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[SVC27-P01] アイスランド、レイキャネス半島における2023年からの火山活動をめぐる防災対応と住民避難の動き
キーワード:グリンダヴィク、溶岩流、割れ目噴火、アイスランド気象庁、アイスランド国民保護・危機管理局
2023年12月に始まったアイスランド・レイキャネス半島における火山噴火に関して、インターネットを利用して得られた現地の監視・観測機関、防災組織および住民の対応についての情報を時系列に沿って整理し、火山噴火時の効率的な避難に重要となる要件について考察したので、その概要を報告する。
富士山科学研究所では、富士山が噴火した際の実践的な避難計画を作成するため、過去の火山災害事例の時系列分析に関する研究を2024年度より開始する予定である。富士山における噴火では想定される現象とその規模が多様である半面、300年以上、噴火が発生していないため、周辺の住民や自治体職員には噴火対応の経験がない。そのため、国内外の噴火において住民避難が実施された事例に関する情報を収集し、迅速な避難行動を実現するための要件を探る研究計画としている。
上記研究の準備を進める中、アイスランドのレイキャネス半島では、2023年12月に火山噴火が始まった。そこで最初の検討事例として、今回の監視・観測機関、防災組織および住民の対応に関する情報をインターネットで収集し、時系列に沿って整理した上で、火山噴火時に重要な防災対応や効率的な避難のための要件を考察した。
今回の一連のレイキャネス半島での噴火は2023年12月18日、2024年1月14日、同年2月8日の合計3回、発生している(2024年2月15日現在) 。火山噴火に関する情報のうち、火山活動に関するものはアイスランド気象庁(IMO)から、避難行動や住民生活に関係するものは国民保護・危機管理局から発信された。IMOでは、2023年10月25日に地震活動の高まりを観測し、噴火へ移行することを懸念した。それを受けて、同日、国民保護・危機管理局は、国民保護レベル (Civil Protection Emergency Levels/Phase) を通常から1段階上げたUncertainty Phase (生命、財産、地域社会や環境に対する脅威が認知された段階) に引き上げた。
11月10日には地震活動のさらなる高まりが見られ、約3700人が居住する大西洋岸の町・グリンダヴィク周辺で地殻変動による亀裂や陥没が発生した。10日の夜に国民保護レベルはAlert Phase (地域における緊急事態への準備が強化され、避難等の予防的措置が講じられる) に引き上げられ、グリンダヴィク住民はその日の深夜までに避難した。アイスランド国営放送(RÚV)等の報道によれば住民は、当局の呼びかけに従い速やかに自家用車等で町を脱出した。このため、いずれの3回の噴火時において国民保護レベルは、最高レベルのEmergency / Distress Phase (緊急段階がすでに始まっており、人命の損失を防ぐための即時対策が講じられる非常事態宣言に相当する) に引き上げられたが、既にグリンダヴィク住民は全員、避難した状況であった。
結果として11月10日の地震活動と地殻変動を受けて、半日で住民が避難したため、噴火による人的被害が発生しなかった。これは10月25日の地震活動が開始した時点からIMOと国民保護・危機管理局がほぼ同時にホームページで情報発信を開始するなど情報発信を進め、10日夜には関係機関による会見などがメディアで報道されたこと等により、地域住民に火山活動への切迫度が伝わったためと考えられる。この動きは、国民保護レベルがUncertainty Phaseに引き上げられたことで関係機関同士の連絡や明確な情報伝達の活動が促進され、危険評価が定期的に実施された結果であったと考えられる。
IMOの発表では今後もレイキャネス半島では、火山活動の活発な状態が継続していくとの見通しである。グリンダヴィクの全住民の避難が継続している。RÚVなど現地の報道では火山噴火の影響について報道が続いている。それによるとグリンダヴィク港や水産物加工施設の操業停止が長引き、従業員の解雇など雇用への影響が発生している。グリンダヴィク住民は、国等の支援によってグリンダヴィク以外の地域の賃貸住宅に分散するなどして避難したが、従来のコミュニティを保つことができず、いつまで避難が続くが分からない状況にある。立ち入り禁止区域の土地・住宅について、国が買い取るよう住民集会で要望が出されるなど避難者への財政面の支援への要望も強く出されている。さらに3回目の噴火(2月8日)で溶岩流がスヴァルツェンギ発電所からの送電網と温水パイプを破壊し、グリンダヴィク以外のレイキャネス半島のエリアでも暖房システムの停止および温水不足が発生した。そのため国民保護・危機管理局は地域住民に暖房や温水使用の制限を呼びかけた。また同溶岩流が破壊したレイキャネス半島を横断する自動車道路も閉鎖されたままとなっている。
