17:15 〜 18:45
[STT39-P02] 3次元不均質物性モデルによる1944年東南海・1946年南海地震後の粘弾性緩和を考慮した西南日本への応力載荷計算
キーワード:応力蓄積、南海トラフ、フィリピン海プレート、粘弾性、有限要素法、プレート内地震
南海トラフは過去〜M8級の巨大地震が100-200年程度の間隔で繰り返し起こっており、近い将来の発生が危惧されている。過去の地震発生記録からは巨大地震発生時の50年前から10年後にかけて西南日本の内陸域でも地震活動が活発になることが示されている。このような内陸地震の活動予測を行う上で、巨大地震の発生と内陸地震発生の力学的な連関を示すことが重要である。その目的のため、本研究では1944年東南海・1946年南海地震による内陸の震源断層に対する応力載荷計算を行う。巨大地震後の変動については、2011年東北沖地震の余効変動で示されたようにアセノスフェアの粘弾性緩和の効果が支配的である。粘弾性緩和は、上盤側だけでなくスラブ下部の低粘性層を考慮する必要性も示されている。そこで、本研究の応力計算においては、上記のような現実的な粘性構造を取り入れた大規模3次元有限要素モデルを用いる。このような大規模モデルは自由度が大きく、計算時間が長くなるという問題がある。本研究では、地殻変動計算のため、近年の大規模な計算機システムを効率的に用いることによって計算時間を短縮した。計算の結果、西日本の内陸域で広範囲に0.1 MPa以上の応力変化が引き起こされた。しかし、粘弾性緩和の影響は4年間ではほとんど見られなかった。一方、スラブ内部の応力分布は、スラブ下部の低粘性層の粘性緩和の影響を大いに被り、低粘性層の影響を考慮する必要がある。また、西南日本の震源断層においてクーロン破壊応力(ΔCFS)を求めた。ΔCFSは東南海地震後には中部〜近畿地方において正となり、南海地震後に近畿地方や中央構造線の周囲の断層で正となる傾向がある。九州の断層は一貫して負であった。過去に被害地震を起こした断層においてΔCFSとの関連を調べたところ、東南海・南海地震でΔCFSが正となる断層における地震は、安政(1854年)、昭和(1944年、1946年)の巨大地震後10年程度で発生していた。一方、東南海・南海地震でΔCFSが負となる断層における地震は、昭和(1944年、1946年)の巨大地震の前50年の間、または近年(1995年以降)発生していた。東南海・南海地震による断層への応力載荷はせいぜい0.1 MPa程度であり、一般的な応力降下量よりは一桁以上小さい。それにもかかわらず上記の関連性を示すのは、南海トラフの巨大地震サイクルを通してΔCFSが正の断層群と負の断層群で応力蓄積過程や破壊強度に達するタイミングが明確に異なる故であると考えられる。