日本地球惑星科学連合2024年大会

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[J] 口頭発表

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[U-13] 日本地球惑星科学連合における学術出版:PEPS誌創刊10周年

2024年5月30日(木) 15:30 〜 17:00 展示場特設会場 (1) (幕張メッセ国際展示場 6ホール)

コンビーナ:小田 啓邦(産業技術総合研究所地質情報研究部門)、川幡 穂高(早稲田大学 理工学術院 大学院創造理工学研究科)、座長:小田 啓邦(産業技術総合研究所地質情報研究部門)、川幡 穂高(早稲田大学 理工学術院 大学院創造理工学研究科)

15:45 〜 16:00

[U13-07] 研究コミュニティ・学協会と学術情報「出版」活動の将来像・試論

★招待講演

*村山 泰啓1 (1.情報通信研究機構 NICTナレッジハブ)

キーワード:オープンサイエンス、研究成果、学術出版

近年普及してきたデジタル基盤、インターネット基盤上において、学術研究 成果、 学術情報の取り扱いは大きな変化の時代を迎えている。学術システムを支える「エコシステム」の構成要素である、 学協会、 研究者 コミュニティ、 研究機関、出版事業者、 図書館・ リポジトリ(保存機構)などの ステークホルダーもまた、新しい科学の将来像を見据えていく必要があるだろう。

学術論文出版は、学術研究成果の最も代表的であり最も重要なものであったといってよいだろう。そこにおいても、情報の流通や出版までのプロセス、コスト構造などが変化しつつある。 しかし 近代科学の原理・方法論に基づき学術活動の軸としてぶれてはならないものと、新しい時代のメカニズムとして変化・変容していくべきものと、両方を見据えて考えていく必要があるのではないだろうか。

多くの学協会が存在し、多くのジャーナルが出版されていることの意味は、研究成果発表の場を多く持つというだけにとどまらない。論文出版プロセスにおいてはしばしば、 複数の専門家による査読とその結果を元に出版を決定する編集者または編集委員会が存在する。川幡(JpGU、2018)でも触れられているように、編集プロセスは どのような研究成果を出版するかどうかという価値判断の場でもあり、それはその研究 コミュニティの価値基準を具体化する場であろう。

近年は何を学術成果とみなすかという価値基準も変化しつつあり、論文 の他にデータやソフトウェア、サンプル(試料)、プロトコル等幅広い学術業績を認知して共有しようという動きが見られる。 研究者 コミュニティにおいて、近代科学原理に基づく学術研究のあるべき姿は変わらなくとも、得られる学術業績の捉え方に対する規範意識そのものは大きく変わりつつある時代といってよいのではないだろうか。

これらの変化を具体化するには、 まだまだ乗り越えるべき理念や、コミュニティの規範の合意形成、 具体的なポリシー や手続きなど多くの課題があるであろう。今 目の前の学術業績、 学術情報の取り扱いに取り組むにあたり、こうした将来の学術のあり方を考察しつつ進めることに一定の意義があるのではないかと筆者は考えている。