日本地球惑星科学連合2024年大会

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[U-13] 日本地球惑星科学連合における学術出版:PEPS誌創刊10周年

2024年5月30日(木) 13:45 〜 15:15 展示場特設会場 (1) (幕張メッセ国際展示場 6ホール)

コンビーナ:小田 啓邦(産業技術総合研究所地質情報研究部門)、川幡 穂高(早稲田大学 理工学術院 大学院創造理工学研究科)、座長:小田 啓邦(産業技術総合研究所地質情報研究部門)、川幡 穂高(早稲田大学 理工学術院 大学院創造理工学研究科)

14:30 〜 14:45

[U13-04] SPEPS特集「10 years after the 2011 Tohoku earthquake: A milestone of solid earth science」

★招待講演

*日野 亮太1飯沼 卓史2小平 秀一2山田 昌樹3、Bürgmann Roland4松澤 暢1 (1.東北大学大学院理学研究科、2.海洋研究開発機構、3.信州大学理学部、4.カリフォルニア大学バークレー校)

この特集号の企画は,JpGU2021の特別セッション「東北地方太平洋沖地震から10年―固体地球科学の到達点」のコンビーナに,編集委員から招待を受けたことが始まりだった.このセッションのスコープは,「10年経ったいま,こうした研究テーマについての私たちの理解はどれほど進んだのであろうか?」「本セッションでは,東北沖地震・津波そのものについての研究だけでなく,この地震・津波が契機となって明らかとなってきた様々な固体地球科学における研究成果を持ち寄ることで,今後目指すべき研究の方向性の議論につなげたい」というもので,特集号の企画は願ってもないことであった.

同じ大会では「津波堆積物:東北地方太平洋沖地震後10年の成果と今後の展望」というセッションも企画されていた.このセッションのスコープは「2011年東北沖津波から10年となるこのタイミングで,10年間で蓄積された津波堆積物に関わる研究成果を振り返り,今後の展望を議論していく」というもので,2つのセッションで問題意識を共有していたこともあり,プログラム編成時からコンビーナー間で情報交換をしていた.そこで,特集号の企画への招待を合同して引き受けることにした.

「東北地方太平洋沖地震から10年―固体地球科学の到達点」では,東北沖地震が固体地球科学に投げかけた課題・その後10年間で大きな進歩があった課題,という観点で,「超巨大地震の発生サイクル」,「海底下構造不均質と地震すべり」,「日本海溝でのスロー地震活動」の3つを選定し,それぞれについての招待講演を行っていたため,レビュー論文をこれら招待講演者に依頼したいという思いが,コンビーナーにはあった.その点で,招待を頂いたPEPS誌がレビュー論文の投稿を受け入れているのは,大変ありがたかった.

上記の3テーマについて想定していたレビュー論文や同じテーマに関連した一般投稿論文に加えて,長大な距離を伝播する津波の計算に関するレビュー論文の投稿を頂いた.これもまた,東北沖地震による巨大津波の高品位は波形記録が得られたことを契機として浮き彫りとなった課題であり,この特集号のなかでも重要な論文である.

東北沖地震は地形や地質に残された痕跡による低頻度大規模地震の発生履歴の研究を加速する契機となった.こうした研究成果は「津波堆積物:東北地方太平洋沖地震後10年の成果と今後の展望」の参加者から投稿があった.古地震学的アプローチは,沿岸に限らず深海底でも展開されており,そうした論文も特別号には収録されている.

東北沖地震の研究においては,震源域近傍での海底観測で得られたデータが重要な貢献を果たしており,本特別号においても海底観測の成果が多く掲載されている.地震発生から10年あまり経過してもなお,新たな着想による新たな解析で東北沖地震に関する新たな描像を得ることができる,という点で海底観測の重要性が再認識されたと思われる.新たな発想での解析という点では,GNSS観測データによる断層すべり分布解析の新手法の提案も興味深い.

下記に本特集号へのリンクを示す:
https://progearthplanetsci.org/speps_j/015.html

JpGUの大会では,毎回大変興味深くかつ科学的に重要なトピックスを集めた特別セッションが企画されている.一方で,大会が大型化する中で,特別セッションの講演・ポスターに立ち会えないということも少なくなくなったように思われる.重要な研究テーマに焦点を当てた論文集をPEPS誌の特別号として残すことは非常に有意義なことであり,その設定テーマの候補としてJpGUの特別セッションがある,というのことを,本企画に携わってみて実感した.