日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-TT 計測技術・研究手法

[S-TT34] 空中からの地球計測とモニタリング

2024年5月27日(月) 09:00 〜 10:15 202 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:小山 崇夫(東京大学地震研究所)、楠本 成寿(京都大学大学院理学研究科附属地球熱学研究施設)、光畑 裕司(独立行政法人 産業技術総合研究所)、上田 匠(早稲田大学)、座長:小山 崇夫(東京大学地震研究所)、楠本 成寿(京都大学大学院理学研究科附属地球熱学研究施設)、光畑 裕司(独立行政法人 産業技術総合研究所)、上田 匠(早稲田大学)

09:45 〜 10:00

[STT34-04] ドローン搭載用火山プルーム自動採取装置SelPSの開発

★招待講演

*角皆 潤1、宮木 裕崇1伊藤 昌稚1中川 書子1、吉川 慎2宇津木 充2横尾 亮彦2 (1.名古屋大学大学院環境学研究科、2.京都大学大学院理学研究科)

キーワード:火山ガス、プルーム、二酸化炭素、UAS、自動プルーム採取装置

火山ガスの化学組成や同位体組成の絶対値とその時間変化は、火山性流体の挙動や起源を推定する上で、また火山活動の現状や今後の推移を把握する上で有用な指標となる。しかし、火山ガスは噴気孔に直接アクセスしないと採取出来ないため、火山ガスの化学組成や同位体組成が報告される火山はごく一部に限られ、また本格的な噴火活動が始まると、火山ガスデータの取得は不可能となっていた。そこで、火山ガスの代わりに噴煙 (プルーム;火山ガスが大気中に放出され、希釈・冷却されることで形成される) の化学組成や同位体組成を測定し、ここから大気成分の寄与を補正することで、火山ガスの化学組成や同位体組成を推定する努力が、過去20年間に渡って行われて来た。現在では、濃度であれば、多くの化学成分について火山ガス組成が推定出来るようになってきた。しかし同位体組成となると、より火山ガス濃度の高い (=大気による希釈の小さい) 噴煙試料が必要となるため、報告出来る火山は限られていた。
 そこで我々は、ドローンに代表されるUAS (Unoccupied Aerial Systems) を用いて噴煙試料を採取することを企画し、これに搭載する自律型の自動サンプラー (SelPS) を製作した。そして2019年8月に阿蘇中岳において実際にドローンに搭載して噴煙試料の採取に成功したが (Shingubara et al., JVGR, 2021)、その際火口縁で同時にマニュアル操作で採取した噴煙試料と比較して、最大火山ガス濃度は50%増程度にとどまり、大気との間の濃度差が小さいCO2では、火山ガス中の13C/12C比の推定が出来なかった。そこで2020-21年はSelPSにいくつかの改良を施し、阿蘇中岳(熊本県)で再度ドローンに搭載して噴煙試料の採取試験を行い、より高濃度の噴煙試料の採取に成功し、火山ガス中のCO213C/12C比推定を実現した (Tsunogai et al., Front. Earth Sci. 2022)。現在までに、草津白根山(群馬県)や樽前山(北海道)でも高濃度の噴煙試料の採取に成功している。本講演ではSelPSの詳細とその成果について、ご紹介する。
本研究は、文部科学省次世代火山研究・人材育成総合プロジェクト (課題B「先端的な火山観測技術の開発」) の助成を受けて実現しました。また現地観測では井上寛之様 (京大)、阿蘇火山防災会議協議会の皆様に大変お世話になりました。