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[SGD01-P05] 光原子時計不確かさ評価のための相対重力計gPhoneXの性能評価
キーワード:重力計、秒の再定義、光原子時計
2015年頃より、光原子時計に基づく「秒の再定義」について、国際的な時間・周波数分野のコミュニティにおいて議論され始めた。光原子時計の開発の進展は目覚ましく、最近の結果では18桁の精度での周波数変化検出が実証されている。これは、センチメートルオーダー精度での高度差計測が可能なことを意味し、精度的には水準測量とほぼ同等である。一方で、「秒の再定義」を実現する上で、安定した光原子時計の運用が不可欠であり、その不確かさを定量的に把握しておく必要がある。特に地盤の上下変動をもたらす様々な要因、つまり10〜20cmの振幅を持つ固体地球潮汐、海洋潮汐荷重、地震による地殻変動、地下水変化に伴う地盤変動等の周波数変化への影響を理解することが重要となる。情報通信研究機構(NICT)は、In+とCa+を用いた光イオン時計、およびSr光格子時計の開発を進めている。特に、国際原子時(TAI)の校正のため、後者のデータは、国際度量衡局(BIPM)に2021年以降定期的に提供されている。これらの背景を踏まえ、2021年からは、これらの光原子時計近傍での各種測地観測を開始した。この一環として、重力連続観測のために、2021年末には、Micro-g LaCosteのgPhoneX相対重力計を導入した。この相対重力計の性能評価のため、我々は絶対重力測定との比較観測を実施した。2022年9月には富士山科学研究所(MFRI)において、東京大学地震研究所(ERI)のFG5絶対重力計との比較を、また同年11月には国土地理院石岡測地観測局においてFG5およびAQGの各絶対重力計との比較を行った。2022年9月28および29日の毎秒サンプリングgPhoneXデータについて、高周波のノイズを抑制するために30分の移動平均をかけたデータを作り、FG5データのエポックと同時刻の値で比較したところ、双方のばらつきのRMSは約22μGalであった。また、2023年9月にはMFRIおよび都留文科大学、また2024年1月には再度国土地理院石岡測地観測局において同様に比較観測を実施している。本講演ではこれらの結果をまとめて報告する。