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[SVC30-P10] 玄武岩質マグマによる伊豆大島の大規模噴火のマグマシステムと火道ダイナミクス
キーワード:苦鉄質マグマ、爆発的噴火、伊豆大島
プリニー式噴火やサブプリニー式噴火のような爆発的噴火は, 一般的には珪長質マグマによって引き起こされると考えられているが, 苦鉄質マグマによる爆発的噴火の事例も複数報告されている(Foshag and González, 1956; Williams, 1983; 宮地, 1984; Walker et al., 1984; Coltelli et al., 1998; Perez and Freundt, 2006; Wehrmann et al., 2006; Pioli et al., 2008). 伊豆大島は主に玄武岩および玄武岩質安山岩を噴出する活火山であるが, これまで150年前後の周期で爆発的な大規模噴火(噴出量1億トン以上)を起こしてきた(Nakamura, 1964). 最新の大規模噴火は1777年に始まった安永噴火(Y1噴火)である. Y1噴火は複数のイベントに分けられ, 噴火開始の約1年後に最盛期の爆発的イベントが発生したと考えられている(Ikenaga et al., 2023). 本研究では伊豆大島で爆発的な大規模噴火を引き起こすマグマシステムや火道ダイナミクスについて, Y1噴火を中心としつつ, その他の大規模噴火や中規模噴火を含めて噴出物の分析を行い考察した.
まずY1噴火の噴出物について, 全岩組成, 斜長石斑晶のコア組成, メルト組成を分析した. 斜長石コア組成やメルト組成は噴火を通じて一定である一方, 全岩のAl2O3量は噴火が進むにつれて次第に増加する. 斜長石斑晶量も増加していることから, この全岩Al2O3量の増加は斜長石斑晶量の増加によるものと考えられる. また全岩Al2O3量は噴火イベント間でステップ状に増加している. Y1噴火よりも古いいくつかの大規模噴火(Y2, Y3, Y4, Y6)についても全岩組成を分析したところ, Y3およびY4噴火の最中にY1噴火と同様の全岩Al2O3量の増加が認められた.
次にY1, Y2, Y4, Y6の大規模噴火と, 1986年の中規模噴火のうち山頂A火口でのストロンボリ式噴火について噴出物組織を分析した. 石基組織を観察すると, 大規模噴火では石基にマイクロライトが見られる噴出物が多いが, Y1噴火で最も爆発的なイベントの堆積物であるUnit Cではマイクロライトがほぼ見られない. 気泡サイズ分布を測定した結果, Y1噴火のUnit Cが小さい気泡に最も富むことがわかった. またY1噴火と1986年噴火について斜長石斑晶のサイズ分布を測定したところ, 斜長石斑晶に富む噴出物ほど大きな斜長石斑晶が多い傾向があった. 大規模噴火の斜長石斑晶には明瞭な組成のゾーニングはあまり見られないが, 1986年噴火の斜長石斑晶では低An値のリムが見られる.
大規模噴火の堆積物を複数の層準でサンプリングして得られた詳細な全岩組成データについて主成分分析を行うと, Kuritani et al. (2018)によって既に指摘されているように, 伊豆大島では浅部に無斑晶質マグマ, 深部に斑晶質マグマが存在することが示唆される. 従来は無斑晶質マグマが分化しているとされていたが, 今回得られたデータから深部の斑晶質マグマが次第に分化していると考えられる. 伊豆大島のマグマは水に富んでいる(3–5 wt.%)と考えられており(Hamada et al., 2011), 斜長石斑晶のサイズ分布も考慮すると, 無斑晶質マグマでは斜長石斑晶が沈降によって除去されている可能性がある. 深部マグマは元々斑晶質だった可能性と, 深部から浅部に上昇する際の減圧で斜長石斑晶が結晶化した可能性がある.
伊豆大島の爆発的噴火は2種類に分けられる. 1つはマイクロライトが晶出しているもので, このような噴火ではマイクロライトによってマグマの粘性が増加している可能性が高い. もう1つはY1噴火のUnit Cのように斜長石斑晶に富む深部マグマによって引き起こされるもので, このような噴火では大量の斑晶質マグマが深部から高速で上昇することで噴火がより強くなっていた可能性が示唆される.
まずY1噴火の噴出物について, 全岩組成, 斜長石斑晶のコア組成, メルト組成を分析した. 斜長石コア組成やメルト組成は噴火を通じて一定である一方, 全岩のAl2O3量は噴火が進むにつれて次第に増加する. 斜長石斑晶量も増加していることから, この全岩Al2O3量の増加は斜長石斑晶量の増加によるものと考えられる. また全岩Al2O3量は噴火イベント間でステップ状に増加している. Y1噴火よりも古いいくつかの大規模噴火(Y2, Y3, Y4, Y6)についても全岩組成を分析したところ, Y3およびY4噴火の最中にY1噴火と同様の全岩Al2O3量の増加が認められた.
次にY1, Y2, Y4, Y6の大規模噴火と, 1986年の中規模噴火のうち山頂A火口でのストロンボリ式噴火について噴出物組織を分析した. 石基組織を観察すると, 大規模噴火では石基にマイクロライトが見られる噴出物が多いが, Y1噴火で最も爆発的なイベントの堆積物であるUnit Cではマイクロライトがほぼ見られない. 気泡サイズ分布を測定した結果, Y1噴火のUnit Cが小さい気泡に最も富むことがわかった. またY1噴火と1986年噴火について斜長石斑晶のサイズ分布を測定したところ, 斜長石斑晶に富む噴出物ほど大きな斜長石斑晶が多い傾向があった. 大規模噴火の斜長石斑晶には明瞭な組成のゾーニングはあまり見られないが, 1986年噴火の斜長石斑晶では低An値のリムが見られる.
大規模噴火の堆積物を複数の層準でサンプリングして得られた詳細な全岩組成データについて主成分分析を行うと, Kuritani et al. (2018)によって既に指摘されているように, 伊豆大島では浅部に無斑晶質マグマ, 深部に斑晶質マグマが存在することが示唆される. 従来は無斑晶質マグマが分化しているとされていたが, 今回得られたデータから深部の斑晶質マグマが次第に分化していると考えられる. 伊豆大島のマグマは水に富んでいる(3–5 wt.%)と考えられており(Hamada et al., 2011), 斜長石斑晶のサイズ分布も考慮すると, 無斑晶質マグマでは斜長石斑晶が沈降によって除去されている可能性がある. 深部マグマは元々斑晶質だった可能性と, 深部から浅部に上昇する際の減圧で斜長石斑晶が結晶化した可能性がある.
伊豆大島の爆発的噴火は2種類に分けられる. 1つはマイクロライトが晶出しているもので, このような噴火ではマイクロライトによってマグマの粘性が増加している可能性が高い. もう1つはY1噴火のUnit Cのように斜長石斑晶に富む深部マグマによって引き起こされるもので, このような噴火では大量の斑晶質マグマが深部から高速で上昇することで噴火がより強くなっていた可能性が示唆される.