日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG47] 地殻流体と地殻変動

2024年5月28日(火) 13:45 〜 15:00 301B (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:北川 有一(産業技術総合研究所地質調査総合センター地震地下水研究グループ)、小泉 尚嗣(滋賀県立大学)、笠谷 貴史(海洋研究開発機構)、角森 史昭(東京大学大学院理学系研究科地殻化学実験施設)、座長:北川 有一(産業技術総合研究所地質調査総合センター地震地下水研究グループ)、角森 史昭(東京大学大学院理学系研究科地殻化学実験施設)

14:30 〜 14:45

[SCG47-04] 桜島火山沿岸の海中湧出温泉の分布と温度時系列変化

★招待講演

*北村 有迅1川端 訓代2、上野 大輔1、橋元 里菜1、阿部 雄太3 (1.鹿児島大学大学院理工学研究科理学専攻、2.鹿児島大学共通教育センター、3.鹿児島大学理学部地球環境科学科)

キーワード:地下水、温度ロギング、海中温泉、地殻流体

活火山では,その火山活動を適切に監視し盛衰を予測するためにさまざまなモニタリング手法が研究されている。噴火活動や噴出物は相対的に低頻度間欠的なデータであるため,より高解像度なデータ取得が重要となる。地震計,傾斜計,伸縮計などによる地殻活動の観測は,微小な活動の変化を捉え一定の成果を上げている。さらに詳細な活動のモニタリング対象として流体が注目されている。火口から放出される火山ガスはその採取方法に課題が残る一方で,山麓の温泉・湧水は手軽にアクセスできる利点がある。我々は,最も活動的な活火山の一つである桜島において周辺域の温泉水・湧水に注目している。陸域における温泉水・湧水の湧出地点・掘削井は限られているが,沿岸海中における湧出の全貌についてはほとんど知られていない。そこで本研究では,桜島火山沿岸の海中における火山性流体(海中温泉)の湧出状況や分布を調査し,さらにその流体パラーメータの変動を観測した。
海中温泉の分布を明らかにするため,聞き取り調査および現地調査を実施した。桜島沿岸における科学調査ダイビング経験者や漁業関係者から具体的な情報を得た。また,避難港を中心に現地調査を行い,目視による調査を行った。これらの情報をもとに,桜島の沿岸のほぼ全域にわたって12ヶ所の湧出地点からなる海中温泉分布図を作成した。上記,海中温泉分布図から,観測点St. 1〜4を選定した。これらの観測点において,海中湧出状況の確認,撮影,採水,観測(pH、電気伝導度),および温度ロガーの設置を行った。温度ロガーによる計測は2023年12月7日〜2024年2月10日の期間で実施した。
海中湧出流体は,pHが周辺海水より有意に低く,温度も高いことから火山性熱水起源と考えてよい。温度ロガーによる温度連続観測の結果,各観測点で固有の傾向が得られた。St. 1では12月中旬の約4日間の間に温度が約15度上昇する変化を記録した。その前後の期間はほぼ一定の温度であった。St. 2〜4は短周期の振動が見られ,St. 2,3は高温側にSt. 4は低温側に大きく振れている。これは潮汐の影響によるものと考えられ,前者は水深の浅化に伴う海水成分減少による温度上昇,後者は干潮時に陸化し外気温の影響による温度低下を示すと考えられる。潮汐の影響を除いてベースラインの変動に注目すると,14日から20日程度の周期で脈動するような傾向が見られる。これらは観測点固有の変動を示しているため,潮汐や気象条件などの地域的環境要因ではなく,各々の観測点における流体の流路における何らかの火山活動あるいは地殻活動を反映していると考えられる。