日本地球惑星科学連合2024年大会

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[J] ポスター発表

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[U-16] 2024年能登半島地震(2:E)

2024年5月28日(火) 17:15 〜 18:45 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 6ホール)

17:15 〜 18:45

[U16-P16] カーネル密度推定を用いた大地震直後の余震域推定の試み―2024年能登半島地震への適用―

*久保 久彦1汐見 勝彦1 (1.国立研究開発法人防災科学技術研究所)

キーワード:余震域、カーネル密度推定、2024年能登半島地震

大地震が発生すると、その地震による強い揺れなどで被害が生じていたところに、震源域周辺で活発化する地震活動によってさらなる揺れがもたらされる。大地震直後の初期段階では避難や救助、応急対応などの防災行動が取られるが、この期間において余震の空間的な広がりに関する情報のニーズは高いと考えられる。本研究では、大地震発生後数時間以内に余震域を推定するために、地震カタログにカーネル密度推定を適用する手法を提案する。大地震直後は大地震および活発な余震活動の影響で地震カタログは質および量が低下する。また大地震直後は人の手によるデータ処理が間に合わないため自動処理に頼るしかないが、自動処理で得られる震源情報はマニュアル処理の場合に比べて一般的に精度が低い。このように困難な状況下でも、余震域を安定して推定する手法を考える必要がある。
入力として地震の水平位置(緯度・経度)で構成される2次元点群分布を用いる。前処理として地震カタログの緯度・経度から本震震央を原点とした直交座標系(単位は100km)に変換する。そして、この2次元点群分布に対してカーネル密度推定を適用し、2次元の確率密度分布をノンパラメトリックに推定する。カーネル密度推定アルゴリズムにはSciPyライブラリを用いた。カーネル関数にはガウス関数を採用し、カーネルのバンド幅の選定にはScottのルールを適用した。こうして得られた2次元確率密度分布において、確率密度0.5以上の範囲を余震域として抽出した。ただし確率密度分布が複数のピークを有する場合や確率密度0.5以上の範囲が広がり過ぎる場合があるため、カーネル密度推定で得られた2次元確率密度分布に回転を有する2次元ガウス分布をあてはめた上で、この2次元ガウス分布の確率密度0.5以上の範囲を余震域として抽出する方法も検討した。
提案手法を2024年能登半島地震におけるHi-net自動処理震源カタログに適用した。同地震の余震域は、震央から北東方向の佐渡島との中間付近から、震央から南西方向の能登半島西岸まで、約150kmにわたって広がっていたことが分かっている。地震発生から12時間の地震カタログ(イベント数242)に提案手法を適用した結果、既知の余震域に対応する余震域を抽出することができた。地震発生から6時間の地震カタログ(イベント数98)に適用した場合、北東方向の広がりがやや少ないながらも、12時間の結果に近い余震域が得られた。地震発生から3時間の地震カタログ(イベント数38)に適用した場合、イベント数の少なさから、空間的に広がった余震域が得られた。ただし推定された余震域は能登半島全体を覆っており、大地震発生から3時間の段階でも能登半島全体において地震活動が活発化していることが示唆される結果であった。また、2次元ガウス分布の確率密度分布に基づく余震域はカーネル密度推定で得られた確率密度分布に基づく余震域に近いこと、カーネル密度推定で得られた確率密度分布は余震活動の空間的なばらつきに関する情報を有していることも確認された。