17:15 〜 18:45
[U15-P19] 令和6年能登半島地震における震源近傍での光ファイバー歪変動観測
キーワード:能登半島地震、光ファイバ歪、近傍観測、強震
石川県珠洲市の群発地震活動とそれに伴う地殻変動の観測を目指し、珠洲市内の鉄道トンネル内(のと鉄道春日トンネル)に基線長50m, 76m の光ファイバー歪計と3成分地震計を設置し連続的に観測を実施してきた。2024年1月1日に発生したMj7.6 地震の際、これらの観測装置は稼働しており、地震時に発生した地域の停電の影響を受けて地震後2~3時間後に観測が停止したものの、能登半島沖地震震源極近傍での光ファイバー歪による強震および地殻変動に関する超広帯域・高ダイナミックレンジな観測記録が得られた。
観測で得られた光ファイバーの歪計は基線長76mはトンネルの壁面、基線長50mはトンネル床面に光ファイバーを展張して計測している。これらの光ファイバー歪記録は16:10 M7.6地震を除き、相互によく一致した観測記録が得られた。16:10地震の記録においては、初期微動時は整合しているものの、S波において150μ歪を超える大きな歪変動が生じた際に1秒より長い周期ではいずれも伸長ではあるものの相互に変動量が異なる記録となった。また、トンネル壁面の基線長76m歪計においては、16:10地震による変動の途中で光ファイバーからの光量が突然減少し、そのため、その後の記録が一定期間信頼できなくなる事象が発生した。地震後、観測を行っているトンネルの現地確認をしたところ、トンネル両端部のコンクリート躯体の継ぎ目に数cmという大きな隙間が生じ、そのため躯体に展張した光ファイバーが大きく伸長・屈曲しており、光ファイバーの光量が減少の理由を説明するとともに、トンネル躯体に地震時に大きな非弾性的変形が生じたことが確認できた。
このようにして得られた光ファイバー歪記録は、トンネル躯体に生じた強震動に伴う非弾性的変形の影響に注意する必要があるものの、震源近傍での広帯域の地震・地殻変動を飽和せず記録しているという観点で重要である。そこで、記録に見られるいくつかの特徴について述べる。
1.地震時の地殻変動が、16:10 M7.6地震だけでなく、地震前の16:06 地震および多くの余震について見られた。その変動は、16:06地震については、16:10地震の伸長とは異なり短縮であり、また、多くの余震については短縮であった。
2.16:10地震の数分後に大きな非地震性の短縮方向の歪変動が見られた。この変動は、トンネルの南側に襲来した津波の影響や、地震に伴う気圧波の影響として説明が可能かもしれない。
3.16:10地震後に繰り返し数分間にわたるゆっくりとした非地震性の歪変動が観測された。その多くは伸長方向の変動であった。この変動の要因は不明であり、検討が必要である。
4.16:06地震と16:10地震の間にゆっくりとした地殻変動が生じているかを検討したが、トンネル内の気温変動の影響があるため、議論が難しいが、容易に確認しうる大きさの変動は確認できなかった。引き続き温度変動の影響を取り除き地震前地殻変動の可能性を検討したいと考える。
本研究では、観測の実施にあたり中川潤、長岡愛理(京大防災研)、松尾凌、船曵祐輝(京大理)諸氏のご協力をいただいた。また、本研究は、科学研究補助金23K17482, 21H05204および「災害の軽減に貢献するための地震火山観測研究計画(第2次)」の助成を受けた。
観測で得られた光ファイバーの歪計は基線長76mはトンネルの壁面、基線長50mはトンネル床面に光ファイバーを展張して計測している。これらの光ファイバー歪記録は16:10 M7.6地震を除き、相互によく一致した観測記録が得られた。16:10地震の記録においては、初期微動時は整合しているものの、S波において150μ歪を超える大きな歪変動が生じた際に1秒より長い周期ではいずれも伸長ではあるものの相互に変動量が異なる記録となった。また、トンネル壁面の基線長76m歪計においては、16:10地震による変動の途中で光ファイバーからの光量が突然減少し、そのため、その後の記録が一定期間信頼できなくなる事象が発生した。地震後、観測を行っているトンネルの現地確認をしたところ、トンネル両端部のコンクリート躯体の継ぎ目に数cmという大きな隙間が生じ、そのため躯体に展張した光ファイバーが大きく伸長・屈曲しており、光ファイバーの光量が減少の理由を説明するとともに、トンネル躯体に地震時に大きな非弾性的変形が生じたことが確認できた。
このようにして得られた光ファイバー歪記録は、トンネル躯体に生じた強震動に伴う非弾性的変形の影響に注意する必要があるものの、震源近傍での広帯域の地震・地殻変動を飽和せず記録しているという観点で重要である。そこで、記録に見られるいくつかの特徴について述べる。
1.地震時の地殻変動が、16:10 M7.6地震だけでなく、地震前の16:06 地震および多くの余震について見られた。その変動は、16:06地震については、16:10地震の伸長とは異なり短縮であり、また、多くの余震については短縮であった。
2.16:10地震の数分後に大きな非地震性の短縮方向の歪変動が見られた。この変動は、トンネルの南側に襲来した津波の影響や、地震に伴う気圧波の影響として説明が可能かもしれない。
3.16:10地震後に繰り返し数分間にわたるゆっくりとした非地震性の歪変動が観測された。その多くは伸長方向の変動であった。この変動の要因は不明であり、検討が必要である。
4.16:06地震と16:10地震の間にゆっくりとした地殻変動が生じているかを検討したが、トンネル内の気温変動の影響があるため、議論が難しいが、容易に確認しうる大きさの変動は確認できなかった。引き続き温度変動の影響を取り除き地震前地殻変動の可能性を検討したいと考える。
本研究では、観測の実施にあたり中川潤、長岡愛理(京大防災研)、松尾凌、船曵祐輝(京大理)諸氏のご協力をいただいた。また、本研究は、科学研究補助金23K17482, 21H05204および「災害の軽減に貢献するための地震火山観測研究計画(第2次)」の助成を受けた。