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[SGD02-07] GNSS・InSAR時系列解析に基づく中央構造線断層帯(四国東部)のジオメトリ推定

キーワード:中央構造線、断層、地震間変位、GNSS、InSAR
アスペリティモデルによると、地震は断層面固着域におけるひずみ蓄積・解放のサイクルで生じている。そのため、断層運動様式を解明することは地震発生ポテンシャルを評価するうえで不可欠である。中央構造線は西南日本を東西に走る国内最長級の活断層帯であるものの(岡田, 1973)詳細な断層運動様式は解明されていない。
測地学的に推定できる断層運動様式の空間解像度は、用いる地殻変動場の空間解像度に依存する。高空間解像度の地殻変動を捉える技術として InSAR(Interferometric Synthetic Aperture Radar)が注目されている。中央構造線周辺は植生や地形起伏に富んでいるため、InSAR 観測におけるノイズ分離が困難であり、5~10 mm/yr という中央構造線の微小変位はいまだ InSAR で捉えられていない。そのような中、国内では植生に強いLバンド衛星 “ALOS-2” が2014年に打ち上げられ、時系列解析可能なほど ALOS-2 データが蓄積されてきた。また InSAR 大気ノイズ補正手法もより洗練されてきた。このような背景をふまえ、中央構造線周辺でも InSAR で地震間変位を検出できるのではないかと考えた。本研究では、GNSS と InSAR を用いて中央構造線(四国東部)の地震間変位を検出したうえで、断層運動様式を推定することを目的とする。
GNSS 解析では、東北沖地震余効変動やスロースリップイベントの影響が小さいと考えられる期間(2005/1/1~2009/12/31)の GEONET 日々の座標値(F5解)を用いた。四国周辺における GNSS 観測点の時系列変位のうち時間方向に線形な成分が南海トラフ・中央構造線の地震間変位を反映していると仮定し、GNSS 観測点の線形速度を計算した。InSAR 解析では、ALOS-2 の Stripmap モード観測で取得された4フレーム(Ascending : 128-670, 129-660, Descending : 21-2930, 21-2940)を用いた。まず干渉可能な全ペアについて RINC(ver. 0.45)を用いて干渉画像を作成した。その際、電離層ノイズ補正(Gomba et al., 2015)および中性大気ノイズ補正(Kinoshita, 2022)を適用した。東北沖地震の余効変動は Tobita(2016)に基づき補正した。その後、LiCSBAS2(Morishita, 2020)を用いて時系列解析を実施し、衛星視線方向の地殻変動速度を得た。プレートモデル MORVEL(Demets et al., 2010)を用いて GNSS・InSAR 観測速度場をアムールプレート基準に変換した後、両者の RMSE を求めた。いずれのフレームにおいても RMSE は 2 mm/yr を下回り、InSAR により GNSS と整合的な速度場を得ることができた。
次に、南海トラフにおけるプレートカップリングの影響を補正した。九州~東海地方の GNSS 観測点のうち中央構造線付近を除いた261点の水平速度を使用し、矩形断層モデル(Okada, 1992)インバージョンを通じて、南海トラフすべり欠損速度および中央構造線ブロック相対速度(右横ずれ方向に4.3 mm/yr)を推定した。得られたすべり欠損分布に基づき南海トラフの影響を補正したところ、Descending フレームでは断層線から北に離れるにつれて視線方向速度が小さくなるパターンが認められた。これは中央構造線フォワードモデル(固着深さ:15 km、dip角:60°)に基づく地震間変位速度と概ね整合する。一方、Ascending フレームや断層以南では、明瞭な中央構造線のシグナルは検出されなかった。
そこで断層以北の InSAR(Descending)速度場を用いて中央構造線のジオメトリを推定した。中央構造線(四国東部)を1枚の矩形断層モデルで近似し、固着域の下端(固着域の上端は地表で固定)と dip 角に対しグリッドサーチを行い、どのモデルが断層以北の InSAR 速度場を最もよく説明できるか調べた。InSAR 速度、断層モデルに基づく速度の差の標準偏差を計算したところ、固着深さ 16 km、dip角 48°のときに最小となり、断層以北の速度場を最もよく説明できた。地質学的研究(地震本部, 2017)によると、四国東部の“讃岐山脈南縁東部セグメント”の傾斜角は 40~45°、固着深さは 10~15 km であり、本研究の結果と概ね一致する。しかし、地震波による力学的な推定では傾斜角が垂直に近いとの報告もある(Muramatsu et al, 2023)。
断層以南、あるいは Ascending フレームで中央構造線のシグナルが検出されなかった主な原因として (1) 観測誤差がシグナルに対して大きいこと、(2) 南海トラフすべり欠損分布推定が妥当でなかったことの2点が考えられる。断層以南は地形起伏や植生に富んでおり、これらの観測に対する悪条件が InSAR 観測のノイズを増大させている可能性がある。また、Ascendingフレームで用いた SLC の数は17枚であり、このデータ数は Descending の 6 割程度である。Ascending フレームでは、Descending よりも時系列解析におけるノイズ分離効果が小さかった可能性がある。南海トラフすべり欠損分布推定に関しては、海底測地データを用いていないこと、中央構造線以外の地殻ブロック境界を考慮していないことが課題点である。
