Al-Si-O-H系で行い、一般的な海洋地殻の厚さに相当する圧力(200 MPa)を仮定した。本研究では全岩化学組成をダナイトとハンレイ岩の混合割合の関数として変化させた。シュードセクションの結果から断層岩中の5つの組織について以下の結論を得た。カンラン石組織は主にダナイト由来の組織，角閃石－斜長石組織は主にハンレイ岩由来であり，どちらも約750℃で変形時に水－岩石反応して形成された．その他の3つの組織は，ダナイトとハンレイ岩の混合比に依らず，角閃石組織は約750℃以下，緑泥石組織と単斜輝石組織は約650℃以下で変形時に水－岩石反応しながら形成された．さらにシュードセクションから低温領域における蛇紋石や滑石の形成条件を明らかにした。

【引用文献】　Michibayashi & Oohara, 2013, Earth Planet. Sci. Lett., 377, 299-310.