このようにレイキャネス半島では、火山活動が続いていることで周辺の地域経済への影響と住民への心理的及び財政的負担が続いていることが示唆される。
富士山科学研究所では、富士山が噴火した際の実践的な避難計画を作成するため、過去の火山災害事例の時系列分析に関する研究を2024年度より開始する予定である。富士山における噴火では想定される現象とその規模が多様である半面、300年以上、噴火が発生していないため、周辺の住民や自治体職員には噴火対応の経験がない。そのため、国内外の噴火において住民避難が実施された事例に関する情報を収集し、迅速な避難行動を実現するための要件を探る研究計画としている。
上記研究の準備を進める中、アイスランドのレイキャネス半島では、2023年12月に火山噴火が始まった。そこで最初の検討事例として、今回の監視・観測機関、防災組織および住民の対応に関する情報をインターネットで収集し、時系列に沿って整理した上で、火山噴火時に重要な防災対応や効率的な避難のための要件を考察した。
今回の一連のレイキャネス半島での噴火は2023年12月18日、2024年1月14日、同年2月8日の合計3回、発生している(2024年2月15日現在) 。火山噴火に関する情報のうち、火山活動に関するものはアイスランド気象庁(IMO)から、避難行動や住民生活に関係するものは国民保護・危機管理局から発信された。IMOでは、2023年10月25日に地震活動の高まりを観測し、噴火へ移行することを懸念した。それを受けて、同日、国民保護・危機管理局は、国民保護レベル (Civil Protection Emergency Levels/Phase) を通常から1段階上げたUncertainty Phase (生命、財産、地域社会や環境に対する脅威が認知された段階) に引き上げた。
11月10日には地震活動のさらなる高まりが見られ、約3700人が居住する大西洋岸の町・グリンダヴィク周辺で地殻変動による亀裂や陥没が発生した。10日の夜に国民保護レベルはAlert Phase (地域における緊急事態への準備が強化され、避難等の予防的措置が講じられる) に引き上げられ、グリンダヴィク住民はその日の深夜までに避難した。アイスランド国営放送(RÚV)等の報道によれば住民は、当局の呼びかけに従い速やかに自家用車等で町を脱出した。このため、いずれの3回の噴火時において国民保護レベルは、最高レベルのEmergency / Distress Phase (緊急段階がすでに始まっており、人命の損失を防ぐための即時対策が講じられる非常事態宣言に相当する) に引き上げられたが、既にグリンダヴィク住民は全員、避難した状況であった。
結果として11月10日の地震活動と地殻変動を受けて、半日で住民が避難したため、噴火による人的被害が発生しなかった。これは10月25日の地震活動が開始した時点からIMOと国民保護・危機管理局がほぼ同時にホームページで情報発信を開始するなど情報発信を進め、10日夜には関係機関による会見などがメディアで報道されたこと等により、地域住民に火山活動への切迫度が伝わったためと考えられる。この動きは、国民保護レベルがUncertainty Phaseに引き上げられたことで関係機関同士の連絡や明確な情報伝達の活動が促進され、危険評価が定期的に実施された結果であったと考えられる。
IMOの発表では今後もレイキャネス半島では、火山活動の活発な状態が継続していくとの見通しである。グリンダヴィクの全住民の避難が継続している。RÚVなど現地の報道では火山噴火の影響について報道が続いている。それによるとグリンダヴィク港や水産物加工施設の操業停止が長引き、従業員の解雇など雇用への影響が発生している。グリンダヴィク住民は、国等の支援によってグリンダヴィク以外の地域の賃貸住宅に分散するなどして避難したが、従来のコミュニティを保つことができず、いつまで避難が続くが分からない状況にある。立ち入り禁止区域の土地・住宅について、国が買い取るよう住民集会で要望が出されるなど避難者への財政面の支援への要望も強く出されている。さらに3回目の噴火(2月8日)で溶岩流がスヴァルツェンギ発電所からの送電網と温水パイプを破壊し、グリンダヴィク以外のレイキャネス半島のエリアでも暖房システムの停止および温水不足が発生した。そのため国民保護・危機管理局は地域住民に暖房や温水使用の制限を呼びかけた。また同溶岩流が破壊したレイキャネス半島を横断する自動車道路も閉鎖されたままとなっている。
このようにレイキャネス半島では、火山活動が続いていることで周辺の地域経済への影響と住民への心理的及び財政的負担が続いていることが示唆される。