14:45 〜 15:00
[SSS07-13] DASと地震計上下動記録によるSPAC法: DAS記録のみを用いたSPAC法における,Love波のRayleigh波位相速度推定へ与える影響
キーワード:Distributed acoustic sensing(DAS)、地震波干渉法、海底ケーブル、DASと地震計
近年,光ファイバをセンサとして,歪みを数m間隔で数十kmの長距離観測が行えるDistributed Acoustic Sensing(以下 DAS)が地球科学分野に応用されつつある(e.g., Zhan 2019).DASデータに対してspatial autocorrelation (以下SPAC) 法を適用し,表面波の位相速度分散曲線から堆積層・最上部地殻のS波速度構造を高分解能に推定できる(e.g., Fukushima et al. 2022).先行研究では,Rayleigh波のみが,DAS記録間のcross-spectrumに寄与する,という条件で,Rayleigh波の位相速度を推定している.しかし,Nakahara et al. (2021)により定式化されたDAS記録のcross-spectrumの解析解(以下,SPAC表現)によると,Rayleigh波に加えてLove波もcross-spectrumに寄与することが知られている.従って,Love波を考慮しない影響により,DASデータを用いたSPAC法のRayleigh波位相速度推定の精度が低下している可能性がある(添付図A, 式A-2).
本研究では,DAS記録にSPAC法を適用する従来の解析法について,Love波とRayleigh波が混在する効果を検討した.まず,DASと地震計上下動記録を組み合わせたSPAC(以下,DAS-vertical)表現の定式化を行うことにより,DAS-verticalからはRayleigh波だけを取り出せることを示し(添付図A, 式A-1),Rayleigh波位相速度の高精度推定法を確立した.次に,三陸沖におけるDAS観測記録と同ケーブルシステム上の海底地震計(SOB3)の上下動記録によるDAS-Verticalと,DAS観測記録同士によるSPAC法(以下,DAS-DAS)について比較を行った.その結果,周波数 0.14-0.20Hz間では,DAS-DASとDAS-Verticalの位相速度は誤差の範囲内で一致した. その一方で,0.10-0.14 Hz間ではDAS-DASから推定した位相速度はDAS-Verticalから推定される位相速度よりも速く見積もられた.
DAS-DAS解析におけるLove波のRayleigh波・位相速度推定への影響を調べるために,Synesthetic testを行った.Synthetic testでは,まず,Nakahara et al. (2021)により得られたSPAC表現を用いて,Rayleigh波とLove波の両方の寄与を考慮したcross-spectrum (添付図B-2, 緑線)を計算した.その次に,計算したcross-spectrumに対して,Rayleigh波だけを考慮したcross-spectrum(図B-2, 黒線)をフィッティングすることで,DAS-DAS解析におけるRayleigh波の位相速度を推定した.その結果,Synthetic testは観測結果をよく再現できた(添付図B-1).DAS-DAS解析におけるLove波の影響は,Rayleigh波とLove波の振幅比・位相速度比,そしてアレイサイズに依存することが,Synthetic testにより明らかになった. とりわけ興味深いのは,Love波の位相速度がRayleigh波の位相速度よりも遅いにもかかわらず,DAS-DAS解析により推定される位相速度は,Rayleigh波の位相速度よりも早く見積もられることである.これは,Rayleigh波とLove波のSPAC表現が異なるベッセル関数から構成されており,今回の場合では,Love波の位相速度はRayleigh波の位相速度よりも遅いが,cross-spectrumにおける見かけの波長がLove波の方がRayleigh波よりも長いためである(添付図B-2).
以上の結果より,DAS-Verticalでは,ラブ波の影響を受けることなくレイリー波の位相速度が計測可能であるため,より精度の高いS波速度構造を推定可能であると考えられる.
本研究では,DAS記録にSPAC法を適用する従来の解析法について,Love波とRayleigh波が混在する効果を検討した.まず,DASと地震計上下動記録を組み合わせたSPAC(以下,DAS-vertical)表現の定式化を行うことにより,DAS-verticalからはRayleigh波だけを取り出せることを示し(添付図A, 式A-1),Rayleigh波位相速度の高精度推定法を確立した.次に,三陸沖におけるDAS観測記録と同ケーブルシステム上の海底地震計(SOB3)の上下動記録によるDAS-Verticalと,DAS観測記録同士によるSPAC法(以下,DAS-DAS)について比較を行った.その結果,周波数 0.14-0.20Hz間では,DAS-DASとDAS-Verticalの位相速度は誤差の範囲内で一致した. その一方で,0.10-0.14 Hz間ではDAS-DASから推定した位相速度はDAS-Verticalから推定される位相速度よりも速く見積もられた.
DAS-DAS解析におけるLove波のRayleigh波・位相速度推定への影響を調べるために,Synesthetic testを行った.Synthetic testでは,まず,Nakahara et al. (2021)により得られたSPAC表現を用いて,Rayleigh波とLove波の両方の寄与を考慮したcross-spectrum (添付図B-2, 緑線)を計算した.その次に,計算したcross-spectrumに対して,Rayleigh波だけを考慮したcross-spectrum(図B-2, 黒線)をフィッティングすることで,DAS-DAS解析におけるRayleigh波の位相速度を推定した.その結果,Synthetic testは観測結果をよく再現できた(添付図B-1).DAS-DAS解析におけるLove波の影響は,Rayleigh波とLove波の振幅比・位相速度比,そしてアレイサイズに依存することが,Synthetic testにより明らかになった. とりわけ興味深いのは,Love波の位相速度がRayleigh波の位相速度よりも遅いにもかかわらず,DAS-DAS解析により推定される位相速度は,Rayleigh波の位相速度よりも早く見積もられることである.これは,Rayleigh波とLove波のSPAC表現が異なるベッセル関数から構成されており,今回の場合では,Love波の位相速度はRayleigh波の位相速度よりも遅いが,cross-spectrumにおける見かけの波長がLove波の方がRayleigh波よりも長いためである(添付図B-2).
以上の結果より,DAS-Verticalでは,ラブ波の影響を受けることなくレイリー波の位相速度が計測可能であるため,より精度の高いS波速度構造を推定可能であると考えられる.