[S-SS07] 地震波伝播:理論と応用

[SSS07-P01] 離散化波数法による津波を含む全波動計算２：Surface gravity approximation

*竹中 博士¹、渡邉 禎貢¹、中村 武史² (1.岡山大学、2.電力中央研究所)

キーワード：近地津波、地震波動、離散化波数法

平らな地球モデル（水平成層構造）における近地の地震動の計算にはreflectivity法と呼ばれる半解析的な手法が用いられており，断層震源のすべりインバージョンのGreen関数の計算などに利用されている。竹中・他（2023, JpGU）は，重力項（一定の重力加速度）を考慮した均質な海水層を導入することにより，近地の海底下で発生した地震による地震動や海中音波だけでなく津波も含む全波動を計算できるようにreflectivity法を拡張した。reflectivity法のスキームにはKennett and Kerry (1979)流の反射行列・透過行列に基づく解法を採用し，波数積分にBouchon (1981)の離散化波数法(discrete wavenumber summation method)を使用しており，近地の地震動，海中音波，津波やそれらに伴う任意の場所での変位，速度，加速度，ひずみ，応力または圧力波形を求めることができる。竹中・他（2023, 地震学会）は，さらに，海水層として均質ではなく（重力下の圧縮性）密度成層流体が扱えるように拡張した。本研究では，これまでのような厳密なアプローチではなく，通常の地震動計算用に利用されている（海水を含む）水平成層モデルのreflectivity法（離散化波数法）の既存の計算プログラムにほんの少し手を加えるだけで，十分な精度で津波の計算まできわめて簡便に実現する近似法を提案する。手を加える箇所は，海面の反射係数のみである。海面における音波の反射係数は-1であるが，それを重力がある場合の反射係数（重力加速度と周波数と水平波数または水平スローネスに依存）に置き換えるだけで津波を再現できる。ここでは，この近似法をsurface gravity approximationと呼ぶ。本発表では，この近似の実装の簡便さと精度の高さを示す。

Bouchon, M. (1981). A simple method to calculate Green's functions for elastic layered media. Bulletin of the Seismological Society of America, 71(4), 959-971.

Kennett, B. L. N. and N. J. Kerry (1979). Seismic waves in a stratified half space. Geophysical Journal of the Royal Astronomical Society, 57(3), 557-583.