17:15 〜 18:45
[U15-P23] 様々な断層面モデルを仮定した令和6年能登半島地震の震源過程解析
キーワード:震源過程、地震動、インバージョン
令和6年能登半島地震は、北東-南西方向に延びる複数の南東傾斜の逆断層及び能登半島から北東の佐渡島西方沖にかけての北西傾斜の逆断層の活断層が確認されている領域で発生し、これら活断層の関連が指摘されている(地震調査委員会, 2024)。
例えば国土地理院は3枚の矩形断層を仮定してGNSS観測データから矩形断層のすべりモデルを推定した他、SAR観測データも用いて断層面を小断層に分割して地震すべりモデルの推定を行った(地震調査委員会, 2024)。
他にも様々なモデルで震源断層に関わる解析が行われており、このため断層モデルを複数用意し、その他の使用データ等は固定して近地地震波形を使った震源過程解析を行って結果の比較を試みた。
1.解析
(1)手法
マルチタイムウィンドウ線形波形インバージョンを用い、小断層のサイズはすべて9×9kmとした。小断層での震源時間関数は、基底関数に2秒幅の三角形関数を用い、タイムウィンドウを1秒ずつずらしながら40個まで用いた。気象庁が推定した16時10分09秒の地震の震源の位置を破壊開始点とし、破壊伝播速度に2.8km/sを用いた。各小断層でのすべり方向は、断層パラメータのすべり角から±45度の範囲内として非負最小二乗法を用いた。また時空間的に滑らかという拘束条件を与えた。
(2)複数のモデル設定
今回は次の4つのモデルを設定した。複数の平面の断層面を設定した場合、破壊開始点を含まない断層面では破壊開始点から最も近い小断層に破壊が伝播する時刻をもってその断層面での破壊開始時刻とし、その後その面を破壊伝播速度で破壊が広がるという設定とした。モデルのよっては小断層が、隣接する別の断層面上の小断層と空間的にほぼ重なるような場合も生じるが、調整することなくそのまま解析した。
(モデル1: 1枚断層面モデル)
1枚の平面断層面で、断層パラメータは気象庁のCMT解を用いた。
(モデル2: 5枚断層面モデル)
日本海における大規模地震に関する調査検討会の最終報告にある断層パラメータ(F42とF43)を参考に設定した。それぞれ2枚ずつの平面で構成される。また、今回の地震ではF43よりも西側でも地震活動がみられ断層破壊があったことが想定される。そこで、前述の国土地理院の3枚の矩形断層面のうち西側の1枚を断層パラメータに持つ面を追加し、計5枚の平面断層面モデルとした。
(モデル3: 3枚断層面モデル case1)
国土地理院の3枚の矩形断層を断層パラメータに持つモデルとして設定した。国土地理院による解析は矩形断層で一律に滑るものであることから、設定断層面は深部方向及び東端・西端方向に延長させた。なお、このモデルでの各断層面の傾斜角は他のモデルに比べ高角であるという特徴がある。
(モデル4: 3枚断層面モデル case2)
国土地理院がSAR観測データも用いて解析を行った3枚の断層面をもとにした。国土地理院のそのモデルでは各断層面のすべり角が不明なため、モデル3のすべり角を代わりに用いた。モデル4は概ねモデル3の傾斜角をより低角にしたモデルに相当する。
(3)使用データ
KiK-netの地中点の観測波形データの使用を基本とした。ただし、観測点分布でのカバレッジの観点から、佐渡島や舳倉島のK-NETと気象庁の地上点の波形データも使用した。
能登半島での平均的な1次元構造を用意し、小断層と観測点間のグリーン関数を離散化波数法により計算した。
不均質構造の影響が比較的小さいことを期待して周期20~100秒の長周期の帯域と、震源近傍の大振幅の情報を使うべく周期5~20秒の帯域の2種類の観測波形を用意して、前者は120秒間と長めの波形長を、後者はその半分の60秒間の波形長を同時に使用した。また、使用する波形区間の振幅のrmsの逆数に比例する値を重みとして設定した。
2.結果
例としてモデル1とモデル4の結果を図に示す。
1から4のいずれも、水平面投影で、震央近傍北東領域、輪島市付近、半島北東沖の3つの領域が大きく滑る結果が得られた。
V.R.はいずれも0.62~0.66の範囲内で、モデル間で大きな差はみられなかった。
2と3では半島北東沖の領域のすべり域が設定した断層面内にとどまらないような結果となった。モデル設定があまり適切ではなかったためではないかと考えている。モデル1と4は設定した断層面内ですべり域が概ね収まる。