測地学的に推定できる断層運動様式の空間解像度は、用いる地殻変動場の空間解像度に依存する。高空間解像度の地殻変動を捉える技術として InSAR(Interferometric Synthetic Aperture Radar)が注目されている。中央構造線周辺は植生や地形起伏に富んでいるため、InSAR 観測におけるノイズ分離が困難であり、5~10 mm/yr という中央構造線の微小変位はいまだ InSAR で捉えられていない。そのような中、国内では植生に強いLバンド衛星 “ALOS-2” が2014年に打ち上げられ、時系列解析可能なほど ALOS-2 データが蓄積されてきた。また InSAR 大気ノイズ補正手法もより洗練されてきた。このような背景をふまえ、中央構造線周辺でも InSAR で地震間変位を検出できるのではないかと考えた。本研究では、GNSS と InSAR を用いて中央構造線(四国東部)の地震間変位を検出したうえで、断層運動様式を推定することを目的とする。
GNSS 解析では、東北沖地震余効変動やスロースリップイベントの影響が小さいと考えられる期間(2005/1/1~2009/12/31)の GEONET 日々の座標値(F5解)を用いた。四国周辺における GNSS 観測点の時系列変位のうち時間方向に線形な成分が南海トラフ・中央構造線の地震間変位を反映していると仮定し、GNSS 観測点の線形速度を計算した。InSAR 解析では、ALOS-2 の Stripmap モード観測で取得された4フレーム(Ascending : 128-670, 129-660, Descending : 21-2930, 21-2940)を用いた。まず干渉可能な全ペアについて RINC(ver. 0.45)を用いて干渉画像を作成した。その際、電離層ノイズ補正(Gomba et al., 2015)および中性大気ノイズ補正(Kinoshita, 2022)を適用した。東北沖地震の余効変動は Tobita(2016)に基づき補正した。その後、LiCSBAS2(Morishita, 2020)を用いて時系列解析を実施し、衛星視線方向の地殻変動速度を得た。プレートモデル MORVEL(Demets et al., 2010)を用いて GNSS・InSAR 観測速度場をアムールプレート基準に変換した後、両者の RMSE を求めた。いずれのフレームにおいても RMSE は 2 mm/yr を下回り、InSAR により GNSS と整合的な速度場を得ることができた。
次に、南海トラフにおけるプレートカップリングの影響を補正した。九州~東海地方の GNSS 観測点のうち中央構造線付近を除いた261点の水平速度を使用し、矩形断層モデル(Okada, 1992)インバージョンを通じて、南海トラフすべり欠損速度および中央構造線ブロック相対速度(右横ずれ方向に4.3 mm/yr)を推定した。得られたすべり欠損分布に基づき南海トラフの影響を補正したところ、Descending フレームでは断層線から北に離れるにつれて視線方向速度が小さくなるパターンが認められた。これは中央構造線フォワードモデル(固着深さ:15 km、dip角:60°)に基づく地震間変位速度と概ね整合する。一方、Ascending フレームや断層以南では、明瞭な中央構造線のシグナルは検出されなかった。
そこで断層以北の InSAR(Descending)速度場を用いて中央構造線のジオメトリを推定した。中央構造線(四国東部)を1枚の矩形断層モデルで近似し、固着域の下端(固着域の上端は地表で固定)と dip 角に対しグリッドサーチを行い、どのモデルが断層以北の InSAR 速度場を最もよく説明できるか調べた。InSAR 速度、断層モデルに基づく速度の差の標準偏差を計算したところ、固着深さ 16 km、dip角 48°のときに最小となり、断層以北の速度場を最もよく説明できた。地質学的研究(地震本部, 2017)によると、四国東部の“讃岐山脈南縁東部セグメント”の傾斜角は 40~45°、固着深さは 10~15 km であり、本研究の結果と概ね一致する。しかし、地震波による力学的な推定では傾斜角が垂直に近いとの報告もある(Muramatsu et al, 2023)。
断層以南、あるいは Ascending フレームで中央構造線のシグナルが検出されなかった主な原因として (1) 観測誤差がシグナルに対して大きいこと、(2) 南海トラフすべり欠損分布推定が妥当でなかったことの2点が考えられる。断層以南は地形起伏や植生に富んでおり、これらの観測に対する悪条件が InSAR 観測のノイズを増大させている可能性がある。また、Ascendingフレームで用いた SLC の数は17枚であり、このデータ数は Descending の 6 割程度である。Ascending フレームでは、Descending よりも時系列解析におけるノイズ分離効果が小さかった可能性がある。南海トラフすべり欠損分布推定に関しては、海底測地データを用いていないこと、中央構造線以外の地殻ブロック境界を考慮していないことが課題点である。