[S-CG46] 岩石―流体相互作用の新展開：表層から沈み込み帯深部まで

[SCG46-P08] 蔵王山の浅部比抵抗構造の解明と表層高伝導熱水変質層に関する考察

*市來 雅啓¹、神田 径²、海田 俊輝¹、潮田 雅司³、関 香織²、三浦 哲¹、山本 希¹、森田 裕一^4,5、上嶋 誠⁵ (1.東北大学大学院理学研究科、2.東京工業大学科学技術創成研究院、3.四国総合研究所、4.防災科学技術研究所、5.東京大学地震研究所)

キーワード：電気比抵抗、熱水変質層、透水率

1. 緒言
水蒸気噴火型火山における地下比抵抗構造の研究から，200 ℃以下で安定して存在するスメクタイト主体の不透水層が熱水経路を遮断するか透過させるかが水蒸気噴火のポテンシャルを評価する上で重要であると考えられる．本研究の目的は，1) 蔵王山での可聴周波数領域地磁気地電流法(AMT法)観測を拡充して海抜下2 kmまでの比抵抗構造再解析を行い，スメクタイト層を示唆する表層付近の高伝導帯分布の推定を行い、その比抵抗信頼区間を推定する、2) 推定した比抵抗信頼区間からどの程度の温度変化によって熱水が透過し始めるかを推定する、ということである。

2. データと解析手法
2014年9月17-20日に御釜周辺の22観測点，2020年9月28日-10月22日に御釜の東側五色岳を中心とする1 km×1 km範囲の40観測点それぞれで1-10k Hzの電場2成分、地磁気3成分の時間変化を観測し、MT周波数応答関数と地磁気変換関数をBIRRPによって推定した．得られたAMT周波数応答関数と地磁気変換関数からWSINV3D-MTコード(Siripunvaraporn & Egbert, 2009)を用いて3次元比抵抗構造を推定した．計算メッシュは五色岳を中心として東西南北±2 km，標高2000 mから海抜下2000 mの範囲を50 mメッシュで離散化した．WSINV3DMTコードに入力する参照モデルは地下300 Ωm一様モデルから始め、参照モデルを最尤モデルから3回アップデートしたものを最終モデルとした。最終モデルの表層高伝導帯の比抵抗信頼区間を推定する為に、高伝導帯の比抵抗を一様にして比抵抗値を変化させながら、観測点毎に全データの標準誤差で規格化した残差の平均に対するJackknifeサンプルがどう変化するかを追跡した。Jackknifeサンプルは中心極限定理により正規分布に従うことから、カイ2乗平均の変化に基づくF検定を適用して比抵抗信頼区間を推定した。

3. 結果と考察
市來・他（火山学会2021秋季大会）ではAMT周波数応答関数から計算される位相テンソル行列式の逆正接空間分布と地磁気変換関数の実部パーキンソンベクトルの空間分布の特徴から五色岳付近直下に高伝導帯が期待されることを述べた。また3次元比抵抗構造最尤モデルでも、スメクタイト層と解釈される高伝導帯が五色岳を中心とする東西南北±1 kmの範囲で標高500 mの地下から地表付近にかけて分布することが推定された。逆問題の残差二乗平均平方根は3.48であった。発表では現在解析中の表層の高伝導帯の比抵抗信頼区間推定を報告しそれに基づく透水率について議論する。

謝辞
本研究は次世代火山研究・人材育成総合プロジェクト及び災害の軽減に貢献するための地震火山観測研究計画の研究費を使用しました．