モデル1~3の結果では、能登半島西端域のISKH04観測点のEW成分の大振幅の波形をほとんど説明できなかったが、西端の断層面の走向が北寄りの設定になっているモデル4では比較的説明できる結果となった。
謝辞
(国研)防災科学技術研究所のKiK-net、K-NETの強震観測データを利用しました。
例えば国土地理院は3枚の矩形断層を仮定してGNSS観測データから矩形断層のすべりモデルを推定した他、SAR観測データも用いて断層面を小断層に分割して地震すべりモデルの推定を行った(地震調査委員会, 2024)。
他にも様々なモデルで震源断層に関わる解析が行われており、このため断層モデルを複数用意し、その他の使用データ等は固定して近地地震波形を使った震源過程解析を行って結果の比較を試みた。
1.解析
(1)手法
マルチタイムウィンドウ線形波形インバージョンを用い、小断層のサイズはすべて9×9kmとした。小断層での震源時間関数は、基底関数に2秒幅の三角形関数を用い、タイムウィンドウを1秒ずつずらしながら40個まで用いた。気象庁が推定した16時10分09秒の地震の震源の位置を破壊開始点とし、破壊伝播速度に2.8km/sを用いた。各小断層でのすべり方向は、断層パラメータのすべり角から±45度の範囲内として非負最小二乗法を用いた。また時空間的に滑らかという拘束条件を与えた。
(2)複数のモデル設定
今回は次の4つのモデルを設定した。複数の平面の断層面を設定した場合、破壊開始点を含まない断層面では破壊開始点から最も近い小断層に破壊が伝播する時刻をもってその断層面での破壊開始時刻とし、その後その面を破壊伝播速度で破壊が広がるという設定とした。モデルのよっては小断層が、隣接する別の断層面上の小断層と空間的にほぼ重なるような場合も生じるが、調整することなくそのまま解析した。
(モデル1: 1枚断層面モデル)
1枚の平面断層面で、断層パラメータは気象庁のCMT解を用いた。
(モデル2: 5枚断層面モデル)
日本海における大規模地震に関する調査検討会の最終報告にある断層パラメータ(F42とF43)を参考に設定した。それぞれ2枚ずつの平面で構成される。また、今回の地震ではF43よりも西側でも地震活動がみられ断層破壊があったことが想定される。そこで、前述の国土地理院の3枚の矩形断層面のうち西側の1枚を断層パラメータに持つ面を追加し、計5枚の平面断層面モデルとした。
(モデル3: 3枚断層面モデル case1)
国土地理院の3枚の矩形断層を断層パラメータに持つモデルとして設定した。国土地理院による解析は矩形断層で一律に滑るものであることから、設定断層面は深部方向及び東端・西端方向に延長させた。なお、このモデルでの各断層面の傾斜角は他のモデルに比べ高角であるという特徴がある。
(モデル4: 3枚断層面モデル case2)
国土地理院がSAR観測データも用いて解析を行った3枚の断層面をもとにした。国土地理院のそのモデルでは各断層面のすべり角が不明なため、モデル3のすべり角を代わりに用いた。モデル4は概ねモデル3の傾斜角をより低角にしたモデルに相当する。
(3)使用データ
KiK-netの地中点の観測波形データの使用を基本とした。ただし、観測点分布でのカバレッジの観点から、佐渡島や舳倉島のK-NETと気象庁の地上点の波形データも使用した。
能登半島での平均的な1次元構造を用意し、小断層と観測点間のグリーン関数を離散化波数法により計算した。
不均質構造の影響が比較的小さいことを期待して周期20~100秒の長周期の帯域と、震源近傍の大振幅の情報を使うべく周期5~20秒の帯域の2種類の観測波形を用意して、前者は120秒間と長めの波形長を、後者はその半分の60秒間の波形長を同時に使用した。また、使用する波形区間の振幅のrmsの逆数に比例する値を重みとして設定した。
2.結果
例としてモデル1とモデル4の結果を図に示す。
1から4のいずれも、水平面投影で、震央近傍北東領域、輪島市付近、半島北東沖の3つの領域が大きく滑る結果が得られた。
V.R.はいずれも0.62~0.66の範囲内で、モデル間で大きな差はみられなかった。
2と3では半島北東沖の領域のすべり域が設定した断層面内にとどまらないような結果となった。モデル設定があまり適切ではなかったためではないかと考えている。モデル1と4は設定した断層面内ですべり域が概ね収まる。
モデル1~3の結果では、能登半島西端域のISKH04観測点のEW成分の大振幅の波形をほとんど説明できなかったが、西端の断層面の走向が北寄りの設定になっているモデル4では比較的説明できる結果となった。
謝辞
(国研)防災科学技術研究所のKiK-net、K-NETの強震観測データを利用しました。