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[SVC31-P05] 富士山1707年噴火のクリスタルマッシュ状斑レイ岩捕獲岩中の粒間メルト連結度

キーワード:クリスタルマッシュ、粒間メルト、富士山、マグマ溜まり
近年の火山学では,マグマ供給系の大部分がクリスタルマッシュから構成されていると考えられている.ここでクリスタルマッシュとは,結晶量~50vol%以上のマグマで,粒間をメルトと気泡が充填している.この粒間メルトの抽出は,噴火可能なマグマの準備だけでなく,深成岩の形成を考える上でも重要なプロセスである.しかし,クリスタルマッシュ中で粒間メルトがどのように減少して深成岩が形成するのか,その過程は未だ理解不十分である.これを調べる上で手がかりとなるのが粒間メルトを含む深成岩捕獲岩である.本研究対象である富士山1707年宝永噴火の噴出物中には,クリスタルマッシュの欠片と考えられる斑れい岩捕獲岩が見つかっており,その粒間メルト量は最大~40vol%まで上昇する.この斑れい岩中の粒間メルトの分布が量に対してどのように変化するかを調べることで,天然の岩石からクリスタルマッシュが深成岩に変化する過程を制約できると期待される.そこで本研究では,大塚他(2021火山学会)で岩石学的研究を行った宝永噴火の粒間メルトを含む斑れい岩捕獲岩について,東大地震研のFE-EPMA(JEOL JXA-8530FPlus)で撮影したBSE像の画像解析を行い,粒間メルトの空間分布とその連結度を調べた.
宝永噴火の斑れい岩捕獲岩の中で,粒間にガラスを含むマッシュ状のものは全体のおよそ20%を占める大塚他(2021火山学会).これらのマッシュ状斑れい岩は,粒間ガラスが比較的均質な流紋岩質組成であるGroup-Aと,安山岩質からデイサイト質まで1試料中でも組成が変動し,粒間ガラスに組成縞模様が見られるGroup-Bに分けられる(大塚他, 2021火山学会).本研究では,粒間ガラスを含む斑れい岩のうち,粒間相(=粒間ガラス+気泡)の異なる試料について,薄片全体について撮影されたBSE像から粒間相のみを抽出した相マップを作成した.この際,粒間の発泡に伴う大きな変形を示唆する組織が試料に認められないため,ガラスと気泡の比率は変化しているが,試料に占める粒間相の体積分率は変化していないと仮定した.そして,作成した相マップについてImageJを用いた画像解析を行い,粒間相の各クラスター(空間的に連結した一塊)の面積と楕円近似長軸長・短軸長をそれぞれ定量した.さらに,画像収縮処理によって決定した粒間ガラスクラスターの代表点の相互距離頻度分布から,その空間分布の均質性を検討した.
現時点で解析の終了している試料は, Group-AのガブロノーライトであるFGB200,FGB213と, Grpup-BのノーライトであるFGB165,FGB293の4つである.粒間相の総量(F)はFGB200で38.8%,FGB213で36.2%,FGB165で22.9%,FGB293で10.2%であった.Fに対して最大クラスターが占める面積分率をCM1,2位までのクラスターが占める面積分率をCM2とすると,CM1とCM2はそれぞれFGB200で47.7%と66.7%,FGB213で84.9%と85.6%,FGB165で30.3%と36.7%,FGB293で19.3%と22.2%となった.CM1とCM2はFGB200 のみで大きく変動し,Fがほぼ等しいFGB213と比べてもCM1が著しく小さい.これは,FGB200の薄片切断面では偶々,最大クラスターが2つに途切れてしまったためと解釈できる.そこで,粒間相の指標としてCM2を採用すると,CM2はFの減少に伴っておよそ75±10%(F~37.5±1.5%)から37%(F~23%),22%(F~10%)まで単調に減少する.このことから,粒間相の減少とともにその連結度も低下することがわかる.各試料中の粒間相の最大クラスターを楕円近似したときの長軸/短軸比はそれぞれ,FGB200で1.9,FGB213で1.1,FGB165で1.3,FGB293で2.1となった.このことから,最大クラスターのサイズが減少する際,等方的に収縮していると考えられる.粒間相の空間分布の均質性を検討した結果,FGB200, FGB213, FGB165の3試料では粒間相はランダムに分布しており,FGB293ではやや局所化が見られた.以上の結果から,クリスタルマッシュの固化過程では,少なくともF>10%のときには粒間相の分布は局所化せず,均等に量を減じて連結度が下がっていくと考えられる.
宝永噴火の斑れい岩捕獲岩の中で,粒間にガラスを含むマッシュ状のものは全体のおよそ20%を占める大塚他(2021火山学会).これらのマッシュ状斑れい岩は,粒間ガラスが比較的均質な流紋岩質組成であるGroup-Aと,安山岩質からデイサイト質まで1試料中でも組成が変動し,粒間ガラスに組成縞模様が見られるGroup-Bに分けられる(大塚他, 2021火山学会).本研究では,粒間ガラスを含む斑れい岩のうち,粒間相(=粒間ガラス+気泡)の異なる試料について,薄片全体について撮影されたBSE像から粒間相のみを抽出した相マップを作成した.この際,粒間の発泡に伴う大きな変形を示唆する組織が試料に認められないため,ガラスと気泡の比率は変化しているが,試料に占める粒間相の体積分率は変化していないと仮定した.そして,作成した相マップについてImageJを用いた画像解析を行い,粒間相の各クラスター(空間的に連結した一塊)の面積と楕円近似長軸長・短軸長をそれぞれ定量した.さらに,画像収縮処理によって決定した粒間ガラスクラスターの代表点の相互距離頻度分布から,その空間分布の均質性を検討した.
現時点で解析の終了している試料は, Group-AのガブロノーライトであるFGB200,FGB213と, Grpup-BのノーライトであるFGB165,FGB293の4つである.粒間相の総量(F)はFGB200で38.8%,FGB213で36.2%,FGB165で22.9%,FGB293で10.2%であった.Fに対して最大クラスターが占める面積分率をCM1,2位までのクラスターが占める面積分率をCM2とすると,CM1とCM2はそれぞれFGB200で47.7%と66.7%,FGB213で84.9%と85.6%,FGB165で30.3%と36.7%,FGB293で19.3%と22.2%となった.CM1とCM2はFGB200 のみで大きく変動し,Fがほぼ等しいFGB213と比べてもCM1が著しく小さい.これは,FGB200の薄片切断面では偶々,最大クラスターが2つに途切れてしまったためと解釈できる.そこで,粒間相の指標としてCM2を採用すると,CM2はFの減少に伴っておよそ75±10%(F~37.5±1.5%)から37%(F~23%),22%(F~10%)まで単調に減少する.このことから,粒間相の減少とともにその連結度も低下することがわかる.各試料中の粒間相の最大クラスターを楕円近似したときの長軸/短軸比はそれぞれ,FGB200で1.9,FGB213で1.1,FGB165で1.3,FGB293で2.1となった.このことから,最大クラスターのサイズが減少する際,等方的に収縮していると考えられる.粒間相の空間分布の均質性を検討した結果,FGB200, FGB213, FGB165の3試料では粒間相はランダムに分布しており,FGB293ではやや局所化が見られた.以上の結果から,クリスタルマッシュの固化過程では,少なくともF>10%のときには粒間相の分布は局所化せず,均等に量を減じて連結度が下がっていくと考えられる.