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[SGL17-P06] 富山県呉羽山丘陵におけるテフラ層序:Znp-大田テフラの再評価
キーワード:Znp-大田テフラ、テフラ層序、U-Pb年代、微量元素組成、テフロクロノロジー、鮮新世
富山県の呉羽山丘陵には、鮮新-更新世の地層が堆積しており、呉羽山断層の活動に伴い隆起したと考えられている[1]。下位より、西富山砂岩層、安養坊砂泥互層、長慶寺砂層、呉羽山礫層から構成され、西富山砂岩層には、釣部1テフラ(TR1)やZnp-大田テフラ(Znp-Ohta)に対比されるテフラが、長慶寺砂層には谷口テフラ(Tng)に対比されるテフラが、呉羽山礫層には上宝テフラが見出されている[2]。その中で、Znp-Ohtaは、中部日本を中心に日本に広く堆積しているテフラの一つである[3]。従来、ジルコンのフィッション・トラック年代や古地磁気層序から年代が検討されており(~5.2-3.3 Ma)、近年は、火砕流堆積物のジルコンU-Pb年代測定により3.94 ± 0.07 Maと報告されている[4]。従って、Znp-Ohtaは、前期鮮新世のテフロクロノロジーにおいて重要な鍵層となるテフラ層である。本研究では、呉羽山丘陵におけるZnp-Ohtaに対比される寺町テフラの模式地(富山市寺町けやき台公園付近)を対象とし、テフラ層序を確認した。この模式地では、層厚が4-5 mの寺町テフラのみ報告されていたが[5]、新たに2つのテフラ層を見出し、寺町テフラを含む3つのテフラの対比を行ったので報告する。
寺町テフラの模式地露頭を観察したところ、最下部から、ほぼ連続して①50 cm以上のテフラ層、②2 m以上のテフラ層(軽石を含む)、角礫・円礫からなる約50 cmの礫層を挟み、③2.5 m以上のテフラ層を認定した(図)。テフラ層③の上部は再堆積と考えられる軽石を含むラミナが発達した砂層からなる。テフラ層①、②、③から試料A、B、Cを採取し、粒子組成分析、火山ガラスの主要元素及び微量元素組成分析、火山ガラスの屈折率測定を行った。主要・微量元素組成分析は、日本原子力研究開発機構 東濃地科学センターの電子線マイクロアナライザ(EPMA:JEOL, JXA-8530F)およびレーザーアブレーション質量分析装置(LA:Photon Machines Inc., Analyte G2, ICP-MS:Thermo Fisher Scientific, iCAP TQ)により実施し、屈折率測定は、株式会社古澤地質に依頼し、温度変化型屈折率測定装置(MAIOT)で行った。
全ての試料A、B、Cでバブルウォールタイプの火山ガラスを含み発泡がよく、特に試料BでY字型の発泡壁ジャンクションが発達していた。また、主要元素組成や屈折率は、試料A、B、Cで類似した組成をもっていた。微量元素組成(特にBa/La比、La/Y比)により試料A、B、Cを明瞭に識別でき、A、B、Cでそれぞれ、Ba/La = 38.2、La/Y = 1.65、Ba/La = 38.2、La/Y = 0.663、Ba/La = 20.0、La/Y = 1.80が得られた。これらのテフラの特徴から、テフラ層①②③は、それぞれ、TR1(~4.2 Ma)、Znp-Ohta、Tng(~2.2 Ma)に対比される可能性が高い。
従来、寺町テフラの模式地には、Znp-Ohtaのみ認定されていたが、本研究により、数mの間に4.2~2.2 Maのテフラ層が堆積していることが示された。これらの3つのテフラ層が連続して認定されている露頭は他に見出されていない。この結果は、呉羽山丘陵の形成史を理解する上で重要である。また、テフラ層②とテフラ層③の間には100万年以上の年代差があり、礫層が確認されることから、不整合が示唆される。従って、テフラ層②は削剥され、Znp-Ohtaが堆積した際の層厚は、現在堆積している層厚よりも厚かった可能性も考えられる。今後は、各テフラのより詳細な年代を明らかにするため、各テフラからジルコンを分離し、U-Pb年代測定を実施する予定である。テフラの絶対年代を明らかにすることで、テフロクロノロジーにおける鍵層としての年代学的な信頼性が向上すると考えられる。
[1] 町田ほか (2006)日本の地形5 中部, 384p. [2] 田村 (2005) 地学雑誌, 114, 631-637. [3] Tamura et al. (2008) Quant. Int., 178, 85-99. [4] 植木ほか (2019) 地質学雑誌, 125, 227-236. [5] 田村・山崎 (2004) 地質学雑誌, 110, 417-436.
寺町テフラの模式地露頭を観察したところ、最下部から、ほぼ連続して①50 cm以上のテフラ層、②2 m以上のテフラ層(軽石を含む)、角礫・円礫からなる約50 cmの礫層を挟み、③2.5 m以上のテフラ層を認定した(図)。テフラ層③の上部は再堆積と考えられる軽石を含むラミナが発達した砂層からなる。テフラ層①、②、③から試料A、B、Cを採取し、粒子組成分析、火山ガラスの主要元素及び微量元素組成分析、火山ガラスの屈折率測定を行った。主要・微量元素組成分析は、日本原子力研究開発機構 東濃地科学センターの電子線マイクロアナライザ(EPMA:JEOL, JXA-8530F)およびレーザーアブレーション質量分析装置(LA:Photon Machines Inc., Analyte G2, ICP-MS:Thermo Fisher Scientific, iCAP TQ)により実施し、屈折率測定は、株式会社古澤地質に依頼し、温度変化型屈折率測定装置(MAIOT)で行った。
全ての試料A、B、Cでバブルウォールタイプの火山ガラスを含み発泡がよく、特に試料BでY字型の発泡壁ジャンクションが発達していた。また、主要元素組成や屈折率は、試料A、B、Cで類似した組成をもっていた。微量元素組成(特にBa/La比、La/Y比)により試料A、B、Cを明瞭に識別でき、A、B、Cでそれぞれ、Ba/La = 38.2、La/Y = 1.65、Ba/La = 38.2、La/Y = 0.663、Ba/La = 20.0、La/Y = 1.80が得られた。これらのテフラの特徴から、テフラ層①②③は、それぞれ、TR1(~4.2 Ma)、Znp-Ohta、Tng(~2.2 Ma)に対比される可能性が高い。
従来、寺町テフラの模式地には、Znp-Ohtaのみ認定されていたが、本研究により、数mの間に4.2~2.2 Maのテフラ層が堆積していることが示された。これらの3つのテフラ層が連続して認定されている露頭は他に見出されていない。この結果は、呉羽山丘陵の形成史を理解する上で重要である。また、テフラ層②とテフラ層③の間には100万年以上の年代差があり、礫層が確認されることから、不整合が示唆される。従って、テフラ層②は削剥され、Znp-Ohtaが堆積した際の層厚は、現在堆積している層厚よりも厚かった可能性も考えられる。今後は、各テフラのより詳細な年代を明らかにするため、各テフラからジルコンを分離し、U-Pb年代測定を実施する予定である。テフラの絶対年代を明らかにすることで、テフロクロノロジーにおける鍵層としての年代学的な信頼性が向上すると考えられる。
[1] 町田ほか (2006)日本の地形5 中部, 384p. [2] 田村 (2005) 地学雑誌, 114, 631-637. [3] Tamura et al. (2008) Quant. Int., 178, 85-99. [4] 植木ほか (2019) 地質学雑誌, 125, 227-236. [5] 田村・山崎 (2004) 地質学雑誌, 110, 417-